トップページ  >  起業する  >  コラム・インタビュー  >  創業者列伝  >  第2回「ユーザーはモノづくりの良き先生」

創業者列伝
南武【野村和史】
特殊シリンダー製造のトップメーカー

野村 和史代表取締役社長

野村和史社長

ウェブサイトへ

目次

信頼勝ち取ったトラブル時の科学的反証

 ある日、大手自動車メーカーのエンジン製造工程で南武製油圧シリンダーに原因不明のトラブルが発生した。トラブルが発生すれば生産に大きく影響する。最悪の場合、生産ラインをストップする事態を招きかねない。自動車メーカーの部品成形担当者には当然、一刻も早く上司へトラブルの原因と対策を報告する義務と責任が生ずる。

野村には自動車メーカー担当者の困惑振りが手に取るように分った。

 「こういう時、大事なことはわれわれの手で原因を究明し科学的に反証することです」

 原因を調べてみると、何百トンの荷重が偏芯(かたあたり)してシリンダーを作動させたため、シリンダーのロッドがその負担に負けて折れてしまったことが分った。東京都の試験場により破断面の顕微鏡写真、シリンダー内部検査(かたあたりの痕跡)、試験官の公式見解などにより原因が究明されて、自動車メーカーの技術陣は納得しそれ以来、南武を深く信頼するようになったという。

 南武には20品目ほどの自社製品がある。いずれも同社が独自技術で作り上げた特殊油圧シリンダーの分野。受注生産に当たっては一つひとつユーザーの希望を取り入れるのが南武流。ただし、「図面を持ち込まれてこういうものを作ってくれと言われても作れませんね。標準部品が違いますから」との野村の話には、南武製品の業界標準としての浸透ぶりがうかがえる。

 世界に誇る先端技術を有する日本の自動車メーカーは南武の技術力をどのように認識したのか。

 南武は自動車メーカーの設計部門や現場の幹部から、技術に関する相談を受けることが多いという。金型用スーパーロックシリンダーの開発も実はメーカーからの長年にわたる技術相談がキッカケだった。

 言ってみれば、南武にとって自動車や製鉄などのユーザーと金型メーカーがモノづくりの良き先生でもあるのだ。

東横線のガード下でビジネスヒント

 野村の実父で創業者の先代が油圧シリンダーと出会ったのは、横浜駅の東横線のガード下(事務所と住居を兼ねた)だった。同じガード下の2、3軒先にあの有名な崎陽軒が30名くらいで駅弁を作っていた。終戦から10年も経たない頃、神奈川工業高校の同窓生だった友人を訪ねて来て、「忙しくてたまらない」といった羨ましくなる話ばかり。なぜと聞くと、「オートメーションの元になる油圧シリンダーの生産に追われているんだ」との返事。当時、油圧シリンダーそのものがあまり知られていなかった。

 「俺にもやらせろ」

ep-retsuden2-011-3.JPG 今から52年前の1955年、南武がわが国最初の油圧シリンダー専門メーカーとして発足したキッカケである。会社を設立して間もなく、日刊工業新聞社から創業者の先代にパッキング・シールである「O(オー)リング」のセミナー講師の声がかかる。野村三郎にとってセミナーの講師役は初めての経験だった。

 講演会場には一流企業の設計担当者が大挙して聴講に訪れている。その頃の日本の油圧シリンダーに関する技術水準は、欧米諸国に比べると相当の遅れがあったという。ところがいざ講演を始めてみると、話はわずか1分半で終ってしまった。

 急遽、質疑応答に切り替えてその場を切り抜けた先代だったが、セミナーを終えると東芝機械、IHI、三菱重工などの大手各社から、「取りあえず油圧シリンダーを作ってください」といった具合に、各社から次々に注文がくるようになった。会社を設立してわずか数ヵ月後には大手企業から受注する幸運に恵まれたのである。

 先代が短期間で油圧シリンダーの専門家になれたのには、技術的な下地があったからである。最初に就職した三菱重工で戦車の部品の設計をしていたこと。その後ハーレーダビッドソン(後に"陸王"となる)に転職、軍用側車付二輪車の設計・製作に従事、その後独立し野村精機を設立した。ゼロ戦の部品などを生産し中島飛行機(現在の富士重工)に納入していた経験から、機械設計、機械技術に関する知識が蓄積されていたために油圧シリンダー事業を立ち上げることができたのである。

 だが、好事魔多し。1963年に横浜市の保土ヶ谷区にあった本社工場が社員の火の不始末で全焼、経営を断念する悲運に見舞われる。(敬称略)

■ プロフィール

野村 和史(のむら かずし)
1938年12月、東京都大田区生まれ。
1961年4月、青山学院大学経済学部を卒業後、南武鉄工(現南武)入社。
1963年12月、本社工場の全焼に伴い退社し、17年間のサラリーマン生活を送った後、1984年に南武に再入社。
1995年6月、父で創業者の野村三郎の死去に伴い社長就任。

■ 会社概要

社名 株式会社南武
創業 1941年8月
設立 1965年12月
代表者 野村 和史
事業内容 特殊油圧シリンダーの製造・販売
資本金 58,0008千円
従業員数 127名
本社 東京都大田区萩中3−14−20

掲載日:2007年8月13日

  • googleplus
  • hatena
  • pocket
  • line
  • evernote
Copyright © WizBiz Inc.
このコンテンツの著作権は、WizBiz株式会社に帰属します。著作権の承諾なしに、無断で転用することはできません。
このページの先頭へ
起業するコンテンツ一覧
  • 事業計画作りや実際の起業準備そして開業まで。起業を目指す人の『こんな時どうする?』に応えます。

  • 法律知識や経営診断など、起業準備段階はもちろん、実際に起業・開業してからも使える豊富な情報を掲載。

  • 『国の補助金を活用して創業するには?』についてご説明します。

  • 中小企業や個人投資家にとってのメリットを、その仕組みや優遇措置について詳しくご紹介します。

  • 起業・開業を考えている職種の消費者利用動向がすぐにわかる、職種別データ一覧。

  • 200以上の業種・職種から選べる開業準備手引き書。

  • 最新のビジネストレンドや中小企業が直面する経営課題など、読み物コンテンツをまとめています。

  • 若手起業家にインタビュ—。「社会人起業」と「学生起業」それぞれの選択を対比しながら起業のカタチを探ります。