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起業のススメ 社会人起業VS学生起業

老舗社長とベンチャー起業家、2足のわらじも根底は同じ 株式会社情報基盤開発代表 鎌田長明氏

鎌田長明社長は「老舗の社長とベンチャー起業家」という2足のわらじをはいている。

老舗とは1880年に創業した産業用はかり・計量システムメーカーの鎌長製衡(香川県高松市)。鎌田の実家であり、2012年に創業家出身の6代目社長に就任した。ベンチャーとは、紙に記入されたアンケート結果の代行入力サービス「アルトペーパー」を運営する情報基盤開発だ。「両社のシナジーは特にない」(鎌田社長)というが、2社の社長をきっちりと務めている。“老舗の跡取り”に生まれて、なぜ自らも企業したのだろうか。

アンケート結果を素早くデジタル化

鎌田の立ち上げた情報基盤開発は「なくならない紙を、最新の技術を使ってデータ化する」会社だ。アルトペーパーの利用者はマイクロソフトのワードで調査や質問内容を入力し、市販のプリンターと普通紙でアンケート用紙を作成する。回収したアンケート用紙をスキャナーで読み取って、インターネットを通じて同社へ送信すると、後日、集計結果が送られてくる仕組みだ。

4択の選択肢5問のアンケートを100枚集計した場合、人間の目視確認なしで1000円(税別)、確認ありで2000円(同)と気軽に利用できる料金に設定した。手書き入力されたコメント欄の入力代行は1文字0.3円(同)から。数十枚の先行調査から数十万枚の従業員の満足度調査までに、幅広く対応する。同社独自のOCR認識技術と、効率的に入力、正誤確認ができるシステムを開発し、実現した。

今まで、カゴメやJTB、大手電機メーカーなど250社と契約した。2015年度はA4用紙換算で150万枚を集計・入力した。鎌田は「大きな市場ではないが、確実な需要がある」と話す。社名を見ると最先端のIT企業にも見えるが、泥臭いアナログ企業だ。デジタルデータを研究した鎌田が事業として行き着いた先がアナログだった。

社会資本にIT活用

鎌田は2003年に東京大学経済学部を卒業し、大学院も修士課程は経済学部研究科に進んだ。その後「社会資本をIT(情報技術)で効率化できたら面白いのでは」と考え、博士課程は工学系研究科に進学する。そこでは、JR東日本と鉄道の橋梁管理の共同研究をした。

鎌田は橋梁の一元的な管理ができないかと考え、橋梁管理ソフトを試作。ひび割れや反り、破損、劣化状況などの評価項目を入力すると、橋ごとに最適な補修スケジュールや検査内容を提示するものだ。この試作品がJR東日本から高い評価を得た。「個人でJR東日本と取り引きするわけにもいかない」ため、会社を設立し本格的な開発に乗り出した。鎌田を含む学生8人で資金を出し合い、資本金300万円で会社を設立した。これが情報基盤開発のスタート事業だ。

試作時の評価項目は10項目程度だったが、「毎年、橋の評価項目などの追加や改良を行い、現在は1000項目ほど」と機能を充実させていった。同ソフトは現在も鉄道会社向けに販売している。

橋梁から紙に注目

この開発過程で、橋梁の検査は紙の調査用紙を大量に使っており、紙からでデジタルデータ化する需要があることを知った。「紙ものの入力は多く、入力作業はそう簡単になくなるものではない」と判断し、現在の主力事業に成長した「アルトペーパー」を思いつく。「アンケートや検査帳票などバラエティがあって、部数が少ないものの入力を簡単に、安く、早く入力結果を利用者に提供する」ことを目標とした。このため、自由度が低い既存のマークシート用紙などを使わずに、オフィス内にあるパソコンとプリンターでアンケート用紙作成できるようにと試みた。

だが、「やってみると、紙を読み取る行為は結構難しかった」。市販のプリンターの印刷では印刷面が数ミリメートルずれたり、印刷が薄かったりする場合がある。消しゴムのカスの付着も大敵だ。用紙の色も白色だけでなく、ピンク色を使うこともある。すると、OCR(光学式文字読み取り装置)で、回答者のチェックマークを正しく認識できなくなる。鎌田は「いろんなイレギュラーケースがあった」と苦労を語る。

3倍速くするシステム

実用化までには4年を要した。この間に、印刷ずれの歪みを補正する技術やカラーの用紙対応などの改良を重ね、OCRでチェックマークをほぼ正しく読み取れるようにした。回答欄は、黒だけでなく赤や青色のボールペンでも認識できるようにした。また、手書き文字のデータ入力は、速度向上と誤字脱字を極力減らすことを考慮してシステムを設計した。パソコン画面の入力欄の上に紙の回答欄を画像として一緒に表示し、入力作業者は紙と画面を目で往復させることなく、画面だけを見て入力できるようにした。「見間違い、覚え間違い、打ち間違いを減らすことができる。これだけで作業が3倍速くなる」という。

チェックマークも同様に画面に表示させ、人間の目による最終チェックを効率化した。60万枚を集計したケースでは目視チェックを含めて約1カ月で納品したこともある。文字入力は人件費が大半を占める。コスト重視の場合は中国に外注しているが、日本語の漢字と中国語の簡体字の違いや、「か」と「が」、「ワ」と「ク」などを間違えないように指導している。

紙は1円のデバイス

近年、スマートフォンやパソコン、タブレットを使用したアンケートもあるが、鎌田は「色んな人にアプローチするのは、向いてない。オープンキャンパスのアンケートでは回答率が6割から2割になった」という。その場で紙に書いてもらい、回収するのが一番というわけだ。「紙は1円のデバイス。未だに1円の電子デバイスはない。20%くらいは紙の代替をできるものがない。われわれは、誰かがやらなければならない20%の市場を押さえる」とシェア拡大を目指している。

鎌長製衡は、微紛体からトラックごと積み荷を図るトラックスケールまで多くのはかり手掛け、計測を通じて産業を支えている。情報基盤開発も、データ結果を測定する手助けを通じて顧客企業を支えている。実は両社の社会的な使命は、「はかって支える」という点で結びついているのだ。

(敬称略)

鎌田長明氏

ITなどホットな仕事をする人もいっぱいいて良いと思うが、我々のようにメインストリームを狙わない仕事もある。紙の入力ができないとなると、困る人が出てくる。紙も社会インフラのひとつ。技術を使って、世の中の役に立つことができる。そういった技術的に地道な努力を重ねる仕事は、日本人に合っていると思う。複合機市場で日本のシェアがナンバーワンなのは、地道な努力があってこそ。そういう分野を見つけて、活躍してみるのも良いと思う。

企業プロフィール

社 名 株式会社情報基盤開発
法人番号 6010001100940
代 表 鎌田長明
事業内容 マークシート・手書きアンケートの入力代行、統計解析・データベース、画像処理システム
所在地 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学アントレプレナープラザ4F
設立年月 2004年8月(有限会社情報基盤開発、後に株式会社化)

掲載日:2016年3月25日

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