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飲食業
飲食店における食中毒防止の基礎知識

目次

1.発生の原因と種類

1)発生の原因

日本で発生する食中毒の原因菌の種類はそれほど多くなく、おもなものとしては、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌などがあげられ、「腸管出血性大腸菌O-157」も大腸菌の一種。
食中毒菌は、生鮮食材や人、動物の身体、土壌の中など、いたるところに存在している。そして、養分、水分、温度、時間の4つの条件が揃ったときに急激に繁殖し、人体に害を及ぼす量にまで増えたときに食中毒が発生するのだ。
養分と水分は食材自体がつねにもっているため、あとは繁殖に適した温度と十分な時間があれば、いつ発生してもおかしくないといえる。

2)食中毒菌・ウイルスの特徴

【サルモネラ菌】
人や動物の腸内に広く分布するほか、魚類・卵など自然界に広範囲に生息。サルモネラ菌に汚染された肉や卵を原材料としたレバー刺身、牛肉刺身、自家製マヨネーズなどが原因になることが多い。
予防法:食肉、卵などを扱った手や器具は十分に洗浄消毒。加熱を十分に行なう。害虫駆除を行なう。

【腸炎ビブリオ】
海水中に生息。食塩濃度3%程度を好み、アジ、イカ、アカ貝など近海魚介類に付着している。真水、高温に弱い。低温で増殖が抑えられる。原因となりやすい食品として、魚介類の刺身、すしが代表的である。
予防法:魚介類は調理前に水道水でよく洗い、十分に加熱する。5度以下で保存する。

【病原性大腸菌】
大腸菌のうち、腸管病原性を有するものを指す。人や動物の腸内に存在し、食品だけでなく飲料水が原因となることもある。人から人へ感染し、二次汚染によりあらゆる食品が原因となる可能性がある。腸管出血性大腸菌「O-157」は「ベロ毒素」という毒素を出し、この毒素により下痢だけでなく、腎臓や脳に重度障害を引き起こすこともある。
予防法:加熱を十分に行なう。調理器具や手は十分に消毒する。
(腸管出血性大腸菌「O-15」に関しては、その特徴と予防法について5章を参照)

【ブドウ球菌】
自然界に広く分布し、とくに皮膚、鼻腔、化膿した傷口などに多く生息する。増殖するときにエントロテキシンという毒素を産出しこれが中毒を起こす。ブドウ球菌自体を殺しても、この毒素があれば中毒が起きる。直接手を触れたおにぎり、折り詰め、サンドイッチなどからの発生が多い。
予防法:手の洗浄消毒を十分に行なう。手に傷がある人は、直接食品に触れたり調理をしない。おにぎりはラップや手袋などを使ってにぎる。

【ウエルシュ菌】
動物の腸内をはじめ、土壌、水などに広く分布し、空気がない環境で増殖する。嫌気性かつ耐熱性をもつ。たとえば、大量の食品を一度に加熱した場合、食品内部の空気が追い出され、増殖しやすい環境となる。給食などで大量に加熱調理された食品(カレーやスープなど)が原因となりやすい。
予防法:前日調理は避け、加熱調理したものはなるべく早く食べる。保存の際は15度以下に急速冷却する。かき混ぜて酸素を入れる。

【ボツリヌス菌】
欧米では加工肉・缶詰、日本では「いずし」「からし蓮根」の中毒例があるが発生件数はきわめて少ない。毒性が強く致死率が非常に高い。嫌気性菌で耐熱性の芽胞を形成する。
予防法:食前に加熱を十分に行なう。真空パックや缶詰が膨張していたら使用しない。

【ノロウイルス】
カキなどの二枚貝のなかに生息している。おもに貝類を生食する冬期(11月から3月にかけて)に食中毒が多発する。また、食品を取扱う者の手洗いが不十分であると、手指から食品が汚染され、食中毒が起こる。
予防法:加熱を十分に行なう(中心部85度1分以上)。調理器具、ふきん、手指の洗浄消毒を確実に行なう。下痢・嘔吐などの症状がある者には調理させない。生でだす場合は、食品の生食用の表示(生食用・刺身用など)のあるものにする。

2.防止対策

過去の食中毒事故の発生要因で多いものとしては、前日調理による長時間保存。保存温度の管理不徹底。加熱不足。器具の使い回しによる二次汚染などがあげられる。

1)前日調理は避ける

食中毒事故では、前日調理した食材が原因になることが非常に多く、菌が大量に繁殖する機会を極力与えないためにも、前日調理はなるべく避けることが必要。
とくに、大量調理した食材の内部は、ウエルシュ菌などが好む無酸素状態になりやすい。調理後はできる限り早く提供すること。ウエルシュ菌は熱に弱く、60 度で10分程度の加熱で死滅するとされるが、その芽胞は通常の加熱調理でも生き残る。加熱済み食品を保管する場合は、鍋に入れたまま室温に放置せず、容器に小分けにして食品の温度を15度以下まで急速冷却し、冷蔵・冷凍保存する。さらに、提供前に十分に再加熱することが重要。

2)保存温度の管理徹底

食中毒を防ぐうえで重要なポイントとして、保存温度の管理があげられる。冷蔵庫は10度以下(できれば5度が望ましい)、冷凍庫はマイナス18度以下に保つことを徹底し、できる限り食材を低温保存して菌の繁殖を防ぐことを心掛けること。
温かい状態で保存したい場合は、食材の中心温度を65度以上に保つ。また、冷凍食材を解凍する際も、菌の増殖を助けることがある温水解凍は避けること。

3)加熱調理を十分に行なう

腸炎ビブリオや病原性大腸菌、サルモネラ菌など、多くの食中毒菌は熱に弱く、65度以上で数分(O-157は75度以上で1分間以上)加熱すれば死滅する。このとき、食材の中心まで火を通すように注意する。厚みのある食材や冷凍食品を加熱する際には、芯温計で中心温度を計測するなどの配慮が必要。プローブ(探針)を食品に刺して2秒ほどで中心部の温度が測れるデジタル芯温計や、芯温計内蔵のオーブンなどが販売されているので、そういった機器を利用するとよい。ただし、黄色ブドウ球菌などの一部の菌は熱に強い芽胞や毒素をつくるため、加熱調理したとしても絶対に安全とはいえない。

4)二次汚染をなくす

二次汚染を防ぐためには、肉、魚介類、野菜などの食材ごとに器具を使い分け、下処理用と加熱済み食材用とで同じ器具を使わないことがポイント。とくに、まな板、包丁、木製の器具は要注意。また、加熱調理済みや生食用の食材を扱う器具や手は、十分に洗浄、消毒すること。

3.衛生管理

衛生管理のポイントとしては、経営者または店舗責任者が、「衛生的な習慣を自ら身につける(→定期的な検便、手指の消毒、清潔な服装など)」。「正しい知識や技術を習得する  (→仕入・保管など原材料の管理、調理・加工品の取扱い、品質管理などについて正確な知識に基づいて処理する)」。「従業員にも衛生知識の習得と衛生的習慣の徹底を指導する」などがあげられる。小さなことだが、現場担当者一人ひとりの衛生管理が食中毒を未然に防ぐ基本となるのだ。
従業員の意識啓発方法としては、「勉強会を実施する」「厨房内にポスターを掲示する」「チェック表を作成する」などの方法が効果的。

以下にチェック表の一例を紹介しておく。自店の実状にあわせて独自のチェック表を作成すること。

○チェックポイント

1)調理前

  • 調理員の健康状態はどうか
  • 調理員の服装はどうか
  • 調理員の手指は洗浄・消毒したか
  • 調理設備、器具などは洗浄
  • 消毒したか

2)調理時

  • 下処理用、調理用の器具、容器を分けているか
  • 下処理後に手指、器具などは洗浄・消毒したか
  • 生食する食品の洗浄は十分か
  • 加熱温度、加熱時間は適切か
  • 放冷時間、冷却温度は適切か
  • 調理作業中も、必要に応じて手指、器具の洗浄
  • 消毒を行なっているか
  • 調理済み食品を長時間放置していないか

3)盛り付け時

  • 器は清潔か
  • 盛り付ける人の手指は洗浄・消毒したか
  • 盛り付け時の服装は適切か

4)終業時

  • 調理器具、食器などの洗浄・消毒は適切か
  • 廃棄物、残菜の処理は適切か
  • 材料の保存方法は適切か
  • 調理施設の清掃は十分か
  • 清掃用具は清潔か、保管方法は適切か
  • 冷蔵庫・冷凍庫の温度チェックを行なったか

5)そのほか

  • 定期的な調理施設の衛生検査、飲料水の水質検査などを行なっているか

以上のように衛生管理に細心の注意を配っていても、万一食中毒を出してしまった場合には、謙虚、迅速、正直な態度で対応することが重要。
自店から食中毒を出したことがわかったら、速やかに保健所に報告し、被害者への見舞い、自主的な休業などの対処を行なうこと。落ち度を隠したり、食材納入業者への責任転嫁は逆効果となる。また、食中毒で多数の被害者を出した場合、賠償総額が大きく、店への影響も甚大。万一の場合に備えて、保険に加入しておくことをおすすめする。

4.腸管出血性大腸菌「O-157」

1)腸管出血性大腸菌「O-157」とは

人間の腸内に住む普通の大腸菌とは異なり病気を起こす力のある大腸菌を総称して「病原性大腸菌」と呼ぶ。このうち、出血毒(ベロ毒素)をもつものが腸管出血性大腸菌で、なかでも「O-157」という血清型はもっとも毒性が強いタイプといわれている。
腸管出血性大腸菌に感染すると、4~9日間の潜伏期間の後、激しい腹痛と下痢に見舞われる。血便が出ることも多く、水のような便から次第に鮮血便に変わっていく。重症になると、腎不全や血小板減少症、貧血を特徴とする溶血性尿毒症症候群(HUS)を併発して腎機能障害を起こすため、死亡率が高いとされている。尿毒症が進むと治療は難しく、死亡者が出ることもある。
対策としては、早期に菌を見つけ、人工透析や血漿(しょう)交換などの治療を受けることが肝心だが、初期の症状が風邪に似ているため、血便でも出ない限り医師にも見分けがつきにくいと指摘する声もある。

2)予防対策

この菌はほかの食中毒菌と同様に熱に弱く、加熱により死滅する。また逆性石けんや消毒用エチルアルコールなどの消毒剤、塩素系(次塩素酸ナトリウム)の漂白剤でも容易に死滅する。また、井戸水や受水槽は水質検査を実施し、安全を確認すること。定期的に従業員の検便を行ない、健康管理を心掛けること。

最終内容確認日2014年3月

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