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サービス業
引越業

目次

トレンド

1.人手不足に悩む引越業界

引越業界の人手不足で、近年、春の引越シーズンに引越しができない「引越難民」という言葉がニュースで話題となっている。引越業界は重労働のイメージが強く、慢性的に人手不足と言われてきた。政府が推進する「働き方改革」もあり、大手業者を中心に残業削減や待遇改善が進むものの、需要に追いつけない状態が続いている。各社とも引越費用の大幅な値上げや時期の分散化を図るなどして対応に努めている。

2.業界団体がトラブル防止に寄与

引越業界での起業は、軽トラック1台あれば可能であり、初期費用を低く抑えられることもあって、新規事業者の参入が多い。価格競争などによる、料金の低価格化が進んでいる。また、引越し時のトラブルも多い。

この状況を鑑み、公益社団法人全日本トラック協会は、2014年に安全安心な引越サービスを提供する事業者であることを同協会が認定する「引越事業者優良認定制度」を導入。引越業界全体の信頼性向上に努めている。

引越業の特徴

引越需要は、好況期には住宅やオフィスビルの建設に伴う転居需要が発生し、不況期には事業所の統廃合・撤退に伴う転居需要が発生する。また、法人需要だけではなく、新年度を迎えるサラリーマンの異動による引越し、大学進学などによる学生の引越しもある。そのため、3~4月が繁忙期、他が閑散期となり、この繁忙期や閑散期への対策が安定的な経営のための重要なポイントだと言える。

繁忙期にはアルバイト募集などにより、各社、人材確保に力を入れているが、近年は、特に若年層の不足により引越業務の人材確保が難しくなってきている。そのため、繁忙期対策として、他社と業務提携を行い、協力を仰ぐ企業も出てきている。

一方、閑散期には、余剰人員の発生が問題となる。その対策として、他事業との兼業を行っているところもある。例えば、不用品の買取り・処分サービス、リサイクルショップなどの別事業を行っている業者もある。

引越業 開業タイプ

引越業の開業タイプは、2つのタイプに分けることができる。

(1)従来型

依頼主には、荷物の段ボール詰めまでを終えてもらい、引越当日にドライバーと引越補助者が利用者宅へ訪問し、荷物を搬送するという従来型のタイプである。引越先では、荷物の搬入までを行うのが一般的であるが、洗濯機や家具類などは、依頼主の希望によりセッティングまでを行う。他社とのサービスの差別化が難しいため、価格競争にさらされる可能性も高い。

(2)付加価値型

引越先での洗濯機や家具類のセッティングはもちろん、最初の荷造りから、不用品の廃棄、引越先での荷ほどき、整理整頓まで代行し、きめ細かなサービスを提供するタイプである。特に高齢者、女性、幼児のいる世帯、忙しい単身サラリーマンなどに人気がある。他社との差別化が可能であり、価格も従来型よりも高めに設定しやすい。

開業ステップと手続き

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下の7段階に分かれる。

(2)必要な手続き

引越業を開業するには、「運送業」として地方運輸支局への届出・許可が必要である。引越業の場合、「貨物軽自動車運送事業」か「一般自動車貨物運送事業」のいずれかで申請する。申請手続きは、所管の地方運輸支局で行う。

サービスの工夫

単身高齢者の増加や、高齢者の介護施設などへの引越が増えてきたことを背景に、高齢者向けの引越サービスも求められている。たとえば、荷造りから荷ほどき・新居での家具の設置・現状回復まですべてを請け負うサービスがある。また、介護施設への入居相談や不用品の処理、専門アドバイザーによる丁寧な引越相談、そして高齢者割引など、高齢者に特化した手厚いサービスも喜ばれている。

女性に対しても、レディースパックと称して、荷造り・荷ほどき・新居での家具の設置のほか、事前の女性スタッフによる訪問・見積り・相談などきめ細かなサービスを提供することで差別化が可能である。

小規模な引越業者の場合、自社だけでは難しい大口案件や、繁忙期における人手不足のへの対応のために、同業他社との連携が必要となる場合がある。

必要なスキル・仕組み

国土交通省は、引越業者と利用者とのトラブルを防ぐことを目的に「標準引越運送約款」をまとめている。まずは、このルールを熟知し守るよう徹底しなければならない。

一般家庭では引越しをする機会はそう多くない。よってリピーターを育てにくい業界とも言える。そのため、引越時に自社を選んでもらうためには、まず自社の存在を知ってもらい、料金やサービス内容で他社と比較検討してもらえるような状態になることが不可欠である。具体的には、ホームページの開設、タウンページへの登録、引越業者比較サイトへの登録、地域情報誌への広告、ポスティングチラシなどによる認知向上活動が必要である。

見積りなどの営業時や引越作業の際には、依頼者宅へ訪問することになる。スタッフは利用者に不快感を与えない身なりや接客マナーも必要である。

引越業務は労働集約型の事業であるため、人材確保が重要なポイントとなる。しかし、人口構造の変化で20~30代の若者の人材確保は難しくなってきている。人材マッチングサイトへの登録、求人誌への掲載を常時行うだけでなく、中高年でも働ける職場環境の整備も必要である。たとえば、ジャッキなどの道具を使った荷物運搬時の負担の軽減策はもちろんのこと、既存業者の中には、営業所にトレーニングスペースを作り、ストレッチや体を鍛えることを奨励する企業も出てきた。

このように、スタッフの疲労回復や怪我の予防、体力強化については、会社として積極的に取り組む課題だと思われる。

全日本トラック協会では、業界の底上げに向け、「引越基本講習」や「引越管理者講習」を行っている。本講習は、「標準引越運送約款」や関係法令などの知識習得、下見や見積りに必要な知識、クレーム対応、引越の基本作業、接客マナーなどを修得することを目的としている。このような講習にも積極的に参加して、必要なスキルを身に付けることにも取り組みたい。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

開業資金はタイプによって異なるが、自宅を事業所とし、軽トラック1台からの低投資で始めることも可能である。

【参考】:自宅にて引越業(貨物軽自動車運送事業タイプ)を開業する場合の必要資金例


(2)損益モデル

■売上計画
自社の経営資源と営業区域の需要を考慮して、無理のない売上計画を立てることが重要である。

(参考例)引越業(自宅での開業、貨物軽自動車運送事業タイプ)


■損益イメージ(参考例)
引越業(自宅での開業、貨物軽自動車運送事業タイプ)

※個人事業主を想定していますので、営業利益には個人事業主の所得が含まれます。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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