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平均勤続年数12年超の美容室。鍵は毎年のライフプラン面談【クリンクル】

入社2〜3年で3割が退社するとも言われる美容室にあって、千葉県鴨川市のクリンクルでは、スタッフの平均勤続年数が12年を超える。何がこれだけの定着率を実現させているのだろうか。黒澤俊治代表にインタビューした。(写真・本郷剛)

黒澤 俊治社長 黒澤 俊治(くろさわ としはる)
1956年、千葉県生まれ。76年、山野美容専門学校卒業。田谷哲哉美容室(現田谷)に就職。東証1部に上場する田谷の創業者で現会長の田谷哲哉氏と創業期を過ごす。九段店と経堂店のオープンに関わる。81年、地元の鴨川市で独立、クリンクルを開業。これまでに7店舗オープンし、現在は南房総で4店舗。2店舗はショッピングセンター内に出店。もっとも尊敬している人物は、田谷哲哉氏

目次

スタッフの平均勤続年数が12年を超える

――株式上場大手サロンチェーン、田谷の創業期メンバーのお一人とうかがいました。
美容学校を卒業して田谷に就職したのが1976年です。「田谷哲哉美容室」が東京・麹町にできたのが64年ですから、私が入社したのはそれから12年後。田谷哲哉美容室が「株式会社ビューティショップ田谷」に法人化した翌年になります。まだ田谷が4店舗の時代でしたね。
私は千代田区の「二番町店」に就職。そこに創業者である田谷哲哉さんがおられて5年間、一緒に仕事をさせていただきました。私がもっとも影響を受けた、一番尊敬している人物です。「九段店」や「経堂店」の立ち上げにも加わることができ、よい勉強をさせていただきました。
――美容師5年目で独立されたのですか。
そうなりますね。早い独立でした。
――田谷から独立して、どんなサロンを始められたのですか。
「ここに(クリンクルに)来たスタッフは全員独立させる。一人前にして、独立するまで面倒をみる」というのが独立時の私のテーマでした。もちろん、全員とはいきませんがね。
――オーナーを養成するという経営思想なのですね。
今年で27年目になりましたが、これまでに独立してオーナーになった人は13人です。でも最近は、独立志向をもつ人が少なくなってきているようですね。
――独立するスタッフが多くいる一方、クリンクルはスタッフが辞めないお店であるとも聞きました。
本店と支店を合わせて4店舗にスタッフが総勢24名いますが、勤続5年以上は11名います。半数近くが5年以上勤めてくれていることになりますね。勤続年数がもっとも長いのは創業時のメンバーで27年が1名います。
長い順に勤続20年が1名、15年が2名、14年が1名、10年が2名、5年が4名です。24名中、7名が今年入社したメンバーですから、ベテラン比率が高いと言えます。
――美容室は「2〜3年で3割が退社する」とも聞きます。実際スタッフの入れ替わりが激しい店は多いのではないでしょうか。貴店の退社率はどのくらいですか。
正確には分かりませんが、3割はありません。ここ2〜3年で言えば、独立したスタッフが1名いて、病気で辞めたスタッフが2名いただけです。そもそもスタッフを採用するときに「5年は勤めてくださいね」と話をしています。
1年や2年で辞めていくことなどは想定していません。「一人前にしてあげるから、5年は勤めてくださいよ」と面接時にしっかり納得いただいています。
――教育されたベテラン揃いの組織ができあがるということは、顧客をたくさんもった、稼げる社員が多く在籍しているという状態なのですね。
たとえば鴨川ジャスコ店は店長が勤続20年、15年目が2名、10年選手が2名と3年目が1人の6名で営業しています。平均勤続年数は12年を超えていますね。この店の06年12月は生産性(スタッフ1人当たりの売上高)が105万円でした。
しかも6名が交代で1名ずつ町の総合病院のメディカルビューティへ出向していましたので、その報酬を加えるとさらに生産性は上がります。
――頼もしいですね。
長いメンバーがいるから、それだけ安定していると言えます。

「思いやりをもった人になりなさいよ」と言い続ける

――理想とする組織も、辞めてほしくない人材が辞めない店づくりも、そもそも採用から始まるわけですが、どんな採用をされているのですか。
ここは南房総の海の町です。土地柄、選べるほどの分母はありません。基本的に採用は「ウェルカム」です。新卒採用もしますが、中途採用もします。入社してからつくり上げる、というのが実情です。
――クリンクルの社員と言えば、一言で言うとどんな共通点があげられますか。
結局、当店の経営理念になるのですが、「クリンクルは思いやりをもって、お客さまの満足を追求します。思いやりをもって、スタッフの満足を追求します」とあります。「お互いに思いやりをもとう」、「相手のことを考えることこそが、一番のサービスになる」ということを実践してくれているスタッフだと思っています。
――「入社してからつくり上げる」黒澤式クリンクル教育とはどんなものですか。
「思いやりをもった人になりなさいよ」と折に触れて言い続けるしかない。単純ですが、言い続けること。そしてもう1つはSPCNで学んだCSアンケートでお客さまの声を聞くスタンスを貫くことに尽きると思います。お客さまの声に基づいて改善をしていく行為の中で、人間力を向上させていくことだと言えるのではないでしょうか。
――ベテランが長く勤められる職場環境をいかに提供できるかが重要ですが、貴店にはどんな制度や仕組みがありますか。
従業員満足とは、結局はサラリーとやり甲斐でしょう。やり甲斐を満たす条件の1つはポジションです。現在4店舗それぞれの店長と副店長、教育係くらいしか役職がありません。今後の課題でもあります。
――オープンから27年間、毎年スタッフはオーナーと全員、ライフプラン面談を実施しているそうですね。
美容師はプロ野球選手と同様に個人事業主のようなもの。ですから年に1度、春に年俸公開面談を実施しています。年俸公開面談の内容が、一部ライフプラン面談となっています。

毎年オーナーと全員がライフプラン面談

――どんな面談をされるのですか。
事前に『プレシンキングシート』を配布して〈昨年の目標〉、〈目標の達成状況〉、〈その理由〉、〈今年の目標〉、〈希望年俸額〉を記入してもらいます。これにもとに1年を振り返りながら今年の目標を明確にしていきます。「給与がいくらほしい」という話もします。スタッフと本気で話せる1年に1度のもっとも大事な場となります。
――年俸公開面談を始めた理由はなんですか。
田谷にいたときに、当時、唯一納得いかなかったのが、給与制度でした。なぜ、給与は会社が一方的に決めるものなのか、「おかしいのでは?」と考えていました。それで年俸公開して話し合いで決めることにしたのです。
――「金額」まで主張できるのですか。
最初は言えない人が多かった。でも「言えるようになりなさい」と。だんだんと言えるようになってきましたね。頑張っていることを泣きながら「認めてください!」と訴えるスタッフもいます。
――たいへんな作業ですね。
長い人では2時間。全員を終える頃はもうヘトヘトです。
――話し合いによって決めるというのはお互いに難しい作業ですか。
年俸公開する意味は、3つ。第1に自分が成長できていることが明確に分かること、第2に正当に評価されていることが分かること、第3に個人個人の目標が会社、組織と共有されていることだと考えます。
自分がどれだけ成長しているかを計る場であり、それに対してどういう評価をされているのかを知るプロセスでもあります。それが働き甲斐につながっていくのだと信じています。
――面談で難しいのは?
目標を決めるのがたいへんです。目標がなかなかもてない。夢がなかなかもてない。考えていても、それをアウトプットできないのです。これを数字までもってくるのが、たいへんですね。
――組織の成長と店の発展を考えたときに、年俸公開およびライフプラン面談のもつ力はあると言えますか。
この1年、どのように頑張るのかを腹に落とす作業ですが、オーナーとスタッフの信頼関係を築く場でもあります。お互いに心から「ありがとう!」を言える、絆であると思っています。
――貴重なお話を、ありがとうございました。

●会社概要

企業名 クリンクル
設立 1985年
電話 04-7093-4993
所在地 千葉県鴨川市横渚973-1-409
URL


掲載日:2007年10月30日

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