業種別開業ガイド

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旅行会社

目次

トレンド

(1)日本人の国内旅行単価は1人1回当たり平均36,462円

観光庁発表資料によると、2018年の日本人国内旅行消費額は20.5兆円(前年比3.0%減)であり、うち、宿泊型が15.8兆円(同1.7%減)、日帰り型が4.7兆円(同7.0%減)であった。日本人の国内旅行消費額はここ10年程度の間、大きな変化はなく推移している。

2018年の日本人の国内延べ旅行者数は5.6億人、うち、宿泊型が2.9億人、日帰り型が2.7億人であった。このことから、1人1回当たりの国内旅行単価は、平均で36,462円/人(宿泊型で54,300円/人、日帰り型で17,285円/人)ということになる。

旅行先として人気なのは、関東、近畿、中部への訪問回数が多く、次いで甲信越、九州などが続いている。

(2)日本人の海外旅行者数は増加傾向

日本政府観光局の資料によると、2018年の日本人の出国旅行者数は1,895万人であり、2016年以降増加基調にある。訪問先として人気なのは、アメリカが最も多く、次いで、中国、韓国、台湾、タイ、シンガポール、ベトナムといった近隣アジア諸国が続いている。

(3)インターネット販売を中心とした旅行会社も登場

旅行商品は、従来の店舗販売のほか、インターネット上での販売も行われてきている。インターネット専門の旅行会社が株式上場を果たしている。今後、新たな販売チャネルとして、ネット販売の活用も考えられる。

旅行会社の特徴

旅行会社とは、交通・宿泊・その他の旅行商品を仲介あるいは自社で企画・催行して旅行者に販売する会社である。業務内容としては、交通機関乗車券の代理販売、宿泊施設の予約斡旋および宿泊券の発行、各種旅行の企画、手配を行う。

事業者は旅行業法による登録を必要とし、扱える業務内容には登録の種類によって制限がある。旅行会社は、大きく以下の5つに分類され、それぞれについて業務範囲や登録要件などが定められている。

旅行業の種別と業務範囲

上記業務範囲の定義は以下の通りである。
・募集型企画旅行:旅行業者が、予め旅行計画を作成し、旅行者を募集するもの(例:パッケージツアーなど)
・受注型企画旅行:旅行業者が、旅行者からの依頼により旅行計画を作成するもの(例:修学旅行など)
・手配旅行:旅行業者が、旅行者からの依頼により宿泊施設や乗車券などのサービスを手配するもの

旅行業の種別と登録行政庁、登録要件

※2 基準資産とは、以下の計算式で算出される金額の必要額である。
基準資産額 =(資産総額)-(創業費その他の繰延資産)-(営業権)-(1年以上回収されていない貸付金、売掛金、未収金等の回収不能債権)-(負債総額)-(所要の営業保証金または弁済業務保証金分担金)

新規で開業する場合は、「第3種」「地域限定」のビジネスモデルを選択するケースが多いと思われる。第1種、第2種が国内外の広い範囲での企画旅行を販売するのに対し、第3種、地域限定は、営業所近隣地域の企画旅行の販売に特化することができる。このため、第1種、第2種では難しい地域密着型の旅行会社を目指すことが差別化のためには得策であろう。たとえば、地元の観光に精通した人材を育成し、地元の祭事や名産品の収穫時期なども考慮した特色ある企画旅行の販売を目指すとよいだろう。

旅行会社 開業タイプ

開業タイプは、登録業種により大きく5つに分類される。なお、旅行業では、事務所はすべて営業所と称される。

(1)第1種旅行業

国内外の募集型企画旅行および受注型企画旅行、手配旅行の取扱いが可能なタイプである。幅広い範囲での業務が可能であるが、開業時に7,000万円以上の営業保証金を国に供託しなければならない。

(2)第2種旅行業

国内のみの募集型企画旅行、国内外の受注型企画旅行、手配旅行の取扱いが可能なタイプである。若干の制限は受けるものの、営業保証金1,100万円からの開業が可能である。

(3)第3種旅行業

国内隣接市町村などの募集型企画旅行、国内外の受注型企画旅行と手配旅行の取扱いが可能なタイプである。実際の取り扱い額の比率は、手配旅行が最も多く8割以上を占めており、次いで、募集型企画旅行が残りを占めている。
営業保証金300万円からの開業が可能であり、現在、最も事業所数の多い分類である。
また、業容拡大にあわせて、第2種、第1種へのステップアップを考えてもよい。

(4)地域限定旅行業

国内隣接市町村などに限定された募集型企画旅行、受注型企画旅行、手配旅行の取扱いが可能なタイプである。実際の取り扱い額の比率は、募集型企画旅行が最も多く6割程度を占めており、次いで、手配旅行が2割強、受注型企画旅行が1割程度を占めている。営業保証金100万円からの開業が可能である。創設されたばかりのタイプであり、今後の普及が期待されている。
また、業容拡大にあわせて、第2種、第1種へのステップアップを考えてもよい。

(5)旅行業者代理業

上記の旅行業者から委託された業務の範囲内のみで商品提供が可能なタイプである。営業保証金は必要なく、小資本でも参入が可能である。

開業ステップと手続き

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下の7段階に分かれる。

開業ステップのフロー図

(2)必要な手続き

旅行会社を開業するに際しては、分類に応じた登録を行う。申請先は、第1種旅行業は観光庁長官、それ以外は主たる営業所を管轄する都道府県知事(観光圏を限定した旅行業者代理業は国土交通大臣)である。

代理業以外の旅行業者は、旅行者が損害を受けたときに備え、あらかじめ旅行業者の財産の一部を営業保証金として国に預けておく必要がある。営業保証金は、登録業種と取扱額(新規登録の場合は取扱見込額)に応じて詳細に金額が定められている。金額の詳細については、以下のサイトを参照のこと。
「営業保証金制度の概要」観光庁
http://www.mlit.go.jp/common/001226281.pdf


なお、一般社団法人全国旅行業協会に加盟していると、営業保証金は5分の1の納付となる。協会への加入手続きは、当協会の都道府県支部にて行うが、以下のような入会条件がある。


<全国旅行業協会 入会条件>
1.旅行業法第6条に該当しないこと。
2.「選任」された「(総合・国内)旅行業務取扱管理者」が1名以上(従業員が10名以上の営業所では2名以上)常勤雇用されていること。
3.「財産的基準」(基準資産)として、旅行業第1種3,000万円以上、第2種700万円以上、第3種300万円以上、地域限定100万円以上あること。


同協会への入会金は以下の通りである。
<全国旅行業協会 正会員入会金>
旅行業第1種2,250,000円、第2種650,000円、第3種550,000円、地域限定400,000円。この他、年会費が別途必要だが、詳細は、都道府県支部に確認のこと。


このほか、代理業以外の旅行業者は、登録に際し、財産的要件として、基準資産額が下記のように定められている。
・第1種旅行業:3,000万円以上
・第2種旅行業: 700万円以上
・第3種旅行業: 300万円以上
・地域限定旅行業:100万円以上
・旅行業者代理業:なし

メニュー・サービスの工夫

前述のように、新規で開業する場合は、「第3種」「地域限定」のビジネスモデルを選択するケースが多いと思われる。この場合、地元の観光に特化した特色ある企画旅行を販売することが差別化につながる。

地域密着型の企画旅行に際しては、有名な観光スポットはもちろん、歴史にちなんだ場所(例:旧街道だった道、歴史的事件や出来事のあった場所など)、伝統行事、名産品、町おこし施設・イベントなども企画に盛り込むようにする。時期は、観光シーズンのほか、祭事・イベントの時期、名産品の収穫期なども考慮する。
また、地域の役所の観光課や観光施設、宿泊業者などの協力も取り付け、安価な旅行が企画できるような工夫も行う。

企画旅行の告知は、自社ホームページへの掲載のほか、国内外の旅行予約サイトへの掲載、『Trip Advisor』など旅行者向け口コミサイト、『日本漫遊』など中国人向け日本紹介サイトに広告を出すことも効果的だろう。このほか、地域の役所の観光課や観光施設、宿泊業者などにも協力してもらえれば、なお良い。

必要なスキル

国内旅行業務取扱管理者や総合旅行業務取扱管理者といった資格をもっていることに加え、地元の観光情報にも精通していることが求められる。知識としてはご当地検定程度の知識レベルはクリアしたい。
旅行の企画に際しては、観光施設や宿泊業者、バス・タクシー会社などの協力も必要である。地元の観光関連の企業との円滑な関係構築も必要である。

また、外国人観光客に対応する機会も多いため、英語はもちろん、中国語や韓国語など、多様な言語に精通していることも機会損失を出さないために必要である。通訳案内士といった国家資格を多国籍語で取得することも考えられる。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

旅行会社は、比較的狭い店舗でも開業可能であるが、登録業種と規模によっては億を超える営業保証金を必要とするため注意が必要である。

【参考】:10坪の店舗で第3種旅行業を開業する場合の必要資金例

10坪の店舗で第3種旅行業を開業する場合の必要資金例の表

(2)損益モデル

■売上計画
自社の従業員規模やスタッフのスキルを踏まえて、売上の見通しを立てる。

(参考例):旅行会社(地域限定旅行業)

旅行会社(地域限定旅行業)売上の見通しの表1

旅行会社(地域限定旅行業)売上の見通しの表2

■損益イメージ
(参考例)旅行会社(地域限定旅行業)

旅行会社(地域限定旅行業)損益イメージの表1

旅行会社(地域限定旅行業)損益イメージの表2

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)