明治・大正・昭和のベンチャーたち

日本はいま百年に一度あるかどうかの一大変革期であり、新しいビジネスを生み出す絶好のチャンス。同じ変革期であった明治・大正・昭和の経済人たちから、無から有を為す技を学ぶ。

金子直吉 - 鼠と呼ばれた名番頭

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 株価が急落を続け、経済はデフレの様相を示している。デフレとは経済の萎縮を意味する用語だ。生産は過剰なのにモノは売れず、物価は下がるが、失業者が巷に溢れ、社会不安が高まり、太平洋戦争へと一気につき進んでいったのが、昭和4年に起こった昭和恐慌だった。歴史は繰り返すというが、平成の経済危機は昭和恐慌とよく似ている。昭和恐慌は金融制度改革、すなわち諸外国に倣って「金輸出解禁」を踏み切ったことが直接の契機となった。現代の経済危機は、橋本内閣の下でグローバル化という名のもとに行われた金融制度改革がきっかけだ。さらに事態を悪くしたのは、金融危機が顕在化しているというのに、財政引き締めを、つまり行財政改革をやろうとしたことだ。財政が破綻状態にあったことも、だから財政再建を急がなければならないことも、大型倒産が相次いだことも、政局が混迷を極めていたこともよく似ている。昭和恐慌では台湾銀行や渡辺銀行など金融機関だけでなく、中小企業の倒産が相次いだ。なかでも人びとを驚かせたのが鈴木商店の倒産だった。ここに登場する人物は、この時代に生きた鈴木商店の大番頭・金子直吉だ。