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注目のニュービジネス
「農産物の安全・安心には製造技術管理がカギ」のニュービジネス

食料の自給率低下の危機が叫ばれて久しいが、農業においては、先進国独特のコスト高と後継者不足が問題となっている。
 このような状況を一気に解決できるかもしれないニュービジネスとその付随技術を紹介する。

目次

野菜は育てる時代から製造する時代へ!?

日本得意の製造業の製造管理技術を活用して、まるで工場のように野菜などの農産物を製造する植物工場が広がりを見せている。植物工場は、閉鎖系の環境で水耕栽培を行ない、完全無農薬で栄養価の高い作物を安定的に生産できる。
 このような特徴に加え、
1.国民の食の安全・安心に対する関心が高まっている
2.植物工場で光源として利用する発光ダイオード(LED)、レーザー・ダイオード(LD)などの技術革新が進んだ
 などの点から植物工場が注目されている。

数年前から、キューピーやカゴメ、パソナなどの民間企業が植物工場を稼動させるなど話題性はあった。パソナなどは東京・大手町の高層ビルの地下1階をすべて植物工場にしていたことがマスコミに何度も紹介されたが、なかなか本格的な事業にはならなかった。

しかし、今年に入り、大手ゼネコンや大手化学品メーカーなどが相次いで植物工場事業への参入を発表したことから市場が活性化されてきている。この背景には、農林水産省の植物工場設置等の優遇処置があるからだろう。

農水省は、野菜などを人工的な光や温・湿度管理で栽培し生産量を通常の10〜20倍に増やすことができる「植物工場」の導入を促進するため、経済産業省と共にワーキンググループを開催して支援策等の検討を行い、実施可能な施策から順次実施している。

民間企業の資本や技術力を活用し食料を増産できる植物工場は、約40%に低迷する「食料自給率」の向上につながると期待されている。とはいえ多くの規制が普及の障害になっていたが、ようやくその障害を取り除こうとする試みが始められた。

植物工場をサポートする新技術

ここでご紹介する植物工場は大手企業の例だが、大手企業自らが植物工場を運営しようというものではない。

例えば、大成建設は、自社で保有している遊休地を利用してもらうために植物工場に必要な設備を付帯し販売・賃借する。また、昭和電工や三菱化学は自社の技術をより発展させたもので、これから植物工場を運営しようとしている人には朗報となる技術であろう。

植物工場は、水耕栽培と人工太陽(電熱器)により室内で季節に関係なく野菜を栽培するため、遊休工場の転用は比較的スムーズに移行しそうだ。

次に人工太陽に必要な熱源として、昭和電工は栽培コストの抑制につながる専用の発光ダイオード(LED)チップ(植物工場に適した赤色LEDチップ)を開発した。 波長を光合成反応の効率が高まるとされる波長帯付近に合わせ、出力を従来製品の3倍程度、使用電力を約7割も削減できるため、生産コストを大幅に低減できる可能性がある。4月から植物工場を実際に運営している企業や施工企業を対象にサンプル出荷を始める。

開発したチップはガリウムなど4つの元素からなる「四元系LED」と呼ばれる製品で、波長は660nm※で、発光出力は11mWと同じ波長の製品としては世界最高の出力を達成している。
※nm:1mの10億分の1

徹底した生産管理で食の安全性を高められるほか、食料不足に悩む海外でも注目を集めている。成長分野ととらえて参入する動きが、産業界でさらに拡大しそうだ。

この2社は、景気低迷で大規模な減産を実施している自動車や電機関連メーカーに対し、植物工場プログラムに向けた余剰設備の転用を提案し、大手企業20社から引き合いがあったという。収穫した野菜の販路確保なども支援し、初年度に5億円の売上高を見込んでいる。

日本国内だけではなく、海外に目を向けている企業もある。 大手化学メーカーでは三菱化学が、野菜栽培ベンチャーと植物工場の共同開発に着手し、中東地域での事業化を目指している。三菱化学では、得意の海水を淡水化する事業の応用として野菜を屋内で栽培している。

植物工場は屋外で栽培するより水の使用量を減らせる。特に石油以外にめぼしい産業がなく、砂漠が広がっていた中東において、農業という新しい産業を根付かせることができると期待されている。食料問題を背景に、中東以外でも計画的に量産できる植物工場の需要は広がる可能性がある。

まとめ

農産物を工業製品のように製造するということは、感情的にはなかなか相容れないものがある。しかし、よく考えてみると、植物工場で栽培(製造)される野菜ほど安全・安心に合致した商品はないような気がする。

植物工場は、基本的にクリーンルームによる栽培となる。クリーンルームであるため病原菌や害虫の侵入はあり得ない。そのため農薬を使用する必要がなくなる。

熱源である人工太陽は、早い話、強力な電灯だ。そのため工場内での多段化が可能となり、農産物づくりに適した農地が限られている日本において土地を有効利用できる。

植物工場は屋内のため、季節による変動もなく、温度変化などの気象条件による豊作・不作も発生しない。極論すれば、農産物であっても「必要な時に必要なだけ」収穫することが可能なのだ。

なぜこのような便利で有効な農産物が、やっと今になって広がったのであろうか? もちろん農協とのしがらみなど政治的な問題もあっただろう。しかし、普及しなかった一番の要因は、消費者の「感情」ではないか。太陽を浴びている野菜は健康的で、電灯の光で栽培された野菜は、なんとなく不健康というイメージがあるからかもしれない。

本来は逆なのにも関わらず、このようなイメージが根付いている。遺伝子組み換え野菜や、バイオテクノロジーで開発された野菜(茎にトマトが根にジャガイモが育つ「ポマト」のようなもの)より、よっぽど健康的であるのに......。

いずれにせよ、植物工場製の野菜をどのように消費者に根付かせるかが、これからの最大の課題ではないか。技術的には何の問題もないのだから、あとはイメージの問題であろう。

●会社概要

企業名 大成建設 株式会社
所在地 東京都新宿区西新宿一丁目25番1号 新宿センタービル
設立 1917年12月28日
資本金 112,448,298,842円
事業内容 総合建設土木業(ゼネコン)

●会社概要

企業名 昭和電工 株式会社
所在地 東京都港区芝大門1-13-9
設立 1939年6月1日
資本金 121,904百万円
事業内容 アルミ、人造黒鉛電極、ハードディスクなどの製造

●会社概要

企業名 三菱化学 株式会社
所在地 東京都港区芝4-14-1
設立 1950年6月1日
資本金 500億円
事業内容 国内首位の総合化学企業三菱ケミカルホールディングスの中心事業会社
掲載日:2009年5月 7日
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