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サービス業
美容院

目次

トレンド

1. 市場は競争激化

厚生労働省資料によると、2000年以降、美容施設数は微増、美容師数は増加傾向にあり、施設あたりの従業者数も増大している。
2017年時点では、約25万の事業所が存在し、約52万人の美容師が業務に従事し、施設あたりの従業者数は約2.1人である。
施設あたりの従業者数の増大の背景としては、個人営業の美容院が経営者の高齢化と後継者不足で廃業する一方、比較的多くのスタッフを有するチェーン店が増加してきていることなどが考えられる。

家計のパーマ代への支出は縮小傾向にあるため、美容院同士の競争は激しさを増していると推察できる。厚生労働省の報告書「美容業の実態と経営改善の方策(2012年)」では、美容院客単価の下落も指摘されており、美容院経営を圧迫する要因の一つと考えられる。

2. 美容サービスの導入と専門サービス店化の流れ

パーマ代の減少については、全般的に女性がパーマをかけなくなっているというトレンドがある。特に若い女性の減少が顕著である。主な理由としては、パーマ代が高いことや髪が痛むことなどが挙げられる。また、若い世代を中心に「ナチュラル志向」が顕著であり、ストレートヘアーが好まれ、さまざまなスタイリング剤を使って好みのヘアースタイルにまとめる方法が主流となっている。

年代性別の利用状況を見ると、パーマに代わって、他の理美容サービス(美顔、エステ、ヘッドスパ、着付け、カラーリング、まつげエクステンション、ネイルケアなど)の需要が拡大している。これらの多くは、美容院において付加的サービスとして導入されている。

最近では、「白髪染め」に特化した「白髪染め専門店」という業態も現れている。これは高齢者の増加を捉えた新サービスと言える。

また、高齢者をターゲットにした「訪問美容院」という業態も増えている。その名のとおり、店舗を構えるのではなく、介護施設や老人ホーム、過疎地などを周回してサービスを提供している。

美容院の特徴

  • 美容業界は、一見、華やかな業界であるが、技術者は見習いからスタートして技術を向上させていくという職場であり、良くも悪くも「職人気質」が残っている業界である。
  • 市場は過当競争の状態にあるため、カットやパーマという従来のサービスだけで生き残ることは難しいと考えられる。そのため、ネイルケアやネイルアートなど周辺サービスを含めたサービスを提供する店舗が多い。また、白髪染め専門店など特定の周辺サービスに特化した店舗や、キッズ向けヘアサロンなど顧客を絞り込んで成功している店舗もある。

美容院業態 開業タイプ

あらかじめコンセプトを定め、それに沿って店舗タイプを選定することが重要となる。

(1)トレンドタイプ

流行に敏感なユーザーをターゲットにした店舗であり、人気スタイリストの存在や優れた美的センスを売りにしている店舗である。料金は比較的高めであり、都心の一等地など人が多く集まる好立地で営業する店舗が多い。

各種美容サービスなどバラエティに富んだものを提供しているのは、この店舗タイプに多い。

(2)格安店

チェーン店に多く、圧倒的な料金の安さを売りにしている。安さゆえ多様なサービスはないが、好調に店舗数を伸ばしている。住宅街、繁華街、オフィス街など、さまざまな場所に展開している。フランチャイズ方式で展開しているチェーンもあり、異業種からの参入も可能である。

(3)従来型店

個人などが美容師の資格を取って開業し、従来の美容サービスを中心に提供する店舗である。親が経営している店舗を継いで、親子で営業を続けている店舗もある。いわゆる、地域密着型の店舗となる。

開業ステップと手続き

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下の8段階に分かれる。

(2)必要な手続き

美容院を開業する場合、開業予定日の1週間前までに、保健所への届出を行う必要がある。届け出に際しては、以下のような書類を必要とする。

  • 施設の平面図
  • 構造、設備の概要
  • 開設者が法人の場合は、会社の登記簿謄本
  • 有資格者の免許証(提示)
  • 従業員名簿
  • 従業員の健康診断書・店舗の図面

また、経営者自身が「美容師」の資格を有しているか、「美容師」の資格を有する者を雇用していなければならず、常時2人以上の美容師が従事する店舗においては、「管理美容師」を置く必要がある。

品揃え・サービスの工夫

美容院は毎年、開業廃業の店舗数が多く、激しい競争状態にあると言われている。従来のサービスだけでなく、化粧品販売、美顔エステ、ネイル、まつげエクステンションなど、周辺サービスの充実を検討する必要があるだろう。
また、郊外地域などでは、小さな子どもを持つ主婦層向けに充実したキッズスペースや託児サービス(保育士が常駐しているケースも)を併設する店舗も出てきている。
このように想定する顧客層のニーズを的確に捉えた工夫が求められる。

ただし、各種サービスが評価されるかどうかは、美容院としての基本サービスが評価されたうえでの話である。技術者の力量によって顧客満足度は大きく左右される。日々の研鑽はもちろんのこと、カット技術も常に最新の動きを押さえておきたい。

また、集客や店舗イメージを顧客に有効に伝えるため、ネット集客サービスやSNSの活用は必須と言える。オーナー自らがイメージ戦略の担い手になり、情報発信していくことも求められる。

必要なスキル

  • 美容師資格を取得するには、厚生労働大臣の指定した美容師養成施設で所定の学科を習得した後、学科試験・実地試験に合格しなければならない。実地試験を受験するには、1年間の店舗での実地訓練期間を要する。
  • 管理美容師資格を取得するには、美容師として3年以上の実務経験を積んだ後、各都道府県で実施される所定の講習を修了する必要がある。
  • ただし、上記の資格は技術者として最低限のものであり、この資格をもっていれば開業できるわけではない。通常は、どこかの店舗にスタッフとして勤めることから始まる。そこから技術や接客レベルを高め、自らの固定客を作っていくことが求められる。固定客は、将来独立したときに自店舗の顧客となり、開業時からの安定した売上を支えてくれる存在になる。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

美容院は10坪程度の狭い店舗でも開業可能であるが、別途、追加的なサービスを提供する場合は、さらなる設備投資が必要となる。

【参考】:店舗面積約10坪の美容院(個人店)を開業する場合の必要資金例

(2)損益モデル

■売上計画

店舗の立地や業態、規模などの特性を踏まえて、売上の見通しを立てる。平日、土曜、日曜、祝日で来客予想数を変えるなど、細かく作りこむことが重要である。

(参考例)美容院(個人店)

※平日のいずれか1日を休業日に設定

■損益イメージ(参考例)美容院(個人店)

人件費:従業員2名を想定

※個人事業主を想定していますので、営業利益には個人事業主の所得が含まれます。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

掲載日:2019年1月

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