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注目のニュービジネス
震災後は保存食として一般家庭へ~おいしさを追求した戦闘糧食

自衛隊が携行するいわゆる戦闘糧食は「味は二の次」という固定観念があった。だが、永岡商事(広島市佐伯区)の「マイクロレボライス」はおいしさを追求した戦闘糧食だ。開発直後に起こった震災で、自衛隊からの注文が殺到。保存食として一般需要も急速に伸びている。

目次

非常時にこそおいしい食事を

20120501_1.PNG 2011年3月11日、それは東日本大震災が発生した約30分後だった。永岡商事(広島市佐伯区)の電話機がひっきりなしに鳴り続けた。この年の1月から売りだしたばかりの戦闘糧食「マイクロレボライス」への注文だった。

 発注元は各地域の防衛省自衛隊駐屯地からだった。広島にある同社では、さほど地震の揺れも感じなかったが、永岡政明社長は「かつてない規模の震災が起きた」と直感した。なぜなら震源地周辺である東北地方の駐屯地だけでなく、支援に動く全国各地の自衛隊からも問い合わせが殺到したからだ。

 未曾有の大震災と知り、同社は地震発生の当日からすぐさま全社員一丸となって24時間製造を続ける臨戦態勢を敷いた。

 「マイクロレボライスを製造するため、自社工場を立ち上げたばかりだった。メーカーとして出発していなければとても対応できなかった」と永岡氏は当時を振り返る。

 1909年創業の永岡商事は、自衛隊向け戦闘糧食の卸業を代々営んできた。

 そんな中、缶に詰められた一般的な戦闘糧食は通称「カンメシ」と呼ばれ「長い間、携行食だから味よりも耐久性と思われていた」(永岡氏)。しかし、過酷な状況下では食べることで気力が左右される。「厳しい任務に耐える自衛隊員にこそ、おいしいものを食べてもらいたい」と、永岡氏は戦闘糧食の味の改善を考え続けていた。

卸から製造販売メーカーへ

20120501_2.PNG そこで、09年から「本当においしい戦闘糧食」の開発に乗り出した。卸としては歴史がある同社だったが、メーカーとしてはゼロからの出発。3年間の試行錯誤が続いた。

 永岡氏を支えたのは「おいしい戦闘糧食を届けたい」という思いだ。加えて、実際に災害が起こった時に、他社から仕入れた製品を納品するだけでなく、「いつでも戦闘糧食を供給できる非常時に強いメーカーになる」との決意もあった。

 そして、米の浸漬(しんせき)と加熱を短時間に行ない、味を損なわずにご飯を保存できる新技術「加圧マイクロ波加熱製法」と出会う。おいしさと長期保存を両立した革新的な戦闘糧食「マイクロレボライス」の誕生だった。

 加工したご飯を真空パックしたマイクロレボライスは、常温で2年間の長期保存が可能。その上、ご飯本来の味わいが生きたもちもちとした食感は、従来の"パックご飯"の概念を覆すものだ。

 製造のため自社工場を立ち上げたのは、11年1月11日。建築費は約10億円に上った。勇気のいる投資に思えるが「不安はなかった」と永岡氏は言う。従来の常識を破る発想のため、競合他社は追随してこない。そして「必要不可欠の製品」という確信が永岡氏にはあったからだ。

 東日本大震災が発生したのは、工場竣工のちょうど2カ月後。24時間3交代で1日1万2000食をつくった。「それでもすぐに納品され、製造が間に合わない状況だった」(永岡氏)。

 当初はひと月10万食販売できればいいとの目算だったが、この時は3日で8万食が売れた。その後も注文は絶えず、3月だけで売上個数は40万食を超えた。

女性からの問い合わせが急増

20120501_3.PNG 軍事用に開発されたマイクロレボライスは、賞味期間が2年。一般の保存食に比べ遥かに長期間の保存が可能だ。しかも従来の保存食の枠を超え、炊き込みご飯や栗ご飯など、多彩な味のバリエーションが6種類ある。毎日食べても飽きず、開封してから48時間は冷めた状態でもおいしく食べることができる。

 震災以降、広告や宣伝を行なう暇もなかったが、「保存食として一般家庭から、特に女性からの問い合わせが増えた」(永岡氏)という。

 実は、被災地では多くの自衛隊員が自身に支給されたマイクロレボライスを被災した人々に譲っているという事実があった。それを食べて命をつないだ人々は、後にその味が忘れられず、自衛隊を通じて同社に問い合わせをする人が増えていった。

 また、被災者から話を聞いた親類縁者や友人たちが「被災地に届けたい」と注文をすることも多い。さらに、今回の震災を受けて、これまで戦闘糧食には縁のなかった主婦やOLが災害時の保存食として注文するケースが増え、女性からの問い合わせが相次ぐ。

20120501_4.PNG その結果、自社のウェブサイトを通じた一般向けのネット販売数も急増。かつてはサバイバルマニアがメインターゲットだったが、今ではOLや主婦が主な購買層になった。こうしてマイクロレボライスは、今や自衛隊の"戦闘糧食"から一般向けの"保存食"として広まり始めている。

 これからは「救急箱と同じように、"救急食"として、どこの家庭にも常備されるようになって欲しい」と語る永岡氏。非常時にこそおいしいものをという考えが一般的になる日は近そうだ。

●会社概要

企業名 永岡商事株式会社
所在地 広島県広島市佐伯区五日市港4-2-1
資本金 4500万円
従業員 23人
電話 0829-34-3212
URL http://www.m-revo.jp/
掲載日:2012年5月 1日
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