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飲食業
ベーカリー

目次

トレンド

1. パン小売店の主流となったベーカリー

総務省統計局「経済センサス(2~5年ごとの調査)」によると、1991年時点では約24,000店ほどあったパン小売店のうち、ベーカリー(パン製造小売店)の割合は46%程度にしかすぎなかったが、徐々にベーカリーの割合が増え、2016年時点ではパン小売店全体の86%に達した。

焼き立てパンを提供するベーカリーの販売スタイルが消費者の支持を得て、いまやベーカリーがパン小売店の主流となっている。

注)パン小売専門店:主として食パン、コッペパン、菓子パンなど各種パン類を小売りする事業所。
パン製造小売店:主として食パン、コッペパン、菓子パンなど各種パン類を製造し、その場で小売りする事業所。
(サンドイッチ、ハンバーガーなどの調理パンはここには含まない。)

2. 飲食部門への進出

ベーカリーは、従来のような「パンを焼いて小売りする店」という位置付けから、近年では、「焼き立てパンをその場で食べて楽しむことのできる店」という、イートインが可能なベーカリーが増えてきている。簡易な喫茶形式の「ベーカリー・カフェ」や、主だった食事もできる「ベーカリー・レストラン」という業態も生まれている。

3. 直近の市場規模は拡大

「経済センサス」によると、直近のベーカリー(パン製造小売店)の商品販売総額は、2012年で3,125億円、2014年で4,171億円、2016年で4,723億円と堅調に拡大してきている。上述のように、ベーカリーの業態が焼き立てパンを提供するだけでなく、飲料や食事も提供するカフェやレストランのような飲食業へと業態を拡大させ、さらに「居心地のよさ」も追求するなど、消費者ニーズを捉えていることもプラスに働いていると考えられる。

ベーカリーの特徴

ベーカリーは、一般に、オールスクラッチ製法と呼ばれる手法でパンを作る店とベイクオフ製法と呼ばれる手法でパンを作る店に分類できる。

  • オールスクラッチ製法
    これは、原材料の仕入から焼き上げまでをすべて同じ店舗内で行う製法である。メリットは原材料の選択が自由で個性的な商品を提供できることであり、デメリットは、パン生地をこねる工程から始めるため、熟練技術者(職人)や、ミキサー・生地加工機械などを必要とすること、また、発酵過程に長時間を要することなどである。
  • ベイクオフ製法
    これは、パン生地工場から冷凍された生地を仕入れ、店舗で焼いて仕上げる製法である。店内での作業が少なく、大がかりな設備や熟練技術者も不要であることから諸コストを抑制できるというメリットがある。一方、パン生地の仕様が一律に制限されてしまうというデメリットもある。

ベーカリー業態 開業タイプ

あらかじめコンセプトを定め、それに沿って店舗タイプを選定することが重要となる。

(1)独立店

パン製造に関する高度な技術を身に付けた職人が自身で、または複数の職人を抱え、独自で自在な商品開発や事業運営を行う店舗である。製法は、オールスクラッチ製法を採用しているところが多い。確かな技術をもつ職人の確保や育成が店舗の成功を左右する。

(2)チェーン店

有名ブランドが展開するチェーン店である。商品の均一化を図るため、ベイクオフ製法が多く取られており、パン生地は、本部の指定する工場から各店舗へ冷凍配送される。店舗では、パン生地の解凍から熟成・成形・焼成の工程が行われ、消費者にパンが提供される。

開業ステップと手続き

(1)開業ステップ

開業に向けてのステップは、主として以下の8段階に分かれる。

(2)必要な手続き

サンドイッチやハンバーガーなどの調理パンを作らず、焼いたパンの小売のみを行う場合は、「菓子製造業」の許認可のみで開業できる。

一方、調理パンを作る場合や、イートイン形式をとる場合は、「菓子製造業」と「飲食店営業」の両方の許認可が必要となる。また、調理・飲食営業を行う場合は、「食品衛生責任者」の選任も必要となる。

メニューづくり

  • 食パンやフランスパンなどの日常食については、品切れをさせないように毎日、安定的に提供するようにすることが大事である。
  • 来店客に飽きさせず固定客になっていただくためにも、定期的な新商品の提供や、不人気メニューの入れ替えが必要である。調理パンの製造も検討し、バラエティに富んだ商品開発と提供を行うべきであろう
  • より、消費者の満足度向上や他店との差別化を狙うなら、イートインスペースの併設も検討したい。焼パンを主体としたカフェでもよいが、サンドイッチなどの調理パン、さらには、サラダやスイーツ系(焼き菓子、ケーキ、アイスクリームなど)の提供までできればなお良い。

必要なスキル

  • パン製造は、パン生地の生成、発酵、成形、熟成、窯入れという長い工程と時間をかけて行うものであり、一人前にパンを焼き上げられるまでには、一定期間以上の修業が必要である。自らは経営管理に徹してパン製造は職人に任せるという選択肢もあるが、個人店の場合は、オーナー自らがパン製造に関わるという店舗が一般的である。
  • パン製造技術を身に付けるには、調理師学校を卒業したり、実際にベーカリーに就職して一定期間、パン製造を担当したりするというのが一般的である。ベーカリーに就職した場合は、パン製造技術だけでなく、販売や接客についても学ぶことができる。また、ベーカリーとして独立したい人を対象とした、パン製造技術から開業まで総合的に支援することを目的とした開業支援コンサルティング会社もある。そのような支援サービスを利用するのも一つの方法であろう。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

ベーカリーにおける設備としては、ミキサー、発酵機、成形機などの厨房機器、そして店内陳列棚のほか、イートインを行う場合は飲食スペースの設備など多くの機器が必要である。

【参考】:店舗面積約15坪のベーカリー(独立店)を開業する場合の必要資金例

(2)損益モデル

■売上計画

店舗の立地や業態、規模などの特性を踏まえて、売上の見通しを立てる。平日、土曜、日曜、祝日で来客予想数を変えるなど、細かく作りこむことが重要である。

(参考例)ベーカリー(独立店)


※平日のいずれか1日を休業日に設定

■損益イメージ(参考例)ベーカリー(独立店)


人件費:従業員3名を想定

※個人事業主を想定していますので、営業利益には個人事業主の所得が含まれます。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

掲載日:2018年12月

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