明治・大正・昭和のベンチャーたち

日本はいま百年に一度あるかどうかの一大変革期であり、新しいビジネスを生み出す絶好のチャンス。同じ変革期であった明治・大正・昭和の経済人たちから、無から有を為す技を学ぶ。

根津嘉一郎 - 鉄道王国を築き上げた甲州の荒くれ

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 明治人のキーワードを、事業の面から上げれば「鉄道と電力」だ。関西で鉄道事業を起こし、後に電力業界に転じた小林一三も、博多で電気軌道 会社を創設し、盟友福沢桃助に請われて、電力事業を手がけるようになる松永安左エ門もみな「鉄道と電力」に生涯を捧げた経済人だ。事業だからもちろんカネもうけは大切だ。しかし、明治の経済人はカネもうけよりも、人びとのためになること、社会奉仕の精神を大切だと考えた。すなわち、公益性に着目し、事業に取り組み、後世に遺産を残した。ここでの主人公根津嘉一郎も「鉄道と電力」に生涯を捧げた人物だ。根津嘉一郎は茶人としても知られ、茶道を通じた松永安左エ門との淡い交友は有名だ。茶人としての遺産のひとつに根津美術館がある。蔵品の基幹となっているのは、創立者根津の収集になる東洋古美術品で、絵画、書跡、彫刻、陶磁、漆芸、金工、木竹工、染織、そして考古と多岐にわたり、それぞれの分野に数々の名品が含まれ、それは見事なコレクションだ。公益事業の実現を夢み、そして文化人としても超一流というのが明治人のもうひとつのキーワード である。