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注目のニュービジネス
現代版湯治としてビオファンゴを実践

温泉の成分を浸透させた泥を全身に塗布し、温泉に入るよりも体の負担が少なく、温泉と同等の効果が得られるというビオファンゴ。富山県にある庄川温泉郷の温泉旅館三楽園(富山県砺波市)では、このビオファンゴを取り入れエステと融合させることで人気を集めている。

目次

エステと融合したビオファンゴ

20120927_1.PNG 合掌造りの家屋が立ち並び、世界文化遺産に制定されている五箇山。そこから車で20分ほどのところに庄川温泉郷はある。山の脇を流れる庄川は、清流にしか棲まないというアユが多く獲れることでも有名だ。

 三楽園はそんな風光明媚な場所にある老舗の温泉旅館だ。客室は23室。丁寧な接客と2009年から始めた泥を使ったビオファンゴが評判を博している。

 「1996年からエステ事業を始めた」と坂井彦就社長は、同社がファンゴを始める以前の転換期についてこう語る。バブルが弾け、企業の社員旅行などの団体客は減少傾向にあった。同旅館では、女性だけのグループも多いことを考え、女性をターゲットにした戦略を打ち出そうと、自社でエステティシャンを養成。本格的なエステが体験できるようにした。4年ほど経過すると、「本格エステができる温泉旅館」としてクチコミが広がり、リピーターも訪れるようになった。だが「せっかく温泉旅館にあるエステ。温泉を使った独自のエステを打ち出したかった」。坂井氏は当時の思いをこう語る。

 そんな時、日本におけるビオファンゴの第一人者、大和田瑞乃氏と出会った。大和田氏は、イタリアをはじめとするヨーロッパで、ファンゴや吸引といったさまざまな温泉の活用法があることを知り、それを日本の地域活性化に生かすべく尽力していた。大和田氏からファンゴのことを聞き、坂井氏は旅館でファンゴをやろうと決断する。体に直接泥を塗るファンゴであれば、エステと組み合わせて特色が出せると考えたのだ。

カラオケセットを捨てる決断

20120927_2.PNG 調査の結果、庄川温泉の泉質はファンゴに適していることがわかった。2009年、旅館では、独自に引いている源泉を使いファンゴの研究を始めた。泥の成分構成や熟成させるための温度を少しずつ変更しながら実験を重ね、三楽園だけのファンゴ泥を完成させたのだ。こうして翌年1月、日本初の本格ビオファンゴの提供を開始した。

 「ファンゴを提供してから客層が変わった」と坂井氏は言う。実は、エステを始めた時から、三楽園には二つの相反するニーズを持つ客層ができていた。エステを目的として来る人が、静かでゆったりとした空間を好む一方で、社員旅行や歓迎会、忘年会などのニーズもあった。会社の社員旅行などには、宴会がつきものだ。宴会では大音量でカラオケをやり、浴衣姿で酔った宿泊客がロビーを歩くこともあった。たとえエステがよかったとしても、ロビーで酔客とすれ違い、カラオケの騒音があったりしたら、エステで癒されたいと思う人は「また来よう」とは思わない。相容れない二種類のニーズをどうするか。大きな課題だった。

 だが、ファンゴに出合ったことで「これからは長期滞在型のファンゴをメインとして打ち出していこう」と坂井氏は決断する。

 そこで行なったのは、カラオケセットを捨てることだった。10年3月、坂井氏は宴会場からカラオケセットをなくした。すると「対前年比で50%減の売上になった」(坂井氏)。カラオケセットがないことのマイナス効果は想像以上だったのだ。社員旅行や宴会では、メンバーのなかに数人でもカラオケをやりたい人がいれば、カラオケセットのない旅館は選ばれない。そして、そういう人が思った以上に多かった。「失敗したかもしれない」そんな思いがよぎったという。

 しかし、その苦境を坂井氏は知恵で乗り越える。近隣の飲食店やスナックと提携したのだ。宴会の後、夜も更けてからの二次会は提携した飲食店で行なってもらう。カラオケがやりたい人がいれば、カラオケができる店を紹介する。また、飲食店までは送迎のバスを出すようにした。料金に関しては事前に取り決めを行なった。一度に多くの人が訪れれば店の売上も上がる。近隣の飲食店も潤うため、喜んで協力してくれた。

 こうして、ファンゴをしにきた人は静かな癒しを、宴会で飲み足りないという人も、提携先の飲食店で楽しむことができ、双方のニーズを満足させられる仕組みができたのだ。

地域と連携し温泉郷を発展

20120927_3.PNG このように、庄川温泉郷全域が潤う取り組みは他にも行なっている。たとえば、庄川の河川敷にある水記念公園の整備や伝統的な祭りのPRなどだ。温泉郷のシンボルでもある庄川の河川敷は、楽しみながら健康になるというコンセプトで健康遊具が置かれている。同旅館でファンゴをし、エステをした後ゆっくりと河川敷を散歩する。雄大な景色を楽しみ、癒しを得る。公園やその近隣にあるみやげ物店にも立ち寄るため、町そのものに人が増えた。

 その昔、「湯治」といって1週間から1カ月ほど温泉地に滞在し、毎日温泉に浸かり病気を改善させるという温泉の使い方は日本にもあった。現代社会では、同じように長逗留できる人は少ないかもしれない。だが、ファンゴを提供することで、エステだけで日帰りしていた人が1泊する。また2泊3泊と連泊し、のんびりとした時間を過ごす。「現代版湯治」として、そういう楽しみ方をする人も増えてきているという。

 宴会の場合、人数が多いため売上は伸びるが、一人あたりの金額にしてみるとそれほど高額にはならない。対して、ファンゴが目的の場合、宴会客よりも一人が使う金額が高くなる。これまでの宴会客の売上と同等の金額をファンゴの客でまかなうことは難しいが、ファンゴ目的の客を増やすことで利益率が上がり、経営体質も強いものになっていく。

 また、長期滞在ともなれば、何日も同じ旅館で食事をするよりは、2泊のうち1日は近くの飲食店で食事をすることも増えてくる。そうなれば、自然と近隣の飲食店も潤うのだ。

 同旅館では、今後、ファンゴの泥に含まれる微生物を研究し、より体によい成分を多く泥に含有できるよう新たな研究を進めていくという。この研究が成功し実証されれば、温泉の効果以上にビオファンゴが体によいことが証明される。近い将来、科学的裏づけに基づいた「現代版湯治」として、庄川ビオファンゴが庄川温泉郷の目玉となるかもしれない。

●会社概要

企業名 三楽園
所在地 富山県砺波市庄川町金屋839
資本金 4000万円
従業員 40人
電話 0763-82-1260
URL http://www.sanrakuen.com/
掲載日:2012年9月27日
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