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千葉県流山市でシェアサテライトオフィスを運営

キャリアを持つ母親が地域で働ける場を作った ~ シニア層との交流、助け合いも ~

つくばエクスプレスとJR武蔵野線が交差する南流山駅。都心からは予想以上に近く、秋葉原から25分しかかからない。東京に通勤する会社員やその家族が多く住むベッドタウン街に、ユニークなシェアサテライトオフィスTrist(トリスト)がある。

駅から徒歩5分ほどの住宅地にカフェか美容院のような外観の建物。ガラスの扉を開けると、コンクリートの床に木を生かしたインテリアが目に入る。内部は20席の個室と10席のオープンスペースに分かれている。

株式会社新閃力代表取締役
尾崎えり子(おざき えりこ)

目次

事業を始めたきっかけ

―― 事業を始めたきっかけを教えてください。

郊外には、能力に見合う仕事が見つからない母親たちがたくさんいます。都心まで出かけていかないと、それまで培ったキャリアを生かせる仕事も情報も得られない。同じような悩みを抱える人が多いから、会社のほうを郊外に持ってきたらどうか、と逆転の発想をしたのがきっかけです。

加えて、子育て世代は地域と関係を作る必要があります。例え、ふだんは夫婦協力して子育てしていても、何かあった時は助けが必要です。母親だけでなく、地域の父親、高齢者、自営業者の方々など、みんながつながれる場を作りたい、と思いました。

そう考えたのには私自身の経験が影響しています。4年前、夫の海外出張中に私とふたりの子どもが発熱して動けなくなり、このままではまずい...という状況になりました。その時、近所の高齢のご夫婦に助けを求めたのです。するとおばあちゃんが子どもを預かってくれて、おじいちゃんが私を車で病院に連れて行ってくれました。とても親切にしていただき「こういう風に、頼っていいんだな」と思いました。

Tristは地域の高齢者の方に、すごく助けていただいています。大学の同窓会組織が流山にあり、そこからおじいちゃんたちが、見守りをして下さったこともあるんです。

今、この建物の1Fがシェアサテライトオフィスで、2Fには、都内から引っ越してきた80代のおばあちゃんが娘さんと一緒に住んでいます。おばあちゃんがTristのお掃除や託児を有償で引き受けてくれています。週に数回、ご飯を作ってくれるので、ここで働く母親達は、それを買ってランチにしたり、夕食のおかずに持って帰る。おばあちゃんは収入源ができて嬉しいし、ママ達は家事や育児を助けてもらえてありがたい。

ママ達のお仕事の様子

―― コワーキングスペースではみなさん、どういうお仕事をしているのでしょうか?

20席の個室スペースには、ある企業が事業部ごと入っています。働いている方々は、流山市内や千葉県内の近郊から来ています。通勤時間は非常に短い。

10席のオープンスペースも、法人で月ぎめ契約していただいています。例えば流山市在住のある会社員の方が、週2回、都心に通勤してまとめて会議など人に会う仕事をこなし、週3回はTristで働き、企画書作成などひとりで出来る業務に集中する。メリハリをつけて働くことで、効率も上がります。同じようなワーキングスタイルの人と、ここで出会えるし、刺激もあるし、働きながら地域コミュニティを作れるので孤独になりません。

単なる場所貸しではなく、復職したい母親のための教育も提供しています。最初に就労意識を高めてもらうマインドセット、第二段階として個人情報やクラウドの考え方を始め、マイクロソフトのWord、Excelやパワーポイントのアップデートを行うITセット。最後に、リモートで仕事をするため欠かせない離れた場所での共同作業について教えるリモートワークセット。修了すると、リモートワークできる心構えとITスキルが身についた状態になります。

今、8社と法人契約をしています。もともと、母親のために始めた事業ですが、父親も高齢者も関わっている。「地元で働きたい人のための場」という風にブランディングを変えていく時期かな、と思っています。

創業時

―― 事業は順調に成長していますか。

予想以上に順調です。当初は3年で単年度黒字を目指していたのですが、ありがたいことに初年度で黒字になりました。流山に、予想以上に優秀な母親がたくさんいたこと、都内企業のニーズが高かったため、だと思っています。

流山の母親たちは本当にすごく優秀です。Trist立ち上げ時は、クラウドファンディングで集めた資金に市からいただいた創業補助金、そして自分の貯金を使っていました。どうなるんだろう、と眠れない夜もありました。

私ひとりでは手が足りませんから、立ち上げメンバーの母親達には、色んなことをやってもらいました。「これだけの予算で、この問題を解決してほしい」とまかせっきりのお願いしたこともしばしばあります。

立ち上げを経験すると、自信がつきます。Tristに関わった方々が次々と創業していくので、流山のママ起業、増えているんですよ。

展望・夢

―― 今後の展望や夢があれば教えてください。

第2、第3のTristを作って欲しい、というご要望をいただいており、条件が整ったところで始める準備をしています。一番難しいのが場所を探すことですが、すでにめどが立っているところがあります。

実は長期的にやりたいことは、子どものキャリア教育。Tristに入ってくださって企業に地域の子ども達にキャリア教育をしてもらう仕組みを始めています。理想を言えば、小中学校の中にTristを作りたい。子ども達が毎日、地域で働く大人と接することができて、世の中にいろんな仕事があることを目の当たりにできます。「これからスカイプで海外と会議をする」という様子を見ていれば、英語を勉強する意義も分かるでしょう。

たとえクラスで嫌なことがあったり、いじめられたりしても、Tristに来ればいい。子ども同士は小さな違いを気にしますが、大人になったら、そんなこと、関係ないよ、人と違う方がいいんだよ、と大人達が言ってあげられるでしょう。

起業を目指す女性達へ

―― これから起業したい女性にアドバイスをお願いします。

自分がやれること、やりたいことに絞ってください。たくさんのことを一度にやってはいけない。例えばTristでは、保育園や託児をつけて欲しい、という要望が多かったのですが、それはやりませんでした。もし、託児サービスをつけようとしたら、私は保育士さん探しに忙殺されてしまい、自分が得意な教育プログラム開発や企業営業に集中できなかったと思うのです。

また、お金をいただくところと無料にするところ、はっきり分けることも重要です。Tristでは地域への教育は無償で行い、都内の企業からオフィス代としていただくようにしています。

最後に、これは人によるかもしれませんが、私は事業計画書を綿密には作っていません。お金も人も必要なら集めればいい、と思いました。計画書を作る時間を行動に充てたかったからです。

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