明治・大正・昭和のベンチャーたち

日本はいま百年に一度あるかどうかの一大変革期であり、新しいビジネスを生み出す絶好のチャンス。同じ変革期であった明治・大正・昭和の経済人たちから、無から有を為す技を学ぶ。

渋澤栄一 - 日本資本主義の父

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 この人物は激情の人であった。社会変革に挺身した往事の多くの若者がそうであったように、ここでの主人公渋澤栄一は、侍身分ではなかった。ときは安政3年(1856年)のことである。渋澤の生まれ故郷、武蔵国榛沢郡血洗島(現在の埼玉県深谷市)を支配していたのは安部摂津守という旗本だった。この小さな村に大事件が起こった。摂津守が村民に1500両の御用金を命じたのである。10両盗めば打ち首という時代だ。戸数60余軒に過ぎぬ村民にすれば、御用金と称する臨時の税金は苛酷な負担である。もちろん、さまざまの名目で御用金を農民に課したのは何も摂津守だけではない。幕藩体制は疲弊していて、財政事情の悪化に悩む大名や旗本が苛酷な年貢負担を領地の農民や町民に押しつけたものだから各地に農民一揆が多発したのは歴史書にある通りだ。