トップページ  >  起業する  >  コラム・インタビュー  >  ウェブ経営指南  >  企業の知的財産を守る(基礎編)

ウェブ経営指南
企業の知的財産を守る(基礎編)
当社ではこの度、画期的な機能の製品を開発し、全国的に販売することを予定しています。特許出願をしておくべきと言われましたが、手続がよく分からず費用も心配なので正直迷っています。アドバイスをお願いします。
特許出願手続の内容及び費用についてご説明します。
男性

解説者

弁護士 福間智人(ふくま・ちひと)、弁護士・弁理士 三和圭二郎(みわ・けいじろう)
いずれも理系学科出身ながら大学卒業後に司法試験を受験し、知的財産法務及び企業法務を専門とする法律事務所で経験を経て独立した。現在、企業法務全般について広く取り扱っているほか、特許、意匠、商標、著作権、不正競争等の知的財産法務に関し依頼者の相談に応じている。

目次

解説

【最初に】

経済のグローバル化により人件費の安い外国企業の製品が氾濫等する現在において、知的財産権は競争を勝ち抜く有力な武器となります。たとえば特許権は、競業他社が製品を販売すること自体を禁止できる極めて強い権利ですから、特許権を取得することには価格競争を回避できるという利点があります。

このようなメリットがあるにもかかわらず、中小企業による特許出願は必ずしも多くはありません。現に2008年のデータでは、大企業が平均で年間156件の特許出願を行なったのに対し、中小企業の特許出願件数は平均で年間5.7件にとどまっています。国内企業のうちの約99.7%が中小企業である点に鑑みれば、中小企業による特許出願は極めて少ないというのが現状です。

中小企業の出願件数が少ない理由としては、手続が分からない、権利取得までの費用が高いのではないか心配である、といった点があると言われています。以下では、特許出願の手続と費用について簡単にご説明します。

【事前準備】

製品開発等において発明がなされた場合、最初に注意すべき事項は、発明の内容を外部に対し秘密にすることです。画期的な発明は会社のイメージアップにつながるため、取引先等に対して発表したくなるのが人情というものです。しかし、発明者自身による場合であっても、特許出願前に発明の内容を公開することは、特許権を与えない理由となってしまいます(特許法 第29条1項3号)。特許出願手続が完了するまではぐっと我慢して下さい。

どうしてもという場合は、公開する相手方との間で予め秘密保持契約を結んでおくか、出願時に新規性喪失の例外(特許法 第30条)の適用を申請しましょう。マスメディアを通じた公開や、販売行為についても適用対象となりますので、うっかり雑誌等で発表してしまっても、公開から6か月以内であれば特許化が可能です。ただし、新規性喪失の例外の適用が受けられない場合もありますので、特許出願手続が終わるまでは、可能な限り発明の内容を秘密にして下さい。

次に、発明が特許を受けられるものか否かを判断するために、先行技術文献について調査しましょう。過去に同一または類似の発明がなされていたものについては特許権は認められないため、このような発明の有無を確認する必要があります(特許法 第29条1項3号、同条2項)。先行技術文献の調査は、特許事務所等の専門家に依頼するのが無難ですが、簡易な調査方法としては特許電子図書館で過去の特許出願について調査することをお勧めします。無償で利用できますし、キーワード検索が可能ですから、一般的な検索サイトと同様の感覚で先行技術文献の調査が可能です。

【特許出願の準備】

発明の内容を秘密にし、かつ、過去において同一または類似の発明が無さそうだとなれば、いよいよ本格的に特許出願の準備に入りましょう。

通常はこの時点で、特許事務所に相談して出願手続に必要な書類の作成を依頼します。特許事務所に支払う費用は千差万別ですが、最近では、簡易な事案等であれば、10万円程度で書類作成をしてくれる特許事務所もあると聞いています(費用については個々の特許事務所に確認して下さい)。

特許事務所に伝手がない場合は、日本弁理士会が主催する無料特許相談を活用したり、公益社団法人発明協会が主催する無料発明相談を活用することが有効です。いずれも専門の弁理士が対応してくれますので、発明の内容について説明したうえで適宜出願手続について依頼することが可能です。

また、法律上は、特許事務所に依頼することなく発明者が自ら書面を作成して特許出願を行なうことも可能です。特許権取得の確実性及び強い特許権を実現する観点からは専門家に委ねることが好ましいとはいえ、費用節約の観点からは本人出願も選択肢の一つといえます。書面の形式、記載事項等についてはインターネット上に情報がありますし、特許庁も相談に応じているので、是非ご活用下さい。

【特許庁への手続・費用】

提出書類を作成したら、いよいよ特許庁に対して特許出願手続を行ないます。特許出願の際に特許庁へ納付する手数料は、本稿作成時点で原則1件あたり1万5,000円です。

また、特許を取得するには出願手続の他に出願審査請求という手続を行う必要がありますが、このときに特許庁へ支払う手数料は、本稿作成時点で原則11万8,000円+請求項の数(発明の数とお考え下さい)×4,000円となっています。高額ですが、特許庁は中小企業支援等の目的で一定の条件にあてはまる法人ないし個人について、出願審査請求時の手数料を減額する制度を採用しています。この制度を利用すると、出願審査請求の手数料が半額ないし全額免除されますので、是非ご活用下さい。

特許出願及び出願審査請求の手続が済むと、後は特許庁での審査が行なわれます。通常ですと、特許庁の審査に2、3年以上要することも珍しくありませんが、中小企業の場合は早期審査の申出という手続を行なうことによって、おおよそ半年程度で特許庁の審査を完了させることが可能です。

その後は、場合によっては特許庁からの不備等の指摘(拒絶理由通知といいます。)に対応したうえで(特許法の知識が必要となりますので、特許事務所に相談することをお勧めします。おおよそ15万円程度が相場のようです。)、所定の要件を満たす発明について特許査定が出されます。

特許査定がなされた後は、1年分~3年分の特許料(特許維持手数料)の納付等所定の手続を行なった上で、特許権が発生します。特許料は、特許権発生後の1年分~3年分につき2,300円+請求項の数×200円、4年分~6年分につき7,100円+請求項の数×500円、というように定められていますが、一定の条件にあてはまる法人ないし個人については、1年分~3年分について半額または全額免除、4年分~10年分につき半額免除を受けることが可能です。

【まとめ】

特許権取得までの手続は以上のとおりであり、これに要する費用は、一定の条件にあてはまる法人ないし個人であれば、最も安いケースで出願手数料1万5,000円+特許事務所へ支払う費用のみとなります。また、特許権取得後の特許料についても、最大で3年間分無料、引き続く7年間分は半額のみ支払えばよいこととなります。実際の費用はケースバイケースではあるものの、想像していたよりも安価だ、というのが正直な印象ではないでしょうか。

特許庁は、知財立国実現には中小企業への支援が欠かせないことを理解しており、様々な優遇措置を設けています。うまく制度を利用して、みんなで日本を元気にしていきましょう!

【関連リンク】

掲載日:2013年3月14日
  • googleplus
  • hatena
  • pocket
  • line
  • evernote
Copyright © WizBiz Inc.
このコンテンツの著作権は、WizBiz株式会社に帰属します。著作権の承諾なしに、無断で転用することはできません。
このページの先頭へ
起業するコンテンツ一覧
  • 事業計画作りや実際の起業準備そして開業まで。起業を目指す人の『こんな時どうする?』に応えます。

  • 法律知識や経営診断など、起業準備段階はもちろん、実際に起業・開業してからも使える豊富な情報を掲載。

  • 『国の補助金を活用して創業するには?』についてご説明します。

  • 中小企業や個人投資家にとってのメリットを、その仕組みや優遇措置について詳しくご紹介します。

  • 起業・開業を考えている職種の消費者利用動向がすぐにわかる、職種別データ一覧。

  • 200以上の業種・職種から選べる開業準備手引き書。

  • 最新のビジネストレンドや中小企業が直面する経営課題など、読み物コンテンツをまとめています。

  • 若手起業家にインタビュ—。「社会人起業」と「学生起業」それぞれの選択を対比しながら起業のカタチを探ります。