ITツール活用事例

ITツールを、自社の業務効率化や販路拡大に役立てた企業にお話を伺いました。

自動釣銭機と連動したPOSシステム導入 売上増や働き方改革に効果

JR高崎駅の駅ビル「モントレー」。1階の食品フロアに赤丸に福の字が目印のベーグル専門店「福ベーグル」のスタンドがある。棚には「カボチャ」「メープルクリームチーズ」などベーグルがずらり。定番から日替わり・季節限定まで70以上のレシピを誇り、そのうち毎日25種類が並ぶ。客が次々に訪れて1個、2個と売れていく。

保育園や幼稚園の建屋、遊具・家具の設計製作を手がけるARIGATO COMPANY(アリガトウ・カンパニー、群馬県高崎市)のグループ会社として福島直代表取締役が2011年に設立した手作りベーグル専門店だ。同年8月、市内東町に1号店をオープン。16年3月に2号店のモントレー店も開店した。「女性が活躍する場」がコンセプトで、20人のスタッフは22歳から45歳まですべて女性。賃金は「業界平均以上」という。

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会計作業がストレス

高崎市内のオフィスで今後の戦略を語る福島社長
高崎市内のオフィスで今後の戦略を語る福島社長

滑り出しは順調ではなかった。製造から販売まで手探りで始めたため、「当初は人件費が売り上げの半分以上。2年ほど赤字だった」と福島社長。なかでもスタッフが悩まされたのは会計作業だ。ベーグル1個の平均単価は230円から240円。精算時に細かいお釣りが出る。お釣りを数えて手渡す手間やその後の管理がストレスになった。

レジ作業の試行錯誤を重ねた。はじめに中古のレジスタをスマートフォンやタブレット端末上でPOS(販売時点情報管理システム)機能が使えるアプリ「Air レジ」に代えた。注文の入力や会計管理などができるようになったが、スタッフが一番求めている精算時に支払われた硬貨や紙幣を投入すると釣銭の金額を計算して自動発行する「自動釣銭機」と連携できなかった。連携可能なアプリはないかとインターネットを検索して見つけたのが飲食店向けPOSレジシステム「MAIDO POS」だった。

「MAIDO POS」は手持ちのパソコンなどに無料でダウンロードしてPOSレジとして利用できるアプリだ。周辺機器と連動すれば、客の来店時間や購入単価などの顧客管理や在庫状況など経理や会計データが取れるほか、スタッフの勤怠管理もできる。試用は無料だし、使い方に疑問が生じたら電話やホームページで気軽に質問もできる。導入コストはシステム使用代が月1980円、本体機器が約100万円。月割り返済が可能で、国のIT補助金も活用できると聞いて17年5月に導入を決めた。

データの見える化で売り上げ増も

POSで得られたデータは店頭のスタッフからLINEで随時送られてくる
POSで得られたデータは店頭のスタッフからLINEで随時送られてくる

「MAIDO POS」と関連機器の導入効果は少なくなかった。第一に、自動釣銭機でスタッフの心的疲労感が減り、業務の生産性が上がった。福島社長は「お金を数えて釣銭を渡すのは、本来ベーグル屋さんがやらなくていい仕事。それより接客とか、やれることがもっとあるはず」と話す。

閉店後にしていたレジ閉め作業も無くなった。レジ閉めに要する時間は30分。スタッフの時給を1000円とすれば500円払うことになる。ひと月で15時間、単純計算すれば1万5000円だ。年間で18万円分のレジ閉め作業に支払う人件費が浮く。浮いた人件費を機材導入にかかった約100万円に充てればおよそ5年で導入費を払いきれる。

店舗運営の戦略が立てられるのも大きい。POSから時間帯別売り上げ、人件費、仕入れ値などの販売コストが全部分かる。店舗スタッフから新商品が何個売れたかなどの日報がLINEで送られてくる。社長はこれらの情報をいつでもどこでもチェックできる。

POSのデータはスタッフも自由に見られるようにしたので「パートさんも自分でレジを叩けば、この数時間でいくら売れたか、目標まであといくらかが分かる」と福島社長。店で提供する日替わりや季節限定のアイテム、イベントなどの販売効果も、来店客数、来店時間、来店回数などと連動させれば一目瞭然だ。データの見える化はスタッフのやる気につながる。売り上げは「ようやく前年実績を上回ってきた」と手応えを感じている。

「MAIDO POS」の効果を実感している福島社長だが「データを使って何をしたいのか、得られるデータを使いこなさなければ意味がない。戦略が大事」とも話す。同業者には「戦略を持つ飲食店主ならIT関連機器は絶対入れた方がいい」とアドバイスしている。

日本一のベーグル屋目指す

自慢の商品を紹介するモントレー店スタッフ
自慢の商品を紹介するモントレー店スタッフ

今年4月、前橋市に3店舗目を出す。「今後はベーグル店の拠点を作り、各拠点ではカフェを併設して、そのカフェをうちの建築部門でつくる。うちが建設した保育園や幼稚園に働きかけて親子ベーグル教室も」と日本一のベーグル屋へと夢を広げる。

福島社長は「僕ら中小零細企業は建築業などひとつの業態で大きな企業に成長しなくてもいい。建築業、家具製造業、ベーグル製造業などの縦軸ではなく、それぞれの事業を横串でつなげることで結構強いビジネスモデルが構築できるのではないか」と説く。ARIGATO COMPANYの各事業をつなぐ横串は「子供をわくわくさせること」だ。昨年12月、地元の上毛新聞が主催したビジネスプランコンテスト「群馬イノベーションアワード」で大賞を受賞したアイデアマン。やりたいことは山ほどある。福島社長の戦略実現をITツールが下支えするだろう。

■企業データ

ARIGATO COMPANY(アリガトウ・カンパニー)
本社所在地 群馬県高崎市倉賀野町2416-10
電話番号 027(387)0877
代表者 福島直 氏
設立 2011年4月5日
資本金 300万円
従業員 40人
http://arigatocompany.co.jp/company