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起業するならオンリーワンを目指す 会員制ドッグホテル開業【オメガハウス】

「自己完結できる仕事がしたい」と、損害保険会社を早期退職して55歳で起業した鶴川三郎さん。「誰もやっていないオンリーワンがいい」と、自分の経験に基づく発想から、ドッグランを備えたホームステイスタイルの会員制ドッグホテルを開業した。

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オメガハウス
鶴川三郎(つるかわ・さぶろう)

昭和21年生まれ。福岡県出身。西南学院大学卒業後、損害保険会社入社。11回の転勤を経て、役職定年まで33年間勤務した後、平成14年3月、55歳で早期退職。翌15年、会員制ドッグホテル「オメガハウス」開業。

目次

当初はリスクマネジメントの会社起業を考える

――起業を考えた時期とその理由を教えてください。
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損害保険会社に33年間勤務しましたが、45歳の頃、残業残業で仕事漬けの日々が続くなか、ふと「このままの人生でいいのか」と思ったのです。「もっと自由に、起承転結のすべてに関わり、自己責任で完結できる仕事がしたい」と考えるようになり、55歳になったら会社を辞めて起業しようと決めました。起業するなら、体力的にも精神的にも60代になってからでは厳しいだろうと。
そして平成14年、九州の総責任者として出身地の福岡にいた時、55歳で役職定年を迎え退職しました。ただ、会社の仕事自体は面白かったですね。技術関係のリスクマネジメントから本店営業、経営企画、支店長職まで、いろんな業種を体験できましたし、やりがいもありました。
――事業としては、最初からドッグホテルを計画されていたのでしょうか。
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いえ、やはり最初は自分の経験を生かして、リスクマネジメントの会社を立ち上げようと思っていました。ただ、ひとりではできないので、同僚や仕事関係の仲間などに声をかけていましたが、なかなかうまくいかず、そんな時、犬好きの妻が「犬に関わる仕事をやったら」と提案したんです。それまで家で飼っていた愛犬がケージ(檻)を嫌がるもので、ドッグホテルに預けることができず、私たち家族は旅行にも行けなかったんですね。その経験から、犬をケージに入れないで、室内や庭で自由に過ごさせる新型のドッグホテルを思いつきました。
――勝算というか、成功する自信はありましたか?
預かった犬をケージに入れない、ホームステイスタイルのドッグホテルは、調べてみると全国的にもほとんど例がありませんでした。しかし、愛犬家たちにリサーチすると、口を揃えて「そんなホテルがあったらいい。ぜひ作って欲しい」と言うんです。需要は確かにあると確信し、しかも事業を立ち上げるなら、やっぱりオンリーワンがいい、誰もやっていないことをやろうと思い、決意しました。オンリーワンだからこそ、やり方によっては成功するだろうと。
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――開業までにはどんな準備をされたのですか?
50歳になった頃から情報を収集したり、5年間ほど準備に費やしました。なにしろ前例がないので、施設、什器や備品などの設備、運営の仕方から料金設定まで、一から自分で立案しなければならず、会社の仕事もしながらでしたから大変でしたね。借金はしないことを前提に、資金は割増退職金と自宅の売却などで賄うことにし、綿密な事業計画を立て、企画書を作成して何度も練り直しました。ドッグランにする庭を考えると広い土地が必要ですし、福岡都市圏の需要に対応するには、近郊で交通アクセスもよくなくてはいけない。土地探しは、土日を使って30カ所以上回り、敷地230坪のこの場所に決めました。
――会員制にすることは最初から決めていたのですか?
そうです。ケージに入れずに私たち夫婦2人だけで世話をするわけですから、ある程度、犬の性質や飼われている環境などがわからないと対応できないと思ったのです。それで基本的な審査をさせていただき、300会員までと決めました。ところが開業してみると、入会金を取らなかったこともあり、あっという間に会員は集まったのですが、実際に利用する人は少なく、審査も甘かったせいで、攻撃的だったり躾がまったくできていない犬が多くて困り果てました。事業をやるからにはプロ意識が必要と思い知り、2年目にドッグインストラクターと顧問契約して飼育指導などを受け、規約も変更したんです。
――現在の規約はどうなっているのでしょうか?
会員は100名です。その代わり、入会金(5000円)と年会費(10000円)をいただいています。利用料金は、1泊(24時間)で、超小型犬が4000円、小型犬が4500円、中型犬が5000円です。審査も厳しくしたので、規約を改定すると、会員は一気に35名ほどに減ったのですが、残った会員の方のクチコミだけですぐに100会員を達成できました。それでようやく理想としていた経営が確立でき、私たちの理念や主旨をよく理解してくださる会員の方ばかりなので、今は経営も運営も安定しています。

後継者募集中。事業拡大のための経営相談も無償でサポート

――後継者を探していらっしゃるということですが、詳しくお聞かせください。
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お客様に大変喜ばれ、やりがいのある仕事ですが、体力的にもハードですし、今後まだやりたいこともあり、65歳で区切りをつけようと思いました。しかし、ようやく軌道に乗ったこのドッグホテルを閉めるのはもったいないし、会員の方にもご迷惑をおかけすることになります。それで、やってみたいという方がいたらお譲りしようと思っています。競合もなく、まだまだ事業を拡大できる可能性もあり、動物好きの方には魅力的な仕事だと思いますよ。
――事業拡大の可能性とは具体的にはどんなことですか?
私たちのように夫婦2人といった家族経営でやるのなら現状維持でもいいですが、これからもっと事業を拡大したいと思えば、犬用のリードやアクセサリーなどのグッズ、ペットフードの販売、トリミングサービスなど、ペット関連ビジネスをいくらでも取り込んでいくことができます。ケージを併設して一度に預かる犬数を増やすことも可能です。事業に必要なハードとソフトがすでにあり、さらに会員という固定客がいますから、起業でもっとも苦労する顧客開拓の必要もありません。継承していただけると決まったら、1年間は経営相談など無償でサポートするつもりです。
――最後に、これから起業する方へのメッセージをお願いします。
やはり「オンリーワン」だと自信を持って言える、自分の事業の特性を見つけること。もし、他でもやっている事業を成功させたいなら、必ずプラスアルファがないとダメだと思います。その事業が本当にお客様に受け入れてもらえるか、共感してもらえるか、経営ベースに乗るかを考え、準備は周到に、あらゆる潜在リスクを洗い出しておくこと。そして、人とのつながりを大切にしたネットワークづくりや、50代以後の起業であればできるだけ借金を少なく抑えることもアドバイスしたいですね。


掲載日:2011年5月31日

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