ITツール活用事例

ITツールを、自社の業務効率化や販路拡大に役立てた企業にお話を伺いました。

クラウド会計サービスでレジ効率化

つくばエクスプレスの「みどりの」駅から車で約5分。空き地のなかに新築住宅がポツポツ建つ造成地に、その店はある。茶色と白を基調にしたシックな外観が東京の自由が丘や青山でも違和感のない佇まいで、客が車でひっきりなしにやってくる。今年5月3日に開店した洋菓子店「ラ・リヴィエ・ドゥ・サーブル」だ。

店のショーケースには季節ごとに変わる宝石のようなケーキが並ぶ。チョコレートやクッキーなどを含め総アイテムは約100。「砂糖と粉と卵が全く別の形に変化するのがお菓子の面白さです」と植﨑義明さん。この店のオーナーパティシエだ。壁には2017年1月、フランスのリヨンで開かれた「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー(La Coupe du Monde de la Patisserie、パティスリー世界大会)」でチョコレート職人として獲得した銀メダルがさりげなく飾ってある。

植崎義明代表植崎義明代表

目次

25年かけ夢をカタチに

お洒落な店舗外観
お洒落な店舗外観

茨城県茨城町生まれの植崎さんは、高校生のころ、テレビ番組の「料理の鉄人」に憧れた。いつかは自分で店を持ちたいと、卒業後は地元に近い水戸市で、次いで都内の飲食店で働き、さらに水戸に戻って2013年から今年3月まで森永製菓の関連会社でプロ向けの商材を商う森永商事(横浜市)に勤めた。18歳で抱いた志を25年間温め、43歳で実現した。

茨城で独立したのは実家があるからだけではない。この地がおいしい農産物の宝庫だからだ。店の一番人気のモンブランは実家の父が栽培している生栗を、両親が拾って渋皮を剥いた状態で届けてくれる。「遠い産地のものは流通の手間を考えると必ず早摘みになる。できるだけ産地に近い材料を一番美味しい状態で使うのがポリシーだから、茨城県内の車で30分~1時間以内で手に入る材料でないと。宮崎のマンゴーや熊本のイチゴは絶対に無理」と強調する。

出店は綿密な準備に基づいている。まず「今後の人口増加が見込まれ、片側2車線の生活道路に面し、中央分離帯が切れているところの角地で、かつ前後左右が空いている土地」を約5年かけて探した。つくば市の人口増加率は全国でもトップクラスで、これから着実な発展が見込まれる。これまでの経験で、早朝から夜遅くまで大型冷蔵庫やエアコンが稼動する洋菓子店は「うるさい」と近所からのクレームが多いことを知っていたから、空いた場所に後から新参者として参入するのではなく、周りになにもない土地に最初に店を出して古顔になっておくことも重要だった。

他店で製菓の技術を磨いた後は、素材や業界のしくみを知るため森永に入社した。研究開発部門でチョコレートのテクニカルアドバイザーを担当し、専門知識を手に入れた。「業界でも手と頭を両方使っている人はそんなにいない。僕の一番のアドバンテージです」と胸を張る。店で使っているチョコレートは森永の業務用。これも培ったコネクションの成果だ。

税理士のススメで会計ソフト導入

レジと連動した会計ソフトを使用中
レジと連動した会計ソフトを使用中

開業資金は総額1億円。自己資金500万円で厨房周りの機材をリース対応で賄い、15年ローンの銀行借り入れを組んだ。同時に税理士に会計ソフト「MFクラウドシリーズ」を紹介された。会計業務をクラウド上管理するサービスで、クラウドPOSレジサービスと連携すれば手作業で帳簿を付けなくても売り上げなど店の会計関係のデータをクラウド上で管理してくれるほか、税理士とデータを共有して会計業務の一部や決算に必要な業務を分担作業することもできる。パティシェの仕事は経理とは縁がないが、水戸の洋菓子店で働いていたとき「つり銭が違うとか、打ち間違いなどレジ関係の誤差がすごく多かった」ことを覚えていたので、開店と同時に迷わず導入を決めた。

導入してまだ数カ月だが、「レジとの連携ができるからとても楽。レジ上に売り上げデータや客数が出る。商品登録をしているので商品が売れた個数も一目瞭然。前月との比較もタッチひとつで出てくる」と手応えを感じている。植崎さんは「会計関係は主に妻の担当ですが、シンプルなシステムだから3歳と6カ月の男の子の育児の傍らでも対応できている」と話し、「この前のイベントのときはこんな感じだった、じゃ、ハロウィンはこれくらいくるだろうと、売り上げの予測も立て易いのではないか」と先行きに期待をかける。

将来は植崎ビレッジを

お客に商品の説明をする従業員
お客に商品の説明をする従業員

午前5時半起床。7時に入店し、10時の開店から午後7時の閉店まで働く。店から100メートルの自宅に帰るのは7時30分から8時くらい。休みは毎週水曜日プラス月に1回だ。レストランと違って洋菓子店は食べているお客の表情が見えない。店にある2卓のイートインコーナーで客の様子が分かるのは1日のうちほんの数人だ。だから「一度来たお客さんがまた来てくれて、おいしかったと買ってくださるのが一番うれしい」と話す。

リピーターは多い。毎日午後6時すぎに来店してケーキを1個ずつ買っていく男性など、植崎さんの菓子を日々の楽しみにする人も出てきた。1日の来店客は70~100人。客単価は2500円~2800円。当初は2200~2300円くらいと見込んでいたが、これを上回り、平日は約20万円を売り上げる。

今後の目標は「隣の空き地を全部買って、ここを拠点にカフェやチョコレートショップ、レストランなどいろんな展開をすること」だ。「10年以内にはなんとか次の店舗を出したい」と次の目標を掲げる。いま店のレジで活躍中の会計ソフトは、日々のデータが蓄積されていく。いずれ「植崎ビレッジ」の融資計画策定などにも一役買ってくれることだろう。

■企業データ

ラ・リヴィエ・ドゥ・サーブル
http://riviere-de-sable.com/
所在地 茨城県つくば市みどりの東21-13
電話番号 029-828-6929
設立:2017年10月
代表 植崎義明氏
従業員:10名