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注目のニュービジネス
先端部に360度ぐるりと毛がある歯ブラシ

円筒形の先端部に360度ぐるりと毛がある歯ブラシ「たんぽぽの種」が、ドラッグストアやスーパー、コンビニエンスストアを中心に販売網を広げている。一般的な植毛タイプの歯ブラシに比べて格段に細い毛が密集し、奥歯や前歯の裏なども磨きやすいと好評だ。舌の掃除にも使える"一本2役"の高付加価値商品として売り上げ拡大を図る。

目次

先端に密集した極細毛は通常に比べて30倍の本数

20081204_1l.PNGたんぽぽの綿毛のような道具を手に小首をかしげる女性。何かと思いきや、円筒形の歯ブラシだった――。5月から一部地域で放送されているテレビCMが、話題を呼んでいる。

2007年11月8日、「いい歯の日」にちなんで発売された「たんぽぽの種」だ。テレビの情報番組や新聞、雑誌などで紹介されたこともあり、月間10万本を超える売れ行きとなっている。東大阪市の従業員15人の小さな工場から誕生したヒット商品である。

この歯ブラシはユニークな形もさることながら、毛が高密度であることに驚かされる。太さ0.09mmの極細毛が2万1000本も密集している。一般的な歯ブラシに比べると、毛の太さは半分、本数は約20〜30倍に上る。このブラシで実際に歯を磨いてみると、想像を超えるやわらかさだ。歯をこすった時の刺激が少なく、まるでなでているかのような感触が伝わってくる。それでいて磨いたあとの歯の表面はツルツルして、歯垢が落ちているのが実感できた。

20081204_2r.PNG極細毛を高密度で円筒形にしたのは、通常の歯ブラシでは難しい奥歯の上や側面、前歯の裏側などを磨きやすくするためだ。歯並びの入り組んだ部分にもしっくりなじみ、磨き残しができにくいように考えられている。さらに、ブラシには舌の表面に付着した白い汚れ成分がよくからまるので、舌ブラシとしても使用できる。

STBヒグチ開発企画室の石井高一室長がこの歯ブラシの開発経緯を話す。「円筒状の歯ブラシの機能性が高いことは、ヨーロッパでは1920年代から研究で明らかにされていたようです。また、従来のような植毛式の製法では、本体のまわり360度に毛をつけることができないため、円筒形にしました」。高密度の円筒形ブラシを可能にしたのは、溶着技術に秘訣がある。毛の束を差し込んで植えつけるのではなく、プラスチックを溶接する技術を応用して毛と本体を直に接着している。

「前職で溶着技術を身につけていたので、それを応用する方法を思いついたのです。特許申請し、何度も試作を重ねて4年前に製品化にこぎつけました」(石井室長)

覚えやすい商品名と目立つ包装で再挑戦

20081204_3r.PNGSTBヒグチの母体であるヒグチ製作所は、55年に創業した。高度経済成長の波に乗り、切削加工の下請けや省力化機器の生産で成長したが、大手メーカーが製造拠点を海外に移したことで業績が落ち込む。打開策として新規事業のアイデアを社員から募り、白羽の矢が立ったのが歯ブラシの製造だ。同社にとって業種転換ともいえる異質商品だが、歯ブラシは同社のある東大阪市と隣り合わせの八尾市の地場産業であり、全国シェアの約6割を占めていたことから、なじみはあった。

04年11月、自社開発の歯ブラシ製造を目的にSTBヒグチが設立された。上羽弥志(うえばやすし)部長と石井室長を中心に当初から円筒形の歯ブラシの開発を目指し、第1号となる「デントレディアス」が誕生。量産化のための機械も開発した。「歯ブラシの消費量は国内で年間に約4億本。シェア1%の獲得を目標に、月産33万本を生産できる体制を作りたかったのです」と石井室長は振り返る。

自信を持って発売したものの、第1号製品の売り上げは伸び悩んだ。90年代後半の価格破壊以降、一般の商品は1本100円前後でしのぎを削っていたが、デントレディアスは実勢価格で1本500円。単に「いいもの」を作るだけでなく、価格に見合う商品特性を広く訴求する必要性を痛感し、改良品の開発に取り組んだ。

まずは、卸業者からも「覚えにくい」と指摘されたカタカナ商品名を改め、見た目をそのまま表現した「たんぽぽの種」とした。パッケージには、デンタル業界で敬遠されていた黒をあえて採用。売り場で競合品とともに陳列された時に目立つようにした。

介護現場からも素早い反応

20081204_4r.PNG「たんぽぽの種」の発売にあたっては、テレビやラジオのCMなど販売促進にも力を入れた。こうした努力が奏功し、発売直後から首都圏のイトーヨーカドーで好調な売れ行きとなり、それに目をつけた西日本の店舗やほかのスーパー、ドラッグストアなども取り扱うようになり、全国的に評判が広まりつつある。08年7月からは全国のセブンイレブンでも販売が始まった。

介護現場からも素早い反応があった。一般的な介護用歯ブラシと違い、あまり口を開けられない人の歯も磨きやすく、歯垢が落ちやすいと好評だ。手で握る柄の部分はしなりがいい。樋口泉美常務のアイデアでねじりを加え滑りにくくしたことから、介護施設などからまとまった注文が舞い込んだ。

また、子供の仕上げ磨きにも重宝されている。磨く歯の場所に合わせて向きを変える必要がないので、「持ち替える必要がなく使いやすい」とクチコミで主婦などの間に評判が広まったため、今年5月には子供用の「たんぽぽの種キッズ」を発売した。

同社は今年末までに溶着用機械を35台から65台に増やす計画だ。すでに国際特許(構造・意匠・製造)の申請も完了しており、「5年以内に国内外で年間100万本突破を目指したい」(石井室長)と世界進出を夢見て奮闘している。

●会社概要

企業名 STBヒグチ
本社 〒578-0935 大阪府東大阪市若江東町4丁目6‐29
設立 2004年11月
資本金 1000万円
売上高 1億4500万円(07年3月期)
事業内容 360度歯ブラシや工業用ブラシ、溶着ブラシ製品の企画・開発・販売
URL http://www.stb-h.co.jp/
掲載日:2008年12月 4日
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