トップページ  >  起業する  >  コラム・インタビュー  >  注目のニュービジネス  >  時代が求める手頃な「ミニ野菜」

注目のニュービジネス
時代が求める手頃な「ミニ野菜」

大きな野菜を使い切れず、冷蔵庫で腐らせてしまう─。そんな経験を持つ人は少なくないだろう。トキタ種苗(埼玉県さいたま市)は小サイズで使い勝手の良い「ミニ野菜」で存在感を示している。

目次

手のひらに乗る白菜

20100706_1.PNG 丸ごと買うとずしりと重い野菜、白菜。鍋料理やキムチで使われ、食材としては一般的だが、そのサイズや量から使い切るのが難しい一面もある。

 ところが種苗メーカー、トキタ種苗が開発、2006年に発売したミニ白菜、「娃々菜(わわさい)」は手のひらに乗るほどのサイズだ。

 近年、食事を一人で取る「個食化」の流れが指摘されるが、同社の開発普及室の三堂地(さんどうち)香氏は、そういった向きにも「"使い勝手"がよい野菜として受け止めてもらえるのが娃々菜」と話す。

 日本に初めてミニトマトを紹介した同社では「おいしさを第一に考えながら」(三堂地氏)、早くからミニ野菜のジャンルで研究開発に取り組んできた。小兵(こひよう)力士の舞の海が全盛期にあった15年ほど前、その活躍にちなみミニサイズの白菜「舞の海」を発売した。「舞の海」は大ヒットというわけにはいかなかったが、原因を検討していく中で、さらにサイズを小さくする必要性が明らかになった。

 こうして、初めて見た消費者から「かわいい」と言われる娃々菜の開発に至った。結果的に、舞の海は1キロほどだったが、娃々菜は400グラム程度となった。

「かわいい」では買われない

20100706_2.PNG 「ミニ野菜」にトキタ種苗が注力するのはなぜか? その理由を三堂地氏は「量を重視する戦後・高度成長期を経て、食べたいもの、おいしいものを選んで食べる消費者が増えた。その際、使い勝手も重視されている」とし、ミニサイズに対する消費者の潜在的なニーズがあることを明かす。

 大きな野菜を買って余らせるのは、どう考えても使い勝手が悪い。白菜はそう思われてしまう典型なのかもしれない。

 現在同社の商品群には約10種類のミニ野菜の種苗が並ぶ。娃々菜以下、甘みの高いミニトマト「トマトベリー」、ミニキュウリの「ミニQ」、ミニネギ「ちゃんこ葱」などが代表的だ。

 消費者の目から見れば「小さくてかわいらしい」を意味する名前の通り、娃々菜の第一印象は「かわいい」だろう。

 だが、その種の声を聞くところまでで、種苗を開発・販売する同社の仕事が終わるわけではない。

 生産者は売れる野菜をつくるもの。つまり、市場で流通し売れる見込みがなければつくらない。その点で、ミニ野菜にはサイズゆえの難しさもある。

 「例えば娃々菜の場合、白菜の産地の生産者は通常の白菜サイズに合わせる形で作業工程を機械化しており、娃々菜の小ささに対応できない」(三堂地氏)こともある。収穫期間も短く、人手を要することがネックになる。そのためチンゲンサイやレタスの生産者が娃々菜を手掛けるケースが多いという。

 娃々菜は当初、流通・小売り関係者の理解を得ることも課題としていた。「これを本当に消費者が受け入れるのか」というわけだ。消費者の見方と生産者、流通・小売りのそれは若干違うようだ。

 一方の消費者に目を転じると、かわいいだけでは購買には至らないという現実がある。価格面でも難しさがあった。4分の1カットの白菜が100円を切る価格で売られている現状は、それを上回る価格の娃々菜にとって逆境ともいえる。

メニュー提案で市場をつくる

20100706_3.PNG そこでトキタ種苗が採ったのが、娃々菜のおいしさを引き出す料理を紹介していく戦略だ。

 「千切りにして生食できる」という娃々菜。従来の白菜とは異なり、軟らかく、えぐみがなくて甘いという特徴を最大限アピールする。提案するメニューは「娃々菜コールスローサラダ」「娃々菜シーザーサラダ」「娃々菜カナッペ風サラダ」といった生食を押し出したものや、鍋料理でも「短時間の加熱でおいしくいただける」(三堂地氏)メリットがあり、和洋中の別を問わず用途の幅は広い。

 三堂地氏は「"白菜は冬の鍋に使うもの"というイメージが強いが、娃々菜は冬だけでなく、夏も食べられる」とし、「白菜を超えた多様な使い方が可能」と語る。
 こういった取り組みを経て、09年11月からは大手量販店での販売が始まっている。小売り大手のイトーヨーカ堂では、「ミニ白菜」ではなく、「娃々菜」との呼称で販売されている。野菜は品種名によって呼ばれることが普通だが、その点で娃々菜は独自の地位を獲得している。

20100706_4.PNG このほかにも、ファミリーレストランのサラダメニューに使われたり、娃々菜の特徴を評価する居酒屋のメニューに導入されたりしている。

 この種の"指名買い"は娃々菜に限ったことではなく、トマトベリーでも同様の成果が見られるという。ただ種苗を開発・販売するだけでなく、その先の市場をつくる─。そんな同社の意気込みが表れている。

 「種苗の開発はすぐにできるものではない」と三堂地氏は話すが、「おいしさ」を前提とする開発を行う同社は、「使い勝手の良さ」という新たな価値をこれからも消費者にアピールしていく。

●会社概要

企業名 トキタ種苗株式会社
所在地 埼玉県さいたま市見沼区中川1069
資本金 1億4800万円
従業員 100人
電話 048-683-3434
URL http://www.tokitaseed.co.jp/
掲載日:2010年7月 6日
  • googleplus
  • hatena
  • pocket
  • line
  • evernote
Copyright © WizBiz Inc.
このコンテンツの著作権は、WizBiz株式会社に帰属します。著作権の承諾なしに、無断で転用することはできません。
このページの先頭へ
起業するコンテンツ一覧
  • 事業計画作りや実際の起業準備そして開業まで。起業を目指す人の『こんな時どうする?』に応えます。

  • 法律知識や経営診断など、起業準備段階はもちろん、実際に起業・開業してからも使える豊富な情報を掲載。

  • 『国の補助金を活用して創業するには?』についてご説明します。

  • 中小企業や個人投資家にとってのメリットを、その仕組みや優遇措置について詳しくご紹介します。

  • 起業・開業を考えている職種の消費者利用動向がすぐにわかる、職種別データ一覧。

  • 200以上の業種・職種から選べる開業準備手引き書。

  • 最新のビジネストレンドや中小企業が直面する経営課題など、読み物コンテンツをまとめています。

  • 若手起業家にインタビュ—。「社会人起業」と「学生起業」それぞれの選択を対比しながら起業のカタチを探ります。