業種別開業ガイド

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飲食業
移動販売

目次

トレンド

1.再び注目を浴びる移動スーパー

移動販売の中でも最近注目されているのは、移動スーパーである。移動スーパーとは、昭和の時代に、地方の過疎地域や団地などで多く見られた販売形態である。その後、スーパーマーケットやコンビニの出店増加により移動スーパーの数は大幅に減少した。

しかし、近年、地方都市や限界集落では人口減少を理由にスーパーなどが撤退や閉店する事例が出てきている。その結果、日常の買い物をする場所を失う人たちも少なくない。また、高齢となり遠方まで買い物に出かけられなくなった人も増えている。このような状況を背景にして、移動スーパーの価値が見直されている。

2.ユニークな移動販売も登場

移動スーパー以外の業態では、ランチやパン、焼き鳥、クレープなどの調理食品の販売、コーヒーなどの喫茶類が多く見られる。アパレルやアクセサリーなど、食品以外の移動販売もあり、若者が集まる場所を狙って出店している。移動販売は、商品と販売用車両・什器があれば小資本でも始められる業態であるため、さまざまな商品での参入が相次いでいる。

3.自治体からのバックアップもある社会的事業

各地方自治体も小売店の撤退で起こる「買い物弱者」の存在を無視できなくなっている。そのため、移動販売車に対して補助を行う市町村も増えている。移動販売事業は、社会問題を解決する価値ある事業であるとも言える。

1.移動販売の特徴

移動販売は販売用に改造した自動車を用いて、場所を固定せずに販売する業態である。ポップな車体広告でクレープなどを扱う、おしゃれなイメージの移動販売店も出てきている。

移動販売のメリットは、店舗を移動できるため、商品や顧客ターゲットに応じて自由に販売場所を変えることができることにある。売上の良い立地の確保や、移動販売の特徴を活かして、イベントなど需要のある好条件な場所を探し出して出店できるかどうかが、成功の大きなポイントである。

2.移動販売業態 開業タイプ

あらかじめコンセプトを定め、それに沿って開業タイプを選定することが重要となる。

(1) 生活必需品販売型

地方などのいわゆる「買い物弱者」と呼ばれる人たち向けに、日々の生活必需品や食品、生鮮品などを販売するタイプである。地域の人たちが集まる広場や公共施設内の空きスペース、または道端などに停車し販売する。週に1~2回程度、決まった場所で決まった曜日と時間帯に販売を行うのが一般的である。車両には、食品販売用の改造車両が使われる。

(2) イベント販売型

ランチタイムのオフィス街や人が集まりやすい繁華街、ショッピングモール、商店街、スーパーマーケットの軒先、週末の公園、イベント会場などで飲食料品などを販売するタイプである。販売車両には、調理設備の付いた改造車両が使われることもあるが、保温・保冷設備、コンロと焼き台だけを設置した軽トラックが使われることもある。

(2) ファッション・小物販売

食品関係ではなく、ファッション、小物を扱うタイプである。ショッピングモールや商店街などに出店していることが多い。

3.開業ステップと手続き

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下の6段階に分かれる。

(2)必要な手続き

・食品衛生法に基づく営業許可
調理品を販売する場合は、食品衛生法に基づく営業許可が必要になる。営業許可の種類は、菓子類、アイスクリーム類、弁当類、総菜類など、提供品目ごと取得する。また、その場で飲食してもらう場合は、飲食店営業や喫茶店営業の許可も必要になる。また、移動スーパーのように、調理加工しない場合でも、食材を販売する場合は、乳類販売業、食肉販売業、魚介類販売業などの営業許可が必要となる。

・道路交通法や都市公園法の規制
道路交通法や都市公園法の規制も受ける。路上や公園で販売を行う際は、事前に管轄する警察署や自治体の許可を受けなければならない。ただし、認められないケースも多いため、その場合には、定休日の店先や、駐車場スペースを借りるといった対策が必要となる。

・車両の届出
調理品の販売に使用する車両も、所轄保健所の営業許可申請時に、同時に届け出る必要がある。同車両は、手洗い設備など保健所で定められた衛生上の条件を満たし、車両検査を通過し、車両登録したものでなければならない。

4.メニュー・サービスの工夫

移動販売の取扱商品は多岐にわたる。

・飲食料品
移動スーパーでは、パン類、菓子類、缶詰類など保存の効く食品のほか、生鮮食品も販売される。イベント型では、アイスクリーム、クレープ、たこ焼き、焼き鳥、焼き芋、ホットドッグ、ケバブ、おにぎり、コロッケ、コーヒーなどさまざまな物が販売されている。また、カレーや丼物など、簡単な調理で提供できる料理も提供されている。弁当類も販売されており、平日昼間のオフィス街を中心に、ビジネスパーソンの間で人気が高い。
調理品を提供する場合は、調理済み、または調理に時間をかけない商品を出すべきである。また、調理時間をより短縮化できるよう調理工程のマニュアル化を行い、調理器具の配置を工夫することなども必要である。

・日用雑貨
基本的にコンビニエン・スストアやスーパーで扱われている日用品をあげることができる。移動スーパーで多く販売されているのは、台所用品、バス・トイレ用品、洗濯・掃除用品などである。
日用雑貨は家庭で常時使用される商品であるため、同じ場所で長期に商売ができるというメリットがある。事前に販売時期の告知を行い、リピーターを獲得することが大事である。

・ファッション関連
ファッション関連商品として、Tシャツや帽子、靴下、アクセサリー(小物)などが販売されている。
イベント時や若者が集まる場所に出店する。そのため、イベントの予定やターゲット層、人々が集まりやすい場所や時間帯などの調査が欠かせない。

・集客の工夫
移動販売は車体そのものが動く宣伝広告である。商品のイメージがしやすく、遠くからでも目立つような車体であることが必要である。販売場所と販売日時の予定が立ったら、ホームページやSNSなどで告知を行う。その際に、事前に販売場所でチラシを配ったり、立て看板を置いたりできればなお良い。

5.必要なスキルと施策

商品特性やターゲット顧客を想定し、それに合わせた時間帯とエリアで販売を行う。ランチタイムにはオフィス街や大学などの周辺で販売を行うなど、出店場所の選定に関する事前のリサーチが重要となる。

また、ショッピングモールやスーパーマーケット、公共の場所、イベント会場での出店には、出店許可が必要である。場合によっては賃料が発生することもある。集客力のある場所は、多くのライバルが出店を狙っている。早くに情報をキャッチし、アプローチを行う営業力が求められる。

移動スーパーの場合は、商品の種類が多い反面、販売スペースが狭いため、品揃えの見極めが重要である。地域住民の属性なども踏まえ、売れ筋商品を十分把握しておく。接客時に客から要望を聞くことにも積極的に取り組みたい。

道路や公共のスペースに多くの人が集まれば、顧客や地域住民との間のトラブルも発生しやすい。特に、大音量のスピーカーでの集客はトラブルになりやすいので注意を要する。地域の人たちに不快感を与えないためのマナーも求められる。

6.開業資金と損益モデル

(1)開業資金

移動販売は、自宅を事務所とした場合、販売用車両と広告宣伝費程度の資金だけでも開業できる。

【参考】:個人で移動販売(イベント型)を開業する場合の必要資金例


(2)損益モデル

■売上計画
商品特性や販売場所での集客状況などを予想して、売上の見通しを立てる。

(参考例)移動販売(個人、イベント型)

■損益イメージ(参考例)移動販売(個人、イベント型)

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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