明治・大正・昭和のベンチャーたち

日本はいま百年に一度あるかどうかの一大変革期であり、新しいビジネスを生み出す絶好のチャンス。同じ変革期であった明治・大正・昭和の経済人たちから、無から有を為す技を学ぶ。

小林一三(いちぞう) - 希代の遊び人事業家

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大正・昭和の実業家は仕事もしたが、遊興の巷でよく遊んだ。なかでも小林一三 は遊び上手で知られた実業家だ。小林は関西に基盤をおき、戦前戦後にかけて活躍 した実業家だった。小林一三といえば、あの華麗な宝塚歌劇団を思い浮かべられる 方もおられるかもしれぬ。阪神タイガーズのホームグラウンド甲子園球場を、小林 が今世に残した事跡のひとつに数えられる方もあるかもしれぬ。事業家として名を なしたのは、やはり鉄道事業という方もおられるだろう。どれも正しい。小林一三 という事業家は実に多様な顔を持つ。慶応を出ての人生の振り出しは銀行員だが、 鉄道事業、宅地開発、百貨店、映画、電力、肥料など実に多くの事業を手がけ、成 功に導いた。その全盛期は「今太閤」などと呼ばれるほどの権勢を誇ったものだっ た。しかし、学生時代の彼は文学を愛し、小説を書き、詩文を書き、生計を立てよ うと考えた時期もある。文学に対する志しは事業家として名をなしたのちも忘れる ことはなかった。名文家としても知られる小林は、宝塚歌劇団のために書いた数多 くの脚本と、名著『小林一三全集』全7巻を残している。この人物が事業で成功を おさめたのは作家的な構想力にあったのではないかと思うことがある。