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注目のニュービジネス
コンニャクから生まれた生レバー

2011年、飲食業界では焼肉店での食中毒が相次ぎ、牛肉の生食が規制された。 そんな中、コンニャク関連商品の製造販売を行なうハイスキー食品工業(香川県木田郡)が開発したのが「マンナンレバー」だ。コンニャクでありながら、見た目と味と食感がレバ刺しにそっくりなので、生レバーの代用品として焼肉店や居酒屋からの注文が後を絶たない。

目次

色も食感も生レバーにそっくり

20121030_1.PNG 2011年のゴールデンウィークに発生した、焼肉チェーン店での集団食中毒事件は、いまだ記憶に新しいだろう。10月には、ユッケや牛タタキなど、生食用の牛肉に新たな食品衛生基準が定められた。中でも、レバ刺しなどに使用される生レバーは、各店での販売自粛が求められ、消費者が口にする機会が減った。

 しかし同年の8月、その生レバーに見た目も食感もそっくりな加工食品「マンナンレバー」が開発され、焼肉店をはじめとする飲食店で話題を呼んでいる。「マンナンレバー」はコンニャクでできており、生レバーとそっくりの色が天然素材でつけられている。形もレバ刺しと同じ切り身状。口に含むとコンニャクの弾力がレバーそっくりの食感だ。

 開発したのは香川県のハイスキー食品工業。1924年に創業した同社は、当初「ヒシヤ飲料」という社名で炭酸水やジュースなどの飲料を製造販売していた。しかし、大手酒類メーカーが飲料産業に参入してきたことなどもあり、飲料事業は徐々に縮小せざるをえなくなった。

20121030_2.PNG そこで会社の主軸となったのが、コンニャクの製造販売だ。それまでは飲料事業が閑散期に当たる冬場の副業として行なっていた事業だった。かつてコンニャクは桶で売っていた。それが、包装技術が進んでスーパーマーケットなどに大量に販売できるようになった。「流通形態が変わったことで、参入チャンスが生まれた」と、ハイスキー食品工業の菱谷龍二社長は語る。

 しかし、他社と同じようなコンニャクを売り続けても販路拡大にはつながらず、売り上げは伸び悩んだ。そこで「この事態を打破すべく、次世代のコンニャクを求める研究に踏み切った」と菱谷氏は言う。こうして1996年、同社は開発室を設立することとなった。

コンニャクが加工技術で変身

20121030_3.PNG 通常のコンニャクは、コンニャク芋の粉にアルカリを加えて固められる。そのため強いアルカリ性になり、独特な臭みが出て生食には向かない。そこで同社は特殊な調味液を加えてアルカリを中和し、おいしい状態でコンニャクを安定させる「脱アルカリ調味技術」を開発した。これでアク抜きや下ゆでをせず、そのままでも食べられるようになる。まずはこの技術で特許を取得した。

 さらに、花や野菜などの天然素材でコンニャクに着色する技術を開発し、特許を取得した。これはトマトの赤や、イカスミの黒、クチナシの黄色、パプリカの緑などを混ぜ合わせ、どんな色のコンニャクでも自在につくれるというもの。

 この二つの技術によってコンニャクを食べやすくし、色を自在に加工することに成功した。コンニャクでありながら、まったく違う食材になる「マンナンミール」の誕生だった。

安全で低価格な高級食材を

20121030_4.PNG この技術を生かして最初につくり上げたのが、マグロの切り身やキャビアなど、高級食材の疑似食品だった。一般的にこういった食材は高カロリーのため、健康志向の高い消費者は食べるのを控えがちになる。だがコンニャクでつくった食品ならばローカロリーの上、価格も安い。

 さらに、コンニャクのメリットがある。高級食材には肉や魚介類を生食するものが少なくないが、こういった食材は衛生管理が非常に難しい。しかしコンニャクであれば食中毒の危険性は少ない。長期保存した後でも安全においしく食べられるのだ。こうした便利さから、マンナンミールは飛行機の機内食などに利用され、徐々にその認知度を高めていった。

 そんな中、マンナンミールに脂肪分を加えてトロの疑似食品開発に取り組んでいた時のこと。「胡麻油を加えたところレバ刺しそっくりの味ができた」と菱谷社長は語る。食肉業者に試食してもらい、意見を求めたところ「本物と変わらない」と太鼓判を押された。こうしてマンナンレバーが商品化されることとなった。

 ちょうど食中毒事件が発生し、世の中から生レバーが姿を消した時期だった。マンナンレバーが地元のメディアで紹介されると、一気に注目を浴び、テレビや新聞など全国区の媒体に次々と取り上げられた。その結果、発売直後の2011年9月だけで6000袋を販売した。

 やがて全国の焼肉店や居酒屋チェーンなどで提供され始めると、それが話題となり、一般客からも問い合わせが殺到するようになった。業務用に加えて、個人消費者向けに食べきりサイズの販売も新しく始めたところ、12年2月には2万袋の売り上げを記録。インターネットの通販サイトでは2カ月待ちの状況にもなった。

 おいしいものは総じてカロリーが高い傾向がある。そのため、病気の人やお年寄りの中には、食べたくても食べられない人が世界中にいる。「コンニャクの力を今後は世界に発信していきたい」と語る菱谷氏。日本人にとって身近な食材だったコンニャクが、新たな健康食品として世界に飛び出す日は近そうだ。

●会社概要

企業名 ハイスキー食品工業株式会社
所在地 香川県木田郡三木町大字氷上219
資本金 1000万円
従業員 40人
電話 087-898-1125
URL http://www.haisky.co.jp/
掲載日:2012年10月30日
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