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冷凍で時間と場所を克服~高級フレンチをどこででも

フォアグラやキャビアを使った高級フランス料理―。わずかな時間の差が料理の味を左右するため、これまでは「レストランでしか提供できない」という固定観念があった。だが、フレンチレストランの「シェ・ケン」(千葉県千葉市)は最新の冷凍技術を利用して、料理をできたてのまま保存することに成功。一般家庭への宅配など、レストラン以外の場所へのケータリングを実現している。

目次

フランス料理をもっと身近に

20121106_1.PNG フランス料理というと高級なイメージがある。一般的には、結婚式や記念日など特別なイベントで食べられることが多く、「ホテルやレストランで提供される豪華な食事」という感覚がある。

 だが、フレンチレストラン「シェ・ケン」のオーナーである山口賢総料理長は語る。「かつて修業で訪れたフランスでは、家庭で身近に食べられていた」。

 1984年に創業したシェ・ケンは、主に地元の千葉で取れる新鮮な野菜や肉、水産物などを使い、本格的なフランス料理を提供してきた。

 千葉県は海や山の幸が豊富な場所だ。「気候もフランスのブルターニュ地方に似ている」と言う山口氏。これまで地元の生産者と協力し、フォアグラやキャビア、ハーブといった日本では手に入りにくいフランス料理の食材をつくってもらってきた。そうした食材に支えられ、県内に3店舗あるレストランでフランス料理の提供を実現してきた。

タイムカプセルで味を保存

20121106_2.PNG 「もっと多くの人にフランス料理を食べてほしかった」と山口氏は語る。店で提供するだけでは、食べる人は限られてしまう。「店以外の場所でも気軽に食べてもらえる方法を模索するようになった」と言う。

 ところが、フランス料理は調理器具の種類が多く、調理法も複雑だ。そのため、調理器具が整わない場所での提供は難しかった。その上、調理後のわずかな時間で味のバランスが変わってしまうので、店でつくって配達することもできなかった。

 そんな折、山口氏は冷凍装置の開発を手掛けるアビー(千葉県流山市)の大和田哲男社長に出会った。同社には「CAS凍結システム」という最新の食品冷凍技術があった。

 このシステムは、従来の主流だった急速冷凍とは違い、食材の細胞組織を生かしたままゆっくりと凍結させる。そのため料理の味を損なわず、長期間の保存ができる「味のタイムカプセル」と呼ばれる技術だった。

 「これなら料理を"できたて"の状態で持ち運べる」(山口氏)。事前に調理して大量に保存することも可能だ。冷凍したまま移動すれば、店以外の場所でも料理を提供できるようになる。

 こうしてフランス料理をさまざまな場所へ"出前"するケータリングサービスが実現した。

国際基準で食の安全をクリア

20121106_3.PNG 2011年10月、シェ・ケンは最新のCAS凍結システムを導入し、新工場を立ち上げた。

 しかし、「これまでに予想以上の困難な道のりがあった」と山口氏は言う。店以外の場所で料理を提供するには、製造や衛生の管理に対するさまざまな安全基準をクリアしなければならなかった。

 通常、メーカーに対する国際基準としては「ISO22000」が挙げられる。だが「食品をどこでも販売できるようにするには、FSSC22000の認証を取得しなければならなかった」(山口氏)。

 FSSC22000とは、「ISO22000+ISO/TS22002」までの認証を総称した資格だ。より高い安全基準が求められる。取得に際し、地元で付き合いのあった千葉銀行が協力してくれた。「自分だけでは国際基準の複雑な手続きはムリだった」(山口氏)。こうして無事に認証を取得できた。

 現在、シェ・ケンはフランス料理を一般家庭へ宅配するほか、展示会やイベント会場などへのケータリングも行っている。また、百貨店の食品売場ではフランス料理の惣菜や弁当を販売している。

 さらに、ホテルのレストランのための受託製造や、飛行機の機内食の提供も展開し、さまざまな場所でできたてのフランス料理を楽しめるようにしている。

 「フランス料理を身近に...」という山口氏の思いは、実現しつつある。

●会社概要

企業名 株式会社シェ・ケン
所在地 千葉県千葉市若葉区愛生町20-6
電話 043-304-6901
URL http://www.chezken.co.jp/
掲載日:2012年11月 6日

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