頑張れシニアベンチャー

豊富な経験を活かしてベンチャー企業を立ち上げたシニア層の奮闘をお届けします。

退職後はカルチャー三昧のつもりが介護事業立ち上げ【たるみ・ともの家】

自分らしい仕事をしたいと考え、起業したシニアにエールを送るコーナーです。
母のために取得したヘルパー資格で、「地域に暮らすお年寄りを支援したい」と民家で要介護と介護予防という2つの機能をもつミニデイサービスを運営している森さんにお話を伺いました。

森 裕美理事長 森 裕美(もり ゆみ)
昭和16年生まれ。大学で社会福祉を専攻、卒業後国家公務員に。55歳で早期退職してカルチャー三昧を決め込むつもりが、半年後に夫が発病、翌年、阪神淡路大震災があり、ボランティア活動に入る。平成12年1月、任意団体で介護予防のデイサービス事業「たるみ・ともの家」を立ち上げ、同15年NPO法人化。平成17年、介護保険事業をスタート。

目次

夫が胃ガン、手術の時に阪神淡路大震災

――「たるみ・ともの家」の活動内容を教えてください。
月・木・土曜日は介護保険事業、火曜日は以前から私たちのこだわりであった生きがい型介護予防のデイサービス事業を実施しています。介護保険事業は定員10人、介護予防は15人といずれも小規模で、「自宅にいるような雰囲気でお互いが家族のように関わりあうこと」をモットーに、食事はすべて手づくりしています。つねに多くのボランティアがスタッフとしてプログラムに参加しており、家庭的な雰囲気のなか、細かいところまで目が行き届くよう配慮しているのが特長です。
――はじめからデイサービス事業を目指していたわけではなかったとお伺いしましたが。
私はずっと共働きで時間にゆとりのない暮らしをしてきたので、退職した時は「絵画教室へ通ったり、社交ダンスを習ったりして"カルチャー奥様"をしたいな」と思っていました。母の介護に備えてヘルパー養成講座に通ったのも習い事の一環のつもりでした。ところが半年後、夫に胃ガンが見つかり、手術を受けた時に今度は地震がありまして・・・。
――そうした大変な経験がデイサービスを始められるきっかけとなったのですね。
これも運命の巡り合わせでしょうか。有償ボランティア活動に加わり、そこで改めて人と人とのつながりの大切さを感じたんです。「自分にも何が起こるかわからないから、元気なうちは支援を必要とするお年寄りを手伝おう」と思いまして、少し落ち着いたところで、今度はヘルパーの有資格者を募り、困っている在宅のお年寄りを有償支援するグループを立ち上げました。
――「たるみ・ともの家」という形でデイサービスに関わることになった経緯を教えてください。
認知症の方の家族やひとり暮らしの方の家族は「もっと話し相手をしてください」と希望されますが、1カ所でそんなに時間を取れません。活動を続けるうちに「もっとゆっくりお年寄りに付き合ってあげたい」との思いが強くなり、グループと少し方針が合わなくなったのです。そこで同じ思いの7人と一緒に新たにグループを立ち上げようということになりました。
――独自の施設を持つのは、経営面からしても大変なことだと思いますが。
私の退職金の一部を使って民家を借り、神戸市の生きがい対応型デイサービスへの助成金を頼りに、平成12年、週2回・定員15人のデイサービス事業を立ち上げました。集会所を借りたり、幼稚園の空き教室等を借りれば安く済んだと思いますが、私たちは"我が家らしさ"にこだわりたかったので、独立した家を持つことは譲れませんでした。
――それで事業は順調に動き出したのでしょうか?
いいえ。お金がなく、特にチラシも配らなかったので3カ月間は利用者ゼロ。8人で昼食を作る練習をしながら利用者の来るのをじっと待っていました。どうしようかと思った時、新聞記者を紹介してくださる方があって、やっと神戸新聞に載せてもらうことができました。すると朝日新聞も取材に来てくれ、それを見た人が「おしゃべりできるところが欲しい」と少しずつ来てくれるようになりました。

最終的にはボランティアたちの終の棲家に

――平成17年には介護保険によるデイサービスも始められましたね。
これは経済的な事情も大きいですね。立ち上げ資金を出してくれるような助成団体はないので、まず任意団体で立ち上げてからCS神戸(コミュニティサポートセンター神戸。いわゆる中間支援組織と呼ばれるNPO法人)の支援を受けました。そのご縁で神戸市の生きがい対応型ミニデイサービスのグループのひとつに加えてもらい、元気なお年寄りを対象にしたのですが、予算がない神戸市は単価を下げてきました。それで経営が苦しくなり、一方、高齢になった利用者の方は他所の介護保険のデイサービスへ行くと、「雰囲気が合わない」と嫌がり、「できればここを利用したい」とおっしゃるのです。
――両者の思いがピッタリ合ったのですね。
声に押されて平成17年の秋から介護保険事業にも乗り出しました。それでも1年ほどは赤字でしたが、最近ようやく黒字になって経営的にはだいぶ楽になりました。昨年の収入は980万円ほど。支出が900万円弱ですから、まあ黒字と言えるでしょ(笑)。何とかやっていけるのは人件費を非常に安く抑えているからです。差し入れも多くあり、助かっています。
――将来の目標を教えてください。
ボランティアの皆さんがここをもうひとつの家と思っていろいろ支えてくださるので、とてもありがたいことだと感謝しています。皆「何もできない代表を援けてあげなきゃ」と思ってくれているのと違いますか。最終的にはここを、私たちボランティアも終の棲家にできるような小規模多機能型ホームに発展させたいと思っています。

「たるみ・ともの家」外観「たるみ・ともの家」外観・・・平成13年、デイ・サービス用に建設した家に移転。駅から徒歩5分ほどで地の利を得て利用者も増えた。現在、介護保険の利用者は70代から95歳まで。ボランティア登録者30人あまりに支えられている

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「ほら指を開いてみて」。体操は結構難しく、皆一生懸命「ほら指を開いてみて」。体操は結構難しく、皆一生懸命


掲載日:2007年11月20日