起業の先人に学ぶ(2018年版)

困難や苦労、失敗と成功…様々な体験を乗り越えて今に至る、起業以来の道のりを伺いました。

大きな企て(くわだて)を持ち、果敢に挑んでいく姿勢が新しい社会を切り開く【(株)ガイアックス】

学生時代から、人々の役に立つこと、起業することの価値を知っていた。希望を胸に新卒入社した会社を思いがけず退職し、社会問題の解決という大きなライフプラン実現に向けて活動してきた上田社長に話を聞いた。

株式会社ガイアックス代表執行役社長 上田 祐司 氏
URL:https://www.gaiax.co.jp/

目次

ガイアックスの哲学を社会に具現化する事業展開

―― まず、貴社のビジネスについて教えてください。

現代は、他人と他人がつながることのできる時代です。そこで、「もっともっと人と人をつなげれば、社会の幸せにつながるのではないか」と考えています。当社では「人と人をつなげる」ビジネスを展開しています。
具体的には、シェアリングエコノミーとソーシャルメディア、2つの分野で事業を行っています。シェアリングエコノミーでは、BtoCでサービスを提供しており、ライドシェアをしたり食べ物のシェアをしています。ソーシャルメディアでは、主にBtoBでサービスを提供しており、企業や学校法人などに対するコンサルティングやWEBの運用代行、そして、エンドユーザー同士が使うメディアの運営やサポートなどを行っており、数千社に対してサービスを提供しています。

チャレンジ精神旺盛だった起業家時代

―― 上田社長が起業しようと思われたのはいつ頃ですか。

高校生から大学生の時には、30種類以上のアルバイトをやっていました。マクドナルドでも働いていました。それが昂じて、大学の時には自分で手作りハンバーガーの屋台をやりました。眼の前で焼いて食べていただくとお客さんが喜ぶんです。それがとても楽しかったので、「将来的には、自分が想像力やアイデアを出しながら事業をしていきたい」という想いが生まれました。それが起業を意識した最初です。それで、大学卒業後は、当時、起業家を多く輩出することを謳っていた会社に就職しました。

―― いきなり起業ではなかったのですね。

そうです。その会社は「起業家輩出機関」と自分たちのことを呼んでいまして、就職活動の面接では、社長が「30歳でうちをやめて独立してくれても全然かまわないよ」と言うような会社でした。「起業するための勉強と経験を積みなさい。それができる会社だよ」ということですね。大変魅力的に感じて入社しました。その会社での出来事ですが、入社した当初、とても成績優秀な同期の女性社員がいました。彼女はシリコンバレーでインターンをした経験もあり、研修の時から成績抜群。素直に「この人、凄いな」と思っていました。それで、一緒に食事をした時に「将来、一緒に何かビジネスをしよう」と話をしました。すると後日、彼女からメールが来まして、「私、辞表出したけど、上田君は出した?」と聞かれたのです。私から誘った形だったので、「うん、今、書いてるところだよ」と返事を出して、会社を辞めざるをえなくなりました(笑)。

―― 辞めた時の将来ビジョンは?

何も決まってなかったです。ただ、社会人になってから、フリーマーケットに出品したり、ホームページの立ち上げなど、ビジネスのようなことはしていたので、会社を辞めたのは自然な流れではありました。

―― 会社を立ち上げるまでの経緯はどのようなものでしたか?

一昔前までは、企業が発信する情報だけしか、消費者が商品を判断する術はありませんでした。しかし、丁度会社を辞めた1998年頃から、比較サイトや口コミサイトが登場し、赤の他人同士が情報交換する場が出来始めていました。その流れに乗って、自分でも広告収入を得るレストランの評価サイトを立ち上げるなどして、1999年にガイアックスを立ち上げました。しかし、その後、同事業への参入者も多く、ネットバブルが崩壊し、広告収入だけに頼ることはできない状況に陥り、今のビジネスにシフトしていきました。

世の中に稀な、社員に起業を推奨する会社

―― 貴社では、社員の起業に関して他社であまりやっていないことをやっていますね。

はい。当社では、アントレプレナーシップ(企業家精神)をもって動くことを使命としており、その実践のために、次のようなルールを設けています。事業部署ごとに子会社を設立することができ、また、子会社の事業メンバーに対して全株式の50%までのストックオプションと、外部からの資金調達を含めた資本政策の決定権限を付与しています。多くの事業部がありますので、それぞれの事業部の責任者に対して、「いつでも子会社になっていいよ」と伝えています。ここまで社員に対し具体的かつストレートに伝えている会社は、日本では他にないでしょうね。これが働く社員達のモチベーションにつながっています。

―― なるほど。でも会社としてのメリットは?

まず、自分のやりたいことのために会社を辞める優秀な人材を繋ぎ止めることができます。また、その子会社が上場したときにはキャピタルゲインを得ることもできます。メリットの方がはるかに多いのです。また、社員が「あの人が子会社の社長になれるんだったら私も!」と手を挙げてくれるのは嬉しいものです。

―― 起業を推奨する教育や施策はどんなことを?

私達の事業は社会に貢献することが大切だと思っており、そのために、社員ひとりひとりのライフプラン(人生の設計)を大変重視しています。「自分の人生の中でこれだけはなんとしてもやらなければならない」という信念を持つことが大切で、その信念があるからこそ、新たな価値ある事業を企てることができ、世の中を巻き込んで達成していけるのだと思っています。

―― ガイアックスからどんどん新しいビジネスを出てくる環境が整うわけですね。

ネット業界を見渡しても皆さんが3年以上使い続けているサービスはそう多くはないでしょう? だからこそ、新しいビジネス、サービスを次から次へ創造してくれて、独立していってもらった方が、ガイアックスグループとしても生き残れる可能性が高まると思っているんです。

―― ガイアックスさんは、2005年に、名古屋証券取引所セントレックスに上場されていますが、上場に関しては、創業当初から目指されていたのでしょうか。

もともと起業するなら上場するのが当たり前という感覚があり、「社会に大きく貢献するなら社会に所有してもらうのが当然だ」と考えていました。創業後2年で上場するつもりでしたが、結果5年かかりました。

―― 子会社で上場したところもありますね。

1社、AppBank株式会社という会社が、東京証券取引所マザーズに上場しました。ガイアックスは上場でキャビタルゲインを得ました。やはり、優秀な人材が「自ら取り組んでいるこの事業を、世の中に広めていきたい!」と思って本気で動けば、高確率で上場できるのではないかと思っています。

今後も社会の問題解決を我が使命としていきたい

―― これから注力していく事業はなんでしょうか。

シェアリングエコノミーの分野です。特に、食べ物のシェア(ミールシェア)には注力したいと考えています。シェアリングエコノミーは、基本的に助け合いの精神に基づくものであり、世の中で常識的には不可能と考えられていることであっても、皆が協力すれば可能になるものです。その状態を実現するのがシェアリングエコノミーです。海外では、我が家を宿泊施設として提供していますが、同時に当たり前のように食事も提供されています。日本では、民泊、ライドシェアがやっと実現していますが、その次は、このミールシェアが台頭してくると思っています。

―― 法制度の改正に対する働きかけも必要になってきますね。

そうです。そのために、私が代表理事となって、一般社団法人シェアリングエコノミー協会を立ち上げました。新しい社会を作るために、政治家、官僚向けに、提案・提言をしていきます。

皆、大きな企てを持て!

―― 最後に、世の中の起業家の方々へ、メッセージをお願いします。

まずは、自分のライフプランを持ち、そのライフプランが世の中の問題を解決するものであることが大事だと思います。それがないと、世の中を巻き込めないからです。ライフプランに価値があるからこそ、様々な困難を乗り越えていけるのだと思います。また、何事にも挑んでいくことに「当たり前な感覚」を持つことも大事だと思います。いいなと思ったこと、今やるべきだと思ったことに対しては、躊躇することなく勇気をもって挑んでいってほしい。また、起業に際しては、企てのレベルがボトルネックになっているケースが多いです。企ての大きさと、事業を起こす人の優秀さで、成功確率は決まりますが、できれば、大きな企てを持ってほしいと思います。大きな企てを持っている方が人生おもしろい。大きな企てをして、大きな事に挑んでいった方が、結果的に、本人のスキルアップにも繋がるし、実現したときの社会的価値も高いはずです。