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起業の先人に学ぶ
熱き思いの学生ベンチャー【旅のお手伝い楽楽】

介助が必要な祖母と旅行した際、手助けが得られず苦労した経験から、「介助が必要な人も旅行が楽しめるように」と、バリアフリー旅行の学生ベンチャーを立ち上げた佐野恵一氏。「誰もが気軽に外出できる社会」を実現するため、ビジネスを手段に介護保険の改正を目指す。

旅のお手伝い楽楽 代表 佐野恵一(さの・けいいち)
1984年生まれ。奈良県出身。2006年、同志社大学3回生のときに、個人で「旅のお手伝い楽楽」を創業。08年2月、法人化。現在、会社を経営するかたわら、同志社大学大学院でも研究を行なう。

目次

"行ける"より"行きたい"を大切にするバリアフリー旅行会社

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――「旅のお手伝い楽楽」というユニークな名前の会社ですが、事業概要を教えてください。
車イスを利用している人など介助が必要な人を対象に、介助者が同行するバリアフリー旅行を企画・実施しています。介助が必要な人でも"行けるところ"や"やれること"を盛り込むのではなく、それぞれのお客様の"行ってみたい"や"やってみたい"をいかに叶えるかを考えながら、お客様のご希望や身体の状況に合わせたオーダーメイドの旅行を中心に提供しています。
このほか、京都府や地元企業の協力のもと、京都のバリアフリー情報などを提供する「京都バリアフリー観光案内所」を開設し、ボランティアで運営を行なっています。
――創業から3年ほどですが、これまでの実績を教えてください。また、オーダーメイドで介助者が同行するとなると、旅行費用も高くなると考えられるのですが、富裕層を対象とした事業なのでしょうか?
これまでに280件以上の旅行を企画・実施しました。京都からほかの地域に旅行に行かれるケースのほか、京都に来られたお客様のサポートもしています。お客様は富裕層に限らず、旅行を楽しみたいという方たちです。より多くの人に旅を通じ心が豊かになる経験をしてもらいたいので、旅行代金もあまり高く設定していません。
――介助者が同行するのに、旅行代金を高くせずに事業として成り立つのでしょうか?補助金などを利用されているのですか?
僕らの理念は「誰もが気軽に外出できる社会を作る」ことであって、利益はそのための手段にすぎません。事業を継続していくためには赤字でいいというわけにはいきません。ですから、コストを抑えるためにいろんな工夫をします。
たとえば、高齢者市場のマーケティングをしたい企業などとのコラボレーションによりコストを下げるという方法もあります。つまり、目的達成のために知恵を絞り工夫をすれば、事業を続けるための利益は確保できるのです。また、そうした努力を続けることが企業の経営体質を強くすることにもなると思います。
――では、黒字化は達成しているということですか?
そうです。広告宣伝もホームページ程度ですが、クチコミやメディアの記事などで当社を知ったお客様が利用してくださり、利用者数も増えています。また、リピーターの方もたくさんおられます。

家族旅行での苦い経験から起業を決意

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――大学3年生での起業だそうですが、キッカケを教えてください。
身体が不自由な祖母と一緒に家族旅行に行った際、わざわざバリアフリーの旅館を選んだのに、宿に入浴介助を依頼したら断わられ、57歳の母がひとりで祖母を入浴させなければなりませんでした。その時くたくたに疲れた母を見て、「誰かが手を貸してくれれば、介助が必要な人もその家族ももっと旅行を楽しめるのに」と思ったことから、自分でそうしたサービスを提供しようと思ったのです。
――卒業を待たずに起業したのはなぜですか?また、学生ベンチャーということで苦労した点などはありましたか?
学生のうちに起業したのは深い理由があったのではなく、サポートを必要としている人がいるのであれば、早くサービスを提供し、この問題を解決したいと思ったからです。ただ、"事業を始めたらタウンページに電話番号を載せる"といった初歩的なことも知らなかったりして(笑)、いろんな人に支えてもらいながらこれまでやってきたという感じです。
――08年2月に法人化しましたが、会社設立の資金はどのように調達したのでしょうか?
すべて自己資金です。家もごく普通の家庭ですから、金銭的な支援をしてくれたわけではなく、必要な資金は自分で調達しました。いろんなビジネスプランコンテストに積極的に応募するなどし、700万円の資本金を準備することができました。

介助付きで余暇を楽しめる心豊かな社会を目指す

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――学生でありながら、700万円の資金調達を実現するというのはすごいですね。それだけ会社設立にかける意欲は大きかったということでしょうか?
会社を設立したのは、きちんとした組織にすることで信用が得られると考えたからです。しかも、旅行会社を設立するには資産基準として600万円必要だったので、資金調達もしなければならなかったのです。
――つまり、会社設立は目的ではなく手段だったのですね。
そうです。先ほども言いましたが、僕らが最終的に目指しているのは、「誰もが気軽に外出できる社会を作ること」です。会社も事業もそのための手段なのです。NPOにすることもできましたが、残念なことにいまだに日本では"NPOはボランティアで収益度外視"といったイメージを持つ人が少なくありません。そのため、他の企業とコラボレーションする場合、どうしても社会貢献的な色合いが強くなりがちです。
一方、こちらが企業であれば相手とも対等な立場で提携できるため、本格的な事業として取り組むことができます。これにより、多くの企業が事業としてバリアフリーに取り組むようになれば、目標とする社会も実現できるのではないかと考えたのです。ただし、企業の方があらゆる面において目的を達成しやすいというわけではありません。取り組むことの内容によっては、NPOのほうが適しているものもあります。大切なのは、目的に応じて最適な組織を選択することだと思います。
――今後の事業展望を教えてください。
僕らが目指す「誰もが気軽に外出できる社会」を作るためには、現在、「余暇」には適用されない介護保険制度を変える必要があります。そのためには、"余暇を楽しむことが心身の健康によい影響を及ぼす"という実例を増やすため、バリアフリー旅行の利用者をさらに増やしていきたいと思っています。一方、"余暇を楽しむことが心身の健康によい影響を及ぼす"ことを科学的に証明する必要もあるので、大学との共同研究も行なっています。
また、介助が必要な人でも気軽に外出できるためには、バリアフリー情報が手軽に入手できること、そして旅先での介助などの人的サポートが必要不可欠です。そのため、これまで京都だけだった「バリアフリー観光案内所」をロールモデルとして、他の地域にも広げていきたいと思っています。

●会社概要

会社名 株式会社 旅のお手伝い楽楽
設立 2008年2月
所在地 京都市下京区四条通烏丸東入ル長刀鉾町8 京都三井ビルディング5階(JSL内)
電話 075-229-6529
FAX 075-229-6515
URL


掲載日:2009年10月27日

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