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起業の先人に学ぶ
町工場の「モノ作り」を守り伝えたい【株式会社東大阪技研】

日本のモノ作りを支えてきた中小製造業の町、東大阪。しかし、近年は経営環境の厳しさから、優れた技術を持ちながら廃業を選ぶ企業も少なくない。そんななか、あえてモノ作りで起業する若者もいる。東大阪技研の的場一馬氏もそのひとりだ。

株式会社東大阪技研 代表取締役 的場一馬(まとば・かずま)
1985年11月生まれ。大阪府東大阪市出身。中学卒業後、町工場に就職。いくつかの職場を経験した後、23歳で東大阪技研を設立。

目次

自分の思う仕事がしたい!と起業

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――金属や樹脂の切削加工の事業で23歳のときに起業されたと伺いました。起業の経緯を教えてください。
中学卒業後、まず手に職をつけようと思い、地元東大阪の金属・樹脂部品の切削加工業に就職しました。最初は職人さんの手伝いから始めるのですが、4、5年経つと仕事をひと通り任せてもらえるようになります。そうすると「これを使ったら、もっと簡単にできるんじゃないか」とか、「こういうやり方をした方が作業効率が上がるんじゃないか」といった改善案が浮かんでくるようになるんです。
ただ、それを提案しても「そうはいうても、使ってみてだめやったら無駄になるやん」と言われ、なかなか意見は通りません。モノ作りで何が楽しいかと言ったら、作業効率上げて、利益率を上げていいものを作ることなんです。なのに、それが職場ではできない。だったら自分でやってみようと思うようになり、23歳で独立することにしました。
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――起業までの準備にはどれくらいかけたのですか?
それ以前も漠然と起業を考えてはいたのですが、具体的に準備を始めたのは1年くらい前でした。機械加工業で独立するとなると、設備投資が必要なのでお金がかかります。機械だけで1000万~2000万円はしますし、工場を借りたり、電気工事をしたりするにも費用がいります。とても貯金では賄えない額になるので、融資を申し込むんですが、そう簡単には貸してもらえません。
それで、国民金融公庫や自治体・商工会議所の起業支援などの窓口に足繁く通って、いろいろ相談しました。資金調達や事業計画の書き方など、細かいことまでアドバイスしてもらい、その間に貯金もして、1年後に何とか借り入れができ、起業することができたんです。
――リーマンショック直後の一番厳しい時代に起業されたのですね。
景気が低迷して厳しい時期だから、景気がよくなるまで待とうといっても、待てば本当によくなるかは誰にもわかりません。もしかしたら、もっと悪くなるかもしれない。それに、景気がいい時期にはじめたら、厳しくなった時が大変になるでしょう。
「とにかく起業するんだ」と意地になっていた部分もありますが、ここでやらんとダメじゃないかという気持ちが強かったということもあります。だから、起業の準備が整ったタイミングで始めることにしたんです。

先輩の失敗談から経営を学ぶ

――会社を経営するうえで、どんなことを心がけていますか。
僕はまだ若いし経験も浅いので、周りはみんな先輩です。ですから、とにかく人の経験談を聞くようにしています。なかでも失敗の話を聞かせてもらうようにしています。というのも、たくさんの人が同じような失敗をしているからです。いろんな人の失敗談を聞けば、それを防ぐために何をしたらいいのかが分かるからです。
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――町工場が集まる東大阪では、御社は後発です。受注につなげるために、どのような工夫をされていますか。
町工場は工場ごとに得手不得手があり、1社で全部やろうとするとコストアップになります。そういう場合は、ネットワークを駆使して、それぞれが得意な部分を担当したほうがいい。したがって、いろいろな企業をネットワークして、単独ではできないような仕事を受けられる体制作りを心がけています。工作機械の大きなイベントなどに集まった人たちと交流したり、ブログで情報発信したりしながら、ネットワークづくりを進めています。
――起業から2年経ちましたが、経営状況はどうですか?
1カ月くらいの単位で先は見えるのですが、1年2年といった長い目で見ると、まだまだ安定しているとは言えない状態です。ですから、そこをしっかりさせていきたいですね。具体的には、お客さんの数を増やし、売り上げを平均することですね。確かに、1社との取引の割合を高めたほうが利益率はいいんですが、もしその相手との取引が激減したら、被る打撃は計りしれません、だから、一つのお客さんに50%、80%と大きく依存するのではなく、1社につき15~20%の割合で、より多くのお客さんと取り引きできるようにしたいですね。

楽しく創造的な仕事環境を作りたい

――起業してよかった点はどんな点ですか?
お客さんと直接向き合い、お客さんの要望を聞きながら仕事をすることで、現場で作業をしていただけでは、感じられなかった達成感や楽しさがありますね。また、勤めていた頃に実現できなかった仕事の仕方を実際やってみて、作業効率が上がったりすると、やはり起業してよかったなと思います。それと、勤めていたときには、知り合えなかったような人たちと知り合え、いろんな経験や話を聞けることも大きいですね。自分だけの世界で作っていてもいいものはできません。いろんな人に会うことが仕事の幅を広げるのだと思います。
――逆に大変なことは、どんな点ですか?
支払いのウェイトが大きい点が一番ですね。あとは、労働時間も長くなりました。勤めていたときみたいに、6時、7時に帰れるようなことはありません。現場の仕事以外に事務処理などの細々したこともしなければなりませんから、それが大変ですね。
――大変な分、自分で事業をやっているのだという実感があるのではないですか?
確かにそうした実感はありますが、それ以上に、自分一人の力で生きているのではないと感じるようになりましたね。勤めているときは「俺の技術で稼いでいるんだ」みたいなところもありましたが、起業してみて、いろんな人に助けられて今があるのだと思うようになりました。
――今後の展望を教えてください。
日本はこれまでモノ作りで成長してきた国で、厳しい状況ではあるけれど、これからもモノ作りは重要な産業です。ですから、僕も微力ですが、モノ作りの発展に貢献していきたいですね。一つの分野を深堀するか、あるいは幅広く対応するか、事業の方向性はまだ決めていないのですが、もう少し業績が安定してきたら設備投資をしていきたいですね。
それから、これは事業の内容とは直接関係ないかもしれないのですが、とにかく、前向きで楽しく仕事に取り組んでいきたいと思います。仕事というと、"つらい"というイメージや"生きるために仕方がなくやること"だという考え方が強く、とくに町工場は、上の人の意見に下の人が従わなければならない構図です。
でも、「もっとこうやったらいいものが作れる」とか、「こうすればお客さんに喜んでもらえる」と考えながら仕事をすれば、楽しく仕事ができると思います。ですから、若い人たちが自分で考える機会があり、楽しくクリエイティブに仕事ができる環境を作っていきたいですね。また、そうした思いで仕事をする仲間とネットワークを広げていきたいです。

●会社概要

企業名 株式会社東大阪技研
設立 2009年9月
所在地 大阪府東大阪市加納5-7-15
電話 072-875-6201
URL http://higalabo.jp


掲載日:2012年2月28日

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