女性起業家応援ページ

一億総活躍社会が叫ばれ、女性の活躍が期待される昨今。自分の特技を活かした起業や、社会的ニーズや課題を解決するために、起業をする女性も増えています。本ページでは、起業のきっかけや困難への対処法、今後のプランについて先輩企業家に話を聞くとともに、女性による企業支援事例などをご紹介します。

東北の被災三県で女性支援に取り組む

女性が住みやすい社会を作る伴走支援 ~ 東北女性の生活感覚を行政に生かして ~

東日本大震災から6年半。被災地では長期的な街づくりや地域活性化の取り組みが目立ち始めている。特に、全国平均と比べて進行の速い少子化・高齢化・人口減少は被災三県(岩手・宮城・福島県)が直面する大きな課題だ。

女性が住んでいて楽しいと感じられる街を作ることで、人口流出を防ぐことができる――。震災直後からボランティアで現地支援に入っていた石本めぐみさんは話す。地域に住む女性たちが集まれる場や学ぶ機会を提供。女性の起業を応援することで、定住も進むはず、という意図を聞いた。

特定非営利法人ウィメンズアイ代表理事
石本めぐみ(いしもと めぐみ)

目次

事業をはじめたきっかけ

―― 事業を始めたきっかけを教えてください。

震災直後、現地にボランティアに行き、半年間の寝袋生活を経験しました。震災復興と女性の課題に長期的に関わるため、2011年6月に任意団体を作っています。2013年にNPO法人ウィメンズアイを設立して今に至ります。

現在、フルタイムのスタッフは私を入れて4名。パートタイムのスタッフを合わせると全員で9名の体制です。きっかけは被災地支援でしたが、今は自分たちの活動を「女性が住みやすい社会を作るための伴走支援」と定義しています。

―― 震災直後は国内外から多くの人・団体が東北に入り、支援をしました。

そうですね。女性の起業支援セミナーもたくさん開かれました。ただ、多くは数カ月間の座学のみ。その後のフォローがなく「はい、これでやり方は分かりましたね。それでは起業してください」でおしまいでした。それでは、実際、難しいです。

例えば震災が起きた後、東北の女性たちが作る手作り品がよく売れました。寄付の代わりに買う人が多く、2万個、3万個と作っても売れたのです。では、本当にそれで起業ができるでしょうか。長期的に売れるのでしょうか。また、女性たちはそれを作って長期的に稼いでいきたいと、本当に思っているのでしょうか。

残念ながら、多くの場合、東北の女性向けの起業支援は、こうした事情を加味していなかったように思います。また、首都圏などと異なり、若い女性や妻、お嫁さんが負わされている家庭責任の重さ、自由に意見を言いにくい土地柄に配慮していなかったようにも思います。

私たちは、東北の女性たちが抱える特有の課題に寄り添いつつ、彼女たちの自己実現や経済的自立を長期的に支援したいと考えています。

活動内容

―― 具体的に、どのような活動をされていますか。

2つの柱があります。1つはテーマコミュニティの立ち上げ・運営支援です。子育て中のママたち、手芸が好きな人たち、お菓子などを作りたい人といった具合に、地域で興味関心を共有する人たちが集まれる場を作っています。

これまで地域での小さな集まりを700回以上開催・支援し、延べ7000~8000人が参加しました。様々な傾向が分かり、ノウハウも溜まってきました。最終的には地域の特産品を使ったものづくりを通して、女性の経済的自立につながれば、と思っています。

もう1つの柱は地域で活動する女性リーダーを支援する取り組みです。「グラスルーツアカデミー東北」と名付けた3日?7日のプログラムを年3回程度、開催しています。ここには、すでに活動をしている女性たち、例えば妊産婦支援、子ども支援、街づくりなど様々な課題に取り組む人たち20名が集まります。

初回は2015年に南三陸町で開催し、被災三県の女性たちと海外の女性の交流も行いました。そこで分かったことは、東北という家父長制の強い地域で、それでも地域に残っている女性たちは地元が大好きということです。また、東北の様々な団体の代表は男性が多く、女性は研修など学びの機会、人脈を広げる機会も少ないということでした。

地域の特徴と解決策

―― 都市部の女性とは課題の質が異なるようです。

はい、その通りです。私たちの活動を対外的にお話する時は「東北で女性リーダーの育成をしています」と言うことが多いです。分かりやすいですから。

実際にやっているのは「地域を良くしようとしている女性を応援すること」です。2014年に開かれた日本創生会議で増田寛也さんが提示した「消滅自治体」が話題になりました。具体的な中身を見ると、消滅自治体とされた東北の自治体のほとんどが被災地でした。

東北では、出産可能年齢の若い女性が少なく、出生率の低下や人口減少が日本全体と比べて極端なほど落ち込んでいます。なぜでしょうか。

この6年半の支援を通じて感じているのは、東北では若い女性に対する抑圧が大きすぎる、ということです。自由に意見を言えなかったり、家族や親戚、近所の人の目があって外出がままならなかったりする。束縛が大きすぎることを嫌って、若い女性たちは都会に出て行ってしまう。おそらく、日本全国の田舎で同じことが起きていると思います。私も地方出身なので、肌感覚は分かります。

―― どうしたらいいのでしょう。解決策はありますか。

解決策は目の前にあります。今、地域にいる若い女性たちが幸せに生きられるような町を作ることです。彼女たちは、色々なしがらみや大変なことがあっても町に残っている。それだけ、地域を愛しています。彼女たちの力を使わない手はありません。

では、若い女性が幸せに生きられるというのは、どういうことでしょうか。それは、夢がかなう、ということ。具体的には自分で働いて自立できる、ということです。「女は子どもを生んだら家庭に入れ」と当たり前に言われる土地で、若い女性が幸せに生きられるでしょうか。この簡単なことに、気づかない人が多いと思います。

―― 確かに、Iターンで来た若い人が起業した事例を見ると「地域の人がすごく親切だった」と言います。

今、その地域に住んでいる女性が、周囲のサポートを受けて起業できる地域になったら、まず、定住に効果があるでしょう。地域の女性が幸せに生きていることが伝われば、移住したいと思う人も増えるかもしれません。

今後の展望

―― 今後の展望を教えてください。

グラスルーツアカデミー東北の参加者が、各県に政策提言できるようにしたい、と思います。皆、生活者の視点があり、地域が好きな女性たちです。彼女たちの知見を行政に生かして欲しい。

また、アカデミー参加者の起業志望が強いことを感じています。東北の女性と東京の起業家をマッチングできたらいいなと思います。東北の女性達は地域の課題を伝え、東京の起業家は事業の助言をする。月1回くらいの面談を半年続けてお互いが学び合えるようなプログラムを作るため、資金集めをしようと思っているところです。