起業の先人に学ぶ(2018年版)

困難や苦労、失敗と成功…様々な体験を乗り越えて今に至る、起業以来の道のりを伺いました。

みんなから『失敗する』と言われるような業態だったから成功したんですよ【(株)Fast Fitness Japan】

フィットネス業界のプロが皆「失敗する」と言った「無茶な業態」が、現在300店舗超を展開するまで成長。業界で一番伸びているチェーン「エニタイムフィットネス」を展開するFast Fitness Japanの土屋社長に話を聞いた。

株式会社Fast Fitness Japan 土屋 敦之 氏
URL:https://www.anytimefitness.co.jp/

目次

エニタイムフィットネスは米国生まれ

―― 貴社の展開しているビジネスの業態や特徴について教えてください。

「エニタイムフィットネス(以下エニタイム)」と言いまして、24時間、年中無休、マシンジムに特化したフィットネスクラブです。

―― エニタイムはアメリカ生まれですね。

2002年に1号店がアメリカのミネアポリスで生まれ、現在、世界で3,800店舗、日本では300店舗を展開しています。昨年1年間で日本では124店舗、新規に出店しています。

―― ところで土屋社長のご経歴ですが、大学を卒業して就職されたのが野村不動産なんですね。

野村不動産に入社して、最初の3年間は現場の管理業務、その後自ら志願して営業職になり、営業所長まで務めました。入社から10年経ったときに、商業施設部門でフィットネスジム事業を立ち上げるということで社内公募がありました。応募してフィットネスジムの「メガロス」の立ち上げに関わりました。フィットネス業界との最初の出会いですね。

―― どうしてメガロスに応募されたのですか?

募集要項で「店舗責任者になれる」というキャッチフレーズだったので、それを魅力に感じたことを覚えています。

―― メガロスではどのような仕事をされていたのですか?

最初の1年間ほどは既存店の運営に携わり、その後、武蔵小金井の新店立ち上げのため、支配人のポジションに就きました。その頃、メガロスが本体から分社化しました。分社に際し転籍して執行役員になりました。振り返ると、住宅部門に10年、メガロスに9年ほどいたことになりますね。

日本国内でのライセンスを獲得

―― メガロスを辞めてエニタイムをやろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

執行役員になりメガロスがIPOをして、新しい社長が野村不動産から来ました。そこで「ひとつの区切りかな」と思って辞めることにしました。またその頃は、団塊の世代がリタイヤを迎え、メタボという言葉が流行しはじめ、フィットネス業界自体が新たに中高年をターゲットとする時代になっていました。女性向けフィットネスクラブ「カーブス」も台頭してきていました。フィットネス業界が大きく変わり始めているな、という思いを持っていたのです。そんなことを思っていた時に・・・会社を辞めて1年ほど経った時に、弊社会長の大熊をはじめとした数名で、日本でのエニタイムを立ち上げる動きがスタートしまして、私にも声がかかりました。

―― 米国でエニタイムを初めて見た時、どんな感想を持ちましたか?

利用している客層を見て、日本のフィットネスクラブがなかなかリーチできていない若年層向けのビジネスモデルだと思いました。これは日本で展開すればチャンスがあるな、と感じましたね。

―― 日本での立ち上げはスムースに行ったのでしょうか?

1号店は2010年に東京・調布にオープンしました。初月に利用者数は200名、3か月で500名になり、予想以上に好調なスタートでした。翌年春にアークヒルズに2号店をオープンしました。

日本のフィットネス業界にはなかった業態

―― 順調な滑り出しですが、「24時間年中無休のフィットネスクラブ」というのは周囲からなかなか理解されにくかったのでは?

そうですね。現在では、エニタイムが高収益で安定していることは多くの人が認めてくれていますが、スタート当初はそうではありませんでしたね。

―― 日本のエニタイムは、ビジネスモデル的には米国と同じなのでしょうか?

基本的には同じです。24時間オープン、店舗の入口を施錠するというのが特徴です。そして日中でも店にいるスタッフは2~3人で、夜間はスタッフはおらず無人営業です。フィットネスクラブとしてはミニマムな人員で運営が可能ですから、コストも抑えられます。

―― 人材不足が叫ばれている中では強みですね。

これからは人材不足がどんどん深刻化していくでしょうから、小規模体制で店舗運営できるのは大きな強みですね。

―― エニタイムが日本でこれだけ支持された成功要因は何だと思いますか?

大手チェーンがみんな「エニタイムの業態はうまくいかない」と反対したからではないですかね(笑)。エニタイムをスタートした当時は、多くの業界人から「24時間営業なんて流行らないし客も集まらない。店にスタッフがいないなんてダメだ。スタジオも無いのに集客できるわけがない」とよく言われたものです。

―― なるほど。

そうやってうまく行かない理由を挙げて、他社が誰もやらなかったことに取り組んだのが成功要因ではないでしょうか。まぁそれは冗談ですが(笑)、当時は多くのフィットネスクラブが中高年層を取り込もうとシフトしていました。また、カーブスは女性専用の業態で同じく高齢者を取り込んでいましたよね。そんな中にあって、エニタイムのコアターゲットは20代~40代の男性なのですね。実はこの層は、多くのフィットネスクラブが疎かにしていて、本格的に攻めていないブルーオーシャンだったんですよ。

徒歩ですぐに行けるところにあるのがエニタイム

―― エニタイムの店舗は平均で80坪と、フィットネスクラブとしてはコンパクトです。商圏はどのようなイメージなのですか?

都心型店舗だと、お客様の大半は半径500m~1km程度から来店されています。徒歩もしくは自転車で来るイメージですね。地域密着型のビジネスです。これまでのフィットネスクラブというと、ターミナル駅や私鉄の急行停車駅近くにあるイメージだと思います。大きなプールやジャグジーなどがある、豪華な施設のイメージですね。でもエニタイムは全く違うのです。シンプルに「ワークアウトをしたい方々が歩いてすぐ店に行ける」という業態なのです。

―― 今後の店舗展開の計画について教えてください。

今、我々に追随して、他のチェーンがどんどん同じような業態で進出してきています。しばらくの間は陣取り合戦は続き、2~3年後くらいに優勝劣敗が決まってくるのではないかと思っています。エニタイムは2020年に500店舗の目標を掲げています。私自身は、この目標を1日でも1か月でも前倒しで達成したいと思っています。

―― ライバルに勝つための秘策はありますか?

正直、ライバルのことは気にしていません。我々のすべきことは「安心・安全・快適なワークアウトスペースを提供すること」です。他社との競争がどうこうということは大きな問題ではなく、自分たちの目的を極めて行くことが重要です。一つ一つ良いお店を作り、結果として質量ともに他社を圧倒していくことを目指しています。

全国展開は道半ば。全国制覇はこれから。

―― エニタイムはフランチャイズビジネスモデルで展開されていますが、加盟している企業は何社あるのでしょうか?

現在82社です。直営店は65店舗なので、82社で253店舗を運営いただいています。加盟企業1社あたり3店舗ほど運営いただいている計算になります。ちなみに、一番多い加盟店で25店舗運営しています。10店舗展開している加盟店も5社いらっしゃいます。

―― それは凄い。

当たり前ですが、1店舗目が上手く行かなければ2店舗目の出店はありません。多くの加盟店が複数展開されているということは、エニタイムが成功していることを証明していると思っています。

―― さきほどの出店計画だと、まだまだ展開されるわけですね。

地方においてはまだエニタイムが出店していない県が23県もあります。今年からはそういう地域も精力的に展開を図っていきたいですね。