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注目のニュービジネス
斬新! 野菜提案企業の意欲

一風変わった社名の坂ノ途中(京都府京都市)。そのキャッチコピーも目を引く「野菜提案企業」だ。農薬や化学肥料を使わずに野菜をつくる新規就農者は多いが、彼らには共通した悩みがある。「売る先がない」だ。これを解決すべく、小野氏は彼らと飲食店や青果店をつなぐ同社を2009年7月に設立した。

目次

そこに未開の沃野があった

20111122_1a.PNG 食品に「安心・安全」を求める声が強まって久しい。農薬や化学肥料を使わないでつくられた、いわゆる「オーガニック」(※)な野菜の存在感は増している。そして農業に対する注目が高まる中で、新たに農業を職に選ぶ人も珍しくない。

 「自分の手で、自然な手法で野菜をつくろう」。だがそんな志の持ち主も、坂ノ途中・小野邦彦社長によると、「売る」段階で壁にぶつかる。

 小規模につくって売る新規就農者の場合、まず価格競争力がない。加えて「有機」と名乗るために必要な「有機JAS認証」を獲得するためのコストと労力は容易に賄い得ない。勢い流通・小売りの段階では大規模な生産者が"勝ち組"になる。

 結果として新規就農者の多くが、兼業もしくは家族の誰かに養ってもらう状況に甘んじることになる。

20111122_2a.PNG 野菜をつくる技術を磨くことは誰でもできる。だが販路を見出すことは至難の業だ。そんなわけで、「農業は儲からない」との風評も立つし、あとに続こうとしていた新規参入予備軍は躊躇し、家庭菜園でお茶を濁すことになる。

 しかし、と小野氏は言う。「日本でこのまま農薬づけの生産スタイルを続ければ、ゆくゆくは土地がやせて農業は破綻する。環境負荷の少ない農業の担い手が増えないと」

大規模な生産者は相応の流通企業と結びつきを持ち、販路を持っている。そこにベンチャー企業の坂ノ途中が割って入る余地はない。その代わり、小規模に農業を営む新規参入者とのビジネスは、まだ本格的に取り組む流通関係者がいない。

 売り先が見つからなかったり、適正な値付けができないために、買いたたかれたりしている生産者を支援すれば、成長余地の大きいビジネスになるのではないか──小野氏はそんな風に考えた。まさに未開の沃野を見たのである。

志ある人たちに届ける

20111122_3a.PNG 坂ノ途中の仕事は、生産者の野菜と、青果店のような売り手、カフェ・レストランといった使い手を結ぶことにある。具体的には売り手・使い手からの注文を受けて生産者に連絡、約一週間後の収穫を経て配達する。京都市内であれば自らトラックを運転して配達。それ以外は宅配便を使用する。

 野菜を届ける先は、地域別に見ると京都7割、東京2割、残りが大阪だ。取引先の内訳は飲食店5割、青果店3割に続き、社内の福利厚生の一環で野菜を社員に提供する企業向けの需要もある。

 生産者の内訳は京都5割、奈良3割、その他が大阪、三重、和歌山でほぼすべてがキャリア5年程度の新規就農者だという。意外にも小野氏らは生産者を自ら営業して獲得してきたわけではない。旧知の生産者を通じて仕事が広がっているのだ。「それだけ困っている生産者のニーズは大きい」と小野氏は話す。

世界進出も実現

20111122_4a.PNG 坂ノ途中では流通業務に加え、野菜の活用を提案することも珍しくない。集客に悩むレストランに「坂ノ途中ランチ」を提案して実績を挙げたのはほんの一例だ。カフェの店頭で出張販売を行うこともある。

 既に述べた通り、生産者が坂ノ途中から得られるメリットは販路獲得だが、では一方の売り手・使い手のそれはどうなのだろうか。

 扱う野菜は通常のスーパーに比べて割安ということはない。ただ小野氏によると、鮮度の高さから結果的に廃棄される割合が減るという。これはまさにコスト圧縮につながる。あるレストランからは調味料の使用量が減ったとの話もある。

 いずれにしても取引先の飲食店は、個人経営の店舗が多く、材料に細心の注意を払ってメニューをつくる「志ある」ところなのだという。

 昨年の創業以来、毎月過去最高の数字を記録している坂ノ途中。今年12月には月商300万円を目指す。10月からは海外輸出も始めた。「シンガポールでいちばん野菜が高いといわれる高級スーパーに卸した」(小野氏)のだ。段階を踏んで、毎週一回、輸出できる態勢を整えていく。

 「高品質の野菜として評価されれば、これまで買いたたかれていた生産者の自信になるはず」と小野氏は利益以外の効果も期待する。

 小野氏が現在持つ構想の一つに、野菜の出張販売を「都市型野菜市」としてビジネスモデルに昇華させることがある。

 「野菜の販売は"エコ"なイメージを対外的に打ち出せるメリットがある。地域にとけ込みたい組織、たとえば幼稚園などがお迎えに来る保護者を相手に野菜を売る。会話が生まれ、イメージもよいものになるだろう」

 この野菜の品揃えから販売のスタイルまでをパッケージ化し、FC展開することを思い描いている。

 通常、催事などでの販売は、主催者が出展者から料金を徴収して販売するのが主流だ。しかし小野氏は、野菜が持つイメージを活用し、逆のビジネスモデルをつくろうとしているのだ。農業を取り巻く現実に果敢に取り組んでいる坂ノ途中。これからも野菜を"ビジネス"にする工夫を続けていく。

●会社概要

企業名 坂ノ途中
所在地 京都府京都市南区西九条比永城町118-2
資本金 400万円
従業員 2人
電話 075-200-9773
URL http://www.on-the-slope.com/
掲載日:2011年11月22日
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