創業者列伝

創業者たちの生涯を追いながら、成功の要因に迫る。
現役の中小企業経営者にフォーカスし、成功に至るまでの苦心談や、経営の心構えなどを直接取材してご紹介します。

本田技研工業 創業者・本田宗一郎と藤沢武夫

目次

「オレ、カーッとなって、やっただよ。もう、あの銀行からの融資は駄目だろうなぁ」
 ダットサンを自ら運転して、浜松から一気に東京に姿をあらわした本田宗一郎は、興奮しながら、まっ青な顔色に、丸出しの静岡弁で、すがるような目を専務の藤沢武夫にむけた。昭和26年(1951)の、ある日の出来事であった。
 この日、本田は自らが社長をつとめる「本田技研工業」(昭和23年設立)の、東京進出についての具体的な構想をもって、これまで取り引きのあった浜松の地元銀行を訪ねた。資金的援助を期待してのことである。
 ところが、応対に出た審査部長は、東京進出に多大な夢や期待を、胸一杯にふくらませている本田に対して、剣もほろろの発言を口にした。