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注目のニュービジネス
製造元から初年度約3万個出荷

楽器販売店が加湿器のマーケティングに参入──。これだけを聞くと、「なぜ?」と疑問が浮かぶはず。その背景には、消費者に楽器とそれにふさわしい環境を提供したいという思いが隠されていた。

目次

「音楽を楽しむために」環境づくりに乗り出す

20100928_1.PNG 東京・小金井市にある宮地商会(本社:東京都千代田区)のショールーム。店内にはピアノや弦楽器などがずらりと並ぶ。レッスン室やホールもあり、ここに来れば音楽に関するさまざまなことを楽しめる。

 楽器の入ったショーケースの片隅には、白い器に入った、草を模したものが置かれている。実はこれ、同社が販売している加湿器なのだ。商品名は「ミスティガーデン」。発売以来、着実に人気を集めている商品だ。

 「ミスティガーデン」が発売された背景には、経営企画室の馬場徹室長の「音楽を楽しむ人のために環境を整えたい」という思いがあった。

 乾燥はピアノの音程を狂わせ、声楽を愛好する人ののどを痛める。楽器販売やレッスン教室の運営を手掛けているのに、乾燥が障害となってしまう。

 「販売だけではなく、その先のことも考えるのが企業の務め」と馬場氏は加湿器を探し始めた。

開発のヒントはホテルでの乾燥防止策

20100928_2.PNG 電動の加湿器はいくつも販売されている。だが、長時間使用すると必要以上に加湿し、室内に結露が生じることもある。室内を一定の湿度に保つ加湿器はなかなか見つからなかった。

 「乾燥対策」というキーワードから、馬場氏の脳裏にある光景が浮かんだ。ホテルの室内でタオルが干されている場面だった。

 馬場氏はホテルに宿泊する際、乾燥防止にぬらしたタオルを室内に干していた。タオルに含まれる水分が蒸発し、室内が適切な湿度になるからだ。

 とはいえ、楽器売り場やレッスン室でタオルを干せば見た目は悪い。加えてタオルに含まれている水が滴り落ち、床がぬれてしまう。

 さまざまな方法を試みた結果たどりついたのが、ミクニが発売していた携帯加湿器「ちょこっとオアシス」に使われていた不織布(ふしょくふ)だった。長時間水につけていても品質が劣化しない点が決め手だった。

レッスン室の利用者から購入希望が寄せられる

20100928_3.PNG 不織布でつくったフィルターを浅い器の中に立てる。そこに水をそそぐ。非常にシンプルな加湿器が完成した。

それをレッスン室に置き効果を調べた。調律師がその部屋のピアノを調べると、音程の狂いがほとんどない。湿度が適切に保たれていたのだ。馬場氏はすぐにミクニに案を持ち込み、製造の協力を依頼した。

長所はそれだけではなかった。電動の加湿器のように過剰に加湿することもない。この自然蒸発を利用した加湿器は、空気中の水分が多いと不織布に含まれる水分の蒸発量が下がるからだ。

効果を実感したのは馬場氏や調律師だけではなかった。教えに来た先生の間でも「のどの痛みがなくなった」と評判になったのだ。

「ミスティガーデン」と名付けられたこの加湿器は2007年に発売が開始された。エコ加湿器として注目を集め、口コミで広がっていった。マスコミにも取り上げられ、雑貨販売店での取り扱いも決まり、セールスに弾みがついた。

製造販売元ミクニの初年度の総出荷数は約3万個。使い方が簡単な上、電気を使わない点がエコだと評価された結果だった。

現在、宮地商会でミスティガーデンの販売を担当している北出満氏は「ミスティガーデンを両親にプレゼントした」と語る。周囲にも勧めたくなるほど、よさを実感しているという。

女性からは「化粧ののりがよくなった」という声が寄せられ、呼吸器科の医者が「楽になるから」と患者に勧めるケースも多いという。主な購買層は50歳代以上の女性。電動加湿器を好まない世代が中心だ。

販売店の協力によって生まれたミスティガーデンは、今日も部屋の片隅で居心地のよさを生み出している。

●会社概要

企業名 株式会社宮地商会(宮地楽器)
所在地 東京都千代田区神田小川町1-4
資本金 4880万円
売上高 53億5900万円
従業員 329人
電話 03-3255-2751
URL http://www.miyajimusic.com/
掲載日:2010年9月28日
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