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創業者列伝
オプトロン【渡邉 慧】
衰えぬ開発者魂

測距式光カーテンセンサー

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目次

日本人初の「発明業績賞」受賞

 渡邉に任された仕事とは、試作エンジンテストの自動化技術の共同開発だった。コンピュータを使って自動的にエンジンテストする技術である。世界初の試みだった。今では信じられない話だが、日本IBMは日産自動車から仕事を請け負ったものの、開発する担当者がいなかったのだ。

 「工業用センサーなどあまり発達していなかった時代ですので、何から何まで工夫が必要でした」

 試作エンジンの評価テストは、これまで人手に頼っていたため、結果がでるまでに1週間は要した。渡邉が開発した技術は、リアルタイムで性能評価ができた。テストしていない時には、コンピュータシステムは自動的にオフラインの技術計算に切り替わるという、当時としては画期的なタイムシェアリングを実現したシステムだった。オペレーティングシステムも自分たちで改造した。

 「これは大変な成功を収めまして、米国とか、スウェーデンなどの自動車先進国から講演の依頼が来るほど、海外でも注目を集めました」

 技術開発に伴う特許出願が本社の米国IBMからも評価され、日本IBMの社員としては初の「発明業績賞」(インベンション・アチーブメント・アワード)受賞の栄誉に浴した。当時の米国IBMのフランク・ケアリー会長名で表彰状と金一封が届けられた。

 この賞を受賞することがいかに難しいか、渡邉はこんな裏話をしてみせた。

 「IBMはおもしろい会社で、開発した当人がいくら特許出願を要請しても社内審査でどんどん不出願にするようなチェックの厳しい会社でした。発明業績賞を受賞するためには、出願が認められて、1件当たり4ポイントで合計12ポイントを獲得することが必要です。ですから余程のことがない限り受賞するのは難しいわけです」

 IBMの知的財産戦略についても渡邉は次のように話す。

 「特許出願をなかなか認めない理由は、社員からの特許出願要請が多過ぎるからではないか。その代わり出願されなかった技術は「テクニカル・ディスクロージャー・ブリテン」という分厚い定期刊行物にして、全てオープンにしてしまうんです。競合相手にも特許取得させないようにする狙いなんですね。」

IBMで技術開発の貴重な経験をつむ

 技術者の渡邉にとって日本IBMは余程居心地が良かったのか、結局、24年の長きにわたってお世話になることになる。その理由が振るっていた。

 「SEとIS(インダストリーズ・スペシャリスト)をやっていた頃、間もなくしてNC(数値制御)が脚光を浴び始めたんです。当時は富士通しか事業化していませんでした。日産自動車も最先端のNCを生産ラインに導入しなければいけないということになり、私もいろんな技術を勉強しました。結果として日産のNC導入はけっこう早いものになりました。最初にNC旋盤で削ったのは、日産ローレル1号車のドアでした。そのデータを作るのに日本IBMのコンピュータが使われたわけです」

 そうこうしているうちに日本IBMは藤沢(大和市に移転)に研究所を設けた。

 端末製品の開発が主たる役割でしたが、そのほかに「すぐに製品設計するのが目的ではなく、将来使うような技術の開発部隊をもっていたのです。IBMの底の深いところです」

 「アドバンステクノロジー(進歩した技術)略してアドテックと言って、そこのマネージャーを任されていました」

 渡邉はここでも技術開発の貴重な経験を積む。

 「いろんな技術を開発しましたが、一番印象に残っているのは「熱転写」方式のプリンターです。熱でリボンを溶かして紙に写すプリンターの基本技術で、われわれが世界で初めて実用化したものです」

 当時は熱転写に必要なヒーターがなく、1億円の予算をかけて薄膜ヒーターを開発した渡邉だったが、「50歳になったら日本IBMを辞めようと思っていた」という。現に密かに決めていた通り、次なるチャレンジの機会が訪れる。(敬称略)

掲載日:2007年3月27日

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