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サービス業
民泊

目次

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民泊(住宅宿泊事業)とは、住宅(戸建住宅やマンションなどの共同住宅等)の全部又は一部を活用して、旅行者等に宿泊サービスを提供する事業である。2018年の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行によって本格解禁された。法的には、旅行業法(簡易宿所)、民泊新法、特区民泊いずれかの規定に従うことになる。

(1)急増する外国人観光客の受け皿として期待が集まる

東京オリンピックを控え、日本が観光地としての注目を浴びている中、訪日外国人観光客数が近年急増している。この伸びに伴い、外国人の延べ宿泊者数も大きく伸びている。しかし、人気の高い都市部のホテルでは、宿泊率が通年で80%を超えており、繁忙期における宿泊施設の供給は追い付いていないのが実情である。そのため、急増する外国人旅行者や多様化するレジャー需要の受け皿として、民泊などの役割が期待されている。

(2)民泊新法施行後、多くの事業者が参入

2018年6月の民泊新法施行後、住宅オーナーや不動産管理・仲介業者などによる参入が相次いでいる。観光庁資料によると、2019年2月15日時点での民泊事業者の届出件数は13,660件であり、半年前(2018年7月13日5,867件)と比べて7,000件以上増加している。
参入形態としては、個人が所有している空き家住宅、投資用マンションを活用するケースや、不動産会社がサブリースとして一括借上した物件を民泊用に転用するケースが多い。たとえば、一部屋が広すぎて居住用としては不人気だった物件や、借り手がなかなか見つからなかった投資用マンションが高収益な民泊施設になったという事例も数多く出てきている。

民泊の特徴

民泊事業は、現在、以下の3つの法のいずれかに基づいて事業運営することとなっている。

(1)住宅宿泊事業法(民泊新法)

民泊新法では、「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」という3つの業務領域が規定されているが、民泊事業者はこのうち住宅宿泊事業者に該当する。

(2)旅館業法

旅館業法に基づく許可には、「ホテル」「旅館」「簡易宿所」「下宿」という営業区分があるが、民泊事業を行う場合は、簡易宿所としての営業許可を取得するのが一般的である。

(3)国家戦略特区法

政府は、東京都大田区、千葉市、新潟市、大阪府下34の市町村、北九州市に、旅館業法が除外される国家戦略特区を設けている。この法の基準に従い民泊事業を行うこともできる。

上記、いずれの場合でも差別化ポイントは、好立地、そして清潔さであると考えられる。民泊新法施行後、同法での民泊開業の人気立地は、都心と観光地の近くである。好立地の空き家やマンションの空室を利用して民泊事業を始める人が多い。また、民泊は、他の宿泊施設に比べ一般に利用金額が安い点が特徴である。民泊各事業者も低価格をアピールしたところが多い。

民泊業態 開業タイプ

開業タイプとしては、準拠する法律によって3つのタイプがある。

(1)住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づくタイプ

2018年6月に施行された住宅宿泊事業法に基づいて民泊事業を行うタイプである。住宅専用地域での営業が可能であり、宿泊室面積の小さな住宅でも開業が可能であるというメリットがある。
本法に基づく場合の規制等は以下の表の通りである。

住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく場合の規制

(2)旅館業法に基づくタイプ

旅館業法の簡易宿所として民泊事業を行うタイプである。宿泊場所を多人数で共用する構造・設備を設け、宿泊料を受けて宿泊させる業態と定義され、民宿、ペンション、ユースホステルなどもこの分類に該当する。
本法に基づく場合の規制等は以下の表の通りである。

旅館業法に基づく場合の規制

(3)国家戦略特区法に基づくタイプ

旅館業法の特例であり、いわゆる「特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)」と呼ばれるタイプである。外国人旅行客の滞在に適した施設を賃貸借契約等に基づき一定期間使用させる事業であり、東京都大田区をはじめとした特区で取り組むことが可能である。
本法に基づく場合の規制等は以下の表の通りである。

国家戦略特区法に基づく場合の規制

開業ステップと手続き

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下の7段階に分かれる。

開業ステップのフロー図

(2)必要な手続き

・住宅宿泊事業法(民泊新法)による場合
住宅宿泊事業法に基づいて民泊事業を行う場合は、都道府県知事への届出が必要となる。住宅宿泊事業の届出は、原則として民泊制度運営システムを利用して行う。
<民泊制度運営システム>
http://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/business/system/

・旅館業法による場合
旅館業法で簡易宿所として民泊事業を行う場合は、都道府県の許可を得る必要がある。許可申請は管轄地域の保健所で行う。必要書類提出による申請後、保健所の施設検査があり、合格すれば民泊事業の営業が許可される。

・国家戦略特区法による場合
国家戦略特区法に基づいて民泊事業を行う場合は、都道府県知事の認定を受ける必要がある。自治体の条例等により基準等が異なる場合があるため、手続きの詳細については特区指定地域の自治体に確認する必要がある。

サービスの工夫

・立地に関しては、都心や観光地の近くであることが集客における重要なポイントとなる。具体的には、交通の便が良く主要駅から徒歩10分圏内にあり、近くにはスーパーやコンビニエンスストア、飲食店が多数ある利便性のある立地が望ましい。

・料金は、基本料金が1泊1人あたり、清掃料金が1組宿泊あたりで徴収される。料金の低さが重要なポイントであるが、繁忙期と閑散期の区別を付けて、段階的な料金設定を行うべきである。

・清潔さも、顧客満足度を大きく左右する重要ポイントである。利用客が入れ替わる際の清掃では、プロのハウスクリーニング業者に委託するなどして、落ち度のない清掃を心掛けたい。

・宿泊客の誘致に際しては、『Airbnb』などの宿泊予約サイトに登録しておくとよい。ほとんどの旅行客がネットの予約サイトで宿泊先を探しているため、必須であるといえる。

・複数の宿泊予約サイトを利用する場合、ダブルブッキングを防ぐ仕組み作りも重要である。宿泊予約サイト間の部屋在庫を同期する、サイトコントローラーというサービスが便利である。

必要なスキル

住宅宿泊事業法によれば、外国人観光客向けの措置として、外国語を用いて、住宅設備の使用方法に関する案内、移動のための交通手段に関する情報提供、火災・地震などの緊急時における通報連絡先に関する案内をすることが義務付けられている。
このため、施設や緊急時の非難方法などを伝えるパンフレットや案内板、住居内に設置された各器具には、外国語(英語、中国語、ハングル文字など)での説明が記載されている必要がある。口頭での意思疎通には、必要最低限の語学力が求められるが、最近は、翻訳・通訳機能を持つ機器やアプリも登場している。

同地域における競合店の調査も重要である。立地や施設、サービス内容、料金の優劣を比較し、自店の競争力強化につなげる。

宿泊者の安全・衛生面の確保のため、室内および住宅周辺の日々の清掃も行い、できれば、定期的に専門の事業者に依頼して、ハウスクリーニングを実施したい。

兼業や副業として民泊事業を行う場合でも、事業主としてのプロ意識と、サービス業としての接客力は必要である。民泊関連の協会も数多く設立されてきている。その中には、民泊事業者を対象にした教育・研修を行っているところもあるので、そのような協会へ加入し、研修などへも積極的に参加することをお勧めする。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

民泊は基本、住居の一部を宿泊用に転用するので、初期投資は施設整備費が中心である。

【参考】:自宅にて民泊(民泊新法による)を開業する場合の必要資金例

自宅にて民泊(民泊新法による)を開業する場合の必要資金例の表

(2)損益モデル

■売上計画
住宅の立地や規模などの特性を踏まえて、売上の見通しを立てる。

(参考例)民泊(民泊新法による)

民泊(民泊新法による)売上例の表

■損益

民泊(民泊新法による)損益例の表

※個人事業主を想定していますので、営業利益には個人事業主の所得が含まれます。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)