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注目のニュービジネス
遊び心とデザインを取り入れた「魅せるネジ」

赤や黄色のカラフルな色。頭の部分にデザインが施され、引き出しの取手や看板のアクセントとなっている―。こんな、一風変わったネジを提案・販売している川端ネジ製作所(大阪府東大阪市)。祖父の代から受け継がれる高い技術に斬新なアイデアを加え、時代を乗り越えている。

目次

ネジを愛する気持ちがアートネジを生んだ

20120529_1.PNG 1953年に創業した川端ネジ製作所は、精密ネジやナットの切削加工がメインの精密ネジメーカーだ。東大阪という、町工場が集積する場所にある同社は、22年前から「アートネジ」というデザインを施したネジを売り出している。「アートネジを始めたのは、1989年。父が社長になってすぐのこと」。こう語るのは、川端謙二社長の次女で、同社のウェブサイト開設などソフト面をすべて受け持つ小池衣美子(きみこ)氏だ。

 考えてみれば、ネジはさまざまな製品の至るところで使われている。自動車、飛行機といった乗り物も、掃除機や洗濯機といった家電製品も、ネジ一つ抜けただけで使えなくなることだってある。重要な役割を果たしているネジだが、そのほとんどは目に見えないところで機能する。

20120529_2.PNG 非常に重要だけれど地味で見向きもされないネジ。「かくれているだけじゃかわいそう...。そんな想いがあった」(小池氏)。

 最初は自分でネジにカラースプレーを吹き付け、色をつけた。トライアルを重ねる中で、知り合いの塗装会社に塗装をしてもらう機会があった。そこで出来上がった試作品を見ると、単にスプレーを吹き付けたものよりも、数倍見栄えがいいものができていた。「これは商品として売り出せる」。それを見て、アートネジに商品としての高い可能性を見出した。デザインに改良を重ね、「アートネジ」として展示会に出展することにしたのだ。

インターネットでお客さまの幅が広がる

20120529_3.PNG 展示会では人の目はひくものの、最初はアートネジの引き合いはほとんどなかったという。「川端ネジの2代目が趣味で変わったことを始めたぞ」。周囲にはこう揶揄されていた。

 だが90年、雑誌のデザインコンテストに応募し、3位に輝いたことで流れが変わった。「ネジだってオシャレをして表に出たいんだ!」という内容の、ネジの声を川端氏が代弁して記した「ネジからの手紙」を添えたことも入選の大きな理由だったという。「いつも黒子に徹して裏で支えるネジを、たまには表に出してあげたい」同社のネジに対する想いが審査員に伝わったのだ。

 デザインコンテストで入賞したことが弾みとなり、アートネジはその認知度を上げていった。

 新規顧客の増加に一役買ったのが、5年ほど前に開設されたウェブサイトだ。サイトの構築はソフト面を担う小池氏が行なっている。「本当は加工のほうが好き。でもソフト面を扱える人がいなかった」と言う小池氏。サイトを立ち上げたことにより、これまでは関西中心だった取引先が全国へと広がった。サイトは、同社が独自に考えた新しいアートネジを発表し販売する場としても機能している。

 サイトを通じて同社のアートネジを知り、発注してきた顧客から「『この精度の高さなら』と、アートネジだけでなく、精密ネジの発注が来ることもある」と小池氏は語る。

おじいちゃんの代からの高い技術を研鑽し発展させる

20120529_4.PNG 新規顧客の獲得にも一役買っているアートネジだが、「アートネジだけを広めていくことはしない」と小池氏は言う。

 そこには、創業以来、祖父の代から受け継がれた「精度の高いネジをつくる」という製造業としての誇りがある。

 アートネジは展示会などに出しても人目を引くものだ。「変わったことをやっている」と同社の名前を覚えてもらうことも多い。

 だが、そのアートネジも、お客さまにリピーターとなってもらうには製品の確かさが不可欠だ。どんなにデザイン性に優れていても、本来の「ネジ」としての機能性が劣っていれば、一度は購入してもらえても二度目はない。だからこそ、「ウチが提供するのはあくまでも"ネジ"」と小池氏は断言する。

 現在、アートネジと通常の精密部品としてのネジの売り上げ比率は3対7。今後もこの比率を変えようとは考えていない。精密部品としてのネジは数も多く定期的に発注が来る。一度顧客がつけば、安定した収益が見込める上に利益率も高い。対してアートネジは小ロットでの生産だ。「顧客数はアートネジのほうが多い。だが、精密部品としてのネジがあってのアートネジ」(小池氏)。ネジ加工の精度が上がり、より完成度の高い製品を提供し続けることで、アートネジのクオリティも自然に上がっていく―小池氏はそう考えている。

 ネジを愛し、楽しく綺麗なデザインをネジに施しながら、その一方で受け継がれた技術をさらに研鑽し、精度の高いネジをつくり続けている同社。アートネジは、顧客の要望を聞きながら、求めるものを提案する形で提供している。製造業の中でも、ネジをつくっている会社は数多(あまた)ある。生き残っていくためには、何かほかと違う特徴が必要だ。アートネジはその最たるものなのかもしれない。

●会社概要

企業名 川端ネジ製作所
所在地 大阪府東大阪市衣摺4-9-11
電話 06-6728-7570
URL http://www.art-neji.com/
掲載日:2012年5月29日
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