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市場をつかめ!~市場調査の基本~

目次

1.企業のマーケティング活動と市場調査

市場調査は、企業が市場のニーズを把握するために実施するものであるが、現状のニーズを分析することだけがその目的ではない。市場調査は、企業がさまざまな意思決定を行なうときに、重要な情報を与えてくれるものである。ここでは、企業のマーケティング活動と市場調査との関係について考察していく。

1)企業のマーケティング活動と市場調査

マーケティングとは、もっとも広い概念でとらえれば、「企業から市場への働きかけ」全体を指すといえる。また、狭い定義では市場調査、つまりマーケティング・リサーチそのものを指すこともある。マーケティングとは一体何を示すのか、という基本的な問題に対し、ここでは、企業が消費者のニーズを充足させるために実施するあらゆる創造的活動をいうとの認識をとることにする。そして、このようなマーケティング活動を効果的に進めるうえで、市場調査は重要なツールになる。
現在の消費者は、物理的にはかなりの水準まで満たされているといえる。必要なモノはいつでもどこでも、誰もが購入できるような環境が整備されている。このような環境にあって、企業は消費者のニーズを探ることに力を入れている。それは、 ありきたりの商品やサービスでは消費者が関心を示さず、他社のより魅力的な商品・サービスに顧客が流出してしまうからである。そのような事態を回避するために、系統的な市場調査を実施し、自社経営の方向付けを行なっていく必要がある。

2)市場調査から入手可能な情報

市場調査とひと言でいっても、その方法は多種多様である。もっとも広く行なわれている方法は質問紙調査と面接調査であるが、その他にもさまざまな手法がある。市場調査を行なうことでマーケットの構造と消費者のニーズが明らかにされ、自社の戦略の方向性を決定することが可能となるという点に着眼しよう。

2.市場調査の展開

次に、市場調査の展開についてみていく。市場調査は、事実の発見、事象の説明、企業の行動指針の提供、という3つの段階がある。

1)事実の発見

市場調査の第一段階は、事実を発見することである。
市場調査のもっとも基本的な役割は、現状はどうであるのか、という問いに対する答えを出すところにある。
先に取り上げたスポーツカー市場の現状分析では、既存のブランドをすべて地図(プロダクト・マップ)上に位置づけることで、市場の構造そのものを明らかにしている。
事実の発見は、マーケティング・リサーチの初期段階でありながらも、多くの情報をもたらしてくれるという重要な役割を担っている。

2)事象の説明

市場調査の第二段階は、事象の説明を行なうものである。つまり、消費者はなぜそのように行動するのか、その行動の背景にある理由を発見しようとする段階である。すべての消費者の行動には何らかの理由があり、それを多面的に分析して明らかにする。この第二段階までは、過去の情報を基に分析している点で共通している。

3)企業の行動指針の提供

市場調査の第三の段階は、企業の行動指針を明らかにするというものである。この段階では、市場調査は現状分析にとどまらず、企業は今後いかに行動すべきであるのか、という重要な意思決定を行なうときの判断材料を提供することになる。
これからの市場調査では、この第三段階がより重要になるのではないだろうか。新しい商品やサービスを実施するにあたり、現状を分析したり、あるいは消費者行動の要因を把握したりすることは必要不可欠な事項である。しかし、それだけで十分なマーケティングが可能となるものではない。
消費者のニーズが多様化かつ高度化している現状にあっては、さらに踏み込んだ分析が必要になる。最近では、消費者のニーズに加えてウォンツという概念が登場している。ウォンツとは、より高度な消費者の欲求を指す。このような消費者の欲求を把握し、また、顕在化していない欲求までをマーケティング・リサーチの実施によって掘り起こす、というのがこれからの企業にとっての大きな課題となる。これを本レポートでは、戦略的な市場調査と呼ぶことにする。
市場調査の3つの段階をあらためて示すと、以下のようになる。

【市場調査の3段階】

  1. 事実の発見(ファクト・ファインディング)
  2. 事象の説明(エクスプラネーション)
  3. 行動指針の提供(オリエンテーション)

3.調査計画の立案

ここでは、市場調査の計画を立てるときに留意すべき点について検討していく。

1)調査目的の明確化と系統的な計画の立案

市場調査を行なうにあたり、その出発点となるのは、調査の目的を明確にすることである。
当然のように感じられるかもしられないが、調査を実施すること自体が目的になっている例が少なからず存在する。そのような形式的な調査では、市場に関する有力な情報を入手するのは困難である。したがって、「何のために調査を実施するのか」という点について十分に検討する必要がある。自社がとるべき経営活動を多面的に分析していき、本当に調査が必要になった段階でその実施を考える。
調査目的が明らかになれば、系統的な調査計画の立案を行なう。つまり、マーケティング・リサーチの実施においては、調査の目的を達成するために何をすべきか、というように目的からさかのぼって調査計画を立てていく、というステップを踏まなければならない。

2)仮説の検証がすべてではない

一般的なマーケティング・リサーチは、仮説検証型の調査と呼ばれることがある。つまり、あらかじめ正しいと判断される仮説を立て、それを検証するためのデータを市場調査から収集し、その結果を確認するというステップを踏む。
ところで、仮説検証型の調査では、最初に設定される仮説そのものが、きわめて常識的である場合が少なくない。そして、その常識的な仮説の正しさを立証するために、調査の結果を使用することがある。このような仮説検証も重要である。直感的に正しい仮説であると判断しても、その裏付けをとるのは意義のあることである。
しかし、仮説の検証がすべてではない。市場調査によって、予想もしなかった真実を発見する場合もあるものである。したがって、市場調査の実施においては、仮説検証のみならず真実の発見も追求するという積極的な姿勢が要求される。 それが先に述べた戦略的市場調査である。

3)調査計画に盛り込むべき事項

調査計画に盛り込むべき主要な事項は、表1の通りである。調査の目的が最重要視されるが、それ以外では調査全体に要する時間と費用が重要である。市場調査は比較的小規模のものであっても、かなりの時間・コストが必要となる。その点を再確認したうえで、調査計画を作成する。次では調査方法についてご紹介する。

【調査計画に盛り込むべき事項】

  • 調査目的
  • 調査方法
  • 調査対象
  • 調査実施地域
  • 調査対象者の選び方
  • 調査対象者数
  • 調査項目
  • 分析計画
  • 作業日程
  • 調査費用

4.市場調査の実施

市場調査の方法は大きく、1)質問紙調査法、2)面接調査法、3)観察調査法、4)実験という4つに分類することができる。それぞれの内容を次に見ていく。調査の実施にあたっては、調査目的にもっとも合った形式を選ぶようにする。

1)質問紙調査法

質問紙調査法は、質問事項を用紙に取りまとめ、それを調査対象者に回答してもらうというスタイルをとるものである。これはさらに、留め置き法、郵送法、訪問面接法、その他の方法に分かれる。

(1)留め置き法
留め置き法は、調査員が被調査者を訪ねて調査票の記入を依頼し、一定の期間後にふたたび訪問して調査票の回収を行なうものである。留め置き法の長所は、調査の目的を直接口頭で説明できるため、被調査者の協力を得やすいという点である。さらに、回答者は調査書への記入を始める前に疑問点などを調査員に聞くことができる。短所は、調査員を確保するためのコストが大きいことと、被調査者宅を訪問する手間がかかるということである。
(2)郵送法
郵送法では、質問用紙を調査対象者に郵送し、回答後に返送してもらう。質問事項が少ない場合には、はがきを使用する。郵送法の長所は、調査コストが比較的安く、広い地域を対象に一斉に調査を実施できるところにある。一方、短所は回収率が低いことである。調査票を送付しても、それを見た人が必要事項を記入して返送してくれる率はどうしても低くなってしまう。また、回収に時間がかかる点も短所といえる。
(3)訪問面接法
この方法は従来よく行なわれていた方法で、調査員がすでに構成された調査書をもって、あらかじめサンプリング(抽出)された調査対象者を訪問し、質問文を読んで相手の回答をとるものである。多くの場合、回答の選択肢が用意されている。訪問面接法の長所は、被調査者の協力を得やすく、質問に対する回答を確実に記録できる点である。しかし、時間とコストを要し、忙しい現代人の生活を反映して協力率も低く、とくに在宅率の低い若い人たちの回収率が低下してしまうという欠点がある。
(4)その他の方法
電子メールによる調査も実施されている。この方法の長所は、質問票を発送するための実質的なコストがほとんどかからない点にある。回答者の負担も少なく、回収期間も非常に短くて済む。しかし、電子メールの環境が整備されている人に調査対象が限定され、また、返信率が低くなりがちな点が短所である。

2)面接調査法

面接調査法(インタビュー)は、調査員と被調査者との面談形式で行なわれ、調査員はそこから入手した情報を記録していく。多くは質問紙調査による訪問面接法のように、あらかじめしっかりと構成された調査票を用いることはしない。面接調査法の代表的なものは、集団面接法と詳細面接法である。

(1)集団面接法
集団面接法(グループ・インタビュー)は、数人の被調査者を集めて座談会形式で行なわれる。司会役である調査員がいくつかの質問をし、それをもとにグループで自由に意見を出してもらう。集団面接法の長所は、各メンバーの反応を観察することができ、グループ全体の議論から派生的に生じる新たな事実を発見できることである。しかし、グループの構成メンバーを慎重に検討しなければ、集団内の効果的な相互作用は生じにくくなってしまう。その点が短所であるといえる。
(2)詳細調査法
詳細調査法(ディテールド・インタビュー)は、少数の人を対象に、調査項目としてあらかじめある程度構成された調査票を用い、十分な時間をかけて実施される。調査員が被調査者のほうに出向く点が集団面接法と異なる。詳細調査法の長所は、非常に踏み込んだ情報を被調査者から引き出せることである。短所は、調査コストが大きくなることに加え、調査員に高度な専門知識やかなりの熟練が要求される点である。

3)観察調査法

観察調査法は、質問紙調査法や面接調査法とはやや異なる視点から実施される。この調査の目的は、現実の事象を観察して実態を正確に把握することである。ここでは、街頭観察調査と店頭・店内観察調査を取り上げる。

(1)街頭観察調査
街頭観察調査(タウンウオッチング)は、街に出て大勢の人たちを観察し、目的とする情報を収集する調査である。たとえば、若者が身につけているものを調査したり、深夜の人間行動を観察したり、と目的によってさまざまな調査が実施される。 街頭調査は、特別な費用を必要としないため手軽に行なうことができるが、明確な目的意識をもって実施しないと有効な情報を得られない。これが街頭調査のメリット・デメリットである。
(2)店頭・店内観察調査
店頭・店内観察調査は、調査員が小売店の店頭に立って来店者の行動を観察するものである。たとえば、消費者が注目した商品・手に取った商品・実際に購入した商品という具合に分類してカウントしたり、消費者の店内の動きを観察したりする。そして、この調査から得られた情報を店舗運営に役立てていくのである。 店頭観察調査の長所は、消費者の行動をダイレクトに観察できることである。しかし、調査結果から得られた多様な情報を集約するのに手間がかかるという短所もある。

4)実験

この方法は、因果関係を明確にするために、条件を統制することによって調査対象者に働きかけてその反応をみるものである。目的に応じていろいろなやり方が考えられるが、たとえば試作品などを作って、消費者を会場に集めて評価してもらう方法がある。調査費用はかかるが、新商品開発などにおいて有力な情報を手に入れることができる。

5.調査結果の集計・分析と活用

1)調査結果の集計

市場調査の実施後、集計の段階に入る。調査結果は、数字で把握できるデータとそれ以外のデータがあり、前者を定量データ、後者を定性データという。質問紙調査法においては、各質問事項に対して数字で回答する形式が多用される。量的な取り扱いができるようにしておくと集計作業が簡単になるからである。こうした集計は、パソコンの表計算ソフトを使って行なうことができる。 面接調査の結果は定性データであるため、一定の分類基準にしたがって集計する。手間がかかるが、集計結果の有効活用のためにも慎重な作業が望まれるところである。

2)調査結果の分析と活用

集計が終わると、調査結果の分析段階に入る。定量データであれば、質問項目ごとに平均値を出したり、分布を確認したりする。また、年齢や性別などの属性項目と、各質問事項との関連を明らかにすることもできる(これをクロス集計という)。さらに必要に応じて統計解析のソフトを使用し、専門的な分析をすることも可能である。 定量・定性データの分析では、調査の実施段階では予想もしなかったような事実を発見できる場合もあると思われる。とくに、解析の仕方によっては、質問全体を通して現象を構造化してとらえることが可能となる。 しかし、調査結果を正確に読みとるのは、一般にかなり難しいことである。分析者には的確な判断力が要求される。そのうえ、調査結果をいかに経営に生かしていくか、ということも大きな課題である。 市場調査の最終的な目標は、経営の方向性に関する指針を得るところにあるから、そのような視点で調査結果の活用を進めていきたいものである。

最終内容確認日2013年10月

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