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起業ノウハウ
従業員と会社を助ける保険制度:業務災害
当社は飲食店を経営しています。先日、従業員が洗い物をしていたところ、誤って手を滑らせてグラスを割ってしまい、その際、指に数針縫うほどのケガをしてしまいました。従業員の不注意で起きた事故であっても、労災として認められるでしょうか?
労災保険は、業務上の災害によりケガをした場合であれば、原則として保険給付の対象となります。以下で、業務災害の判断基準についてご説明します。
女性

解説者

特定社会保険労務士 岩野麻子(いわの・あさこ)
勤務時代から、350社の中小企業に対する労務コンサルティング業務に従事し、企業内人事部では、従業員約3,000人をサポートした経験を持つ。現在は独立開業し、就業規則の作成や助成金の申請等を行なっている。

目次

解説

【業務災害とは】

業務災害とは、労働者の業務上の事由による負傷、疾病、障害、または死亡を言います。労災保険の給付を受けるためには、労働基準監督署にて業務災害として認定を受ける必要があります。業務災害として認定されるか否かは、「業務起因性」がなければならず、またそのためには「業務遂行性」が認められるかどうかにより判定されます。

  • 業務起因性:傷病等が業務に起因して生じたものであること。つまり、業務と傷病の間に相当因果関係が存在すること。
  • 業務遂行性:労働者が労働契約に基づいて事業主の支配・管理下にある状態。

【業務災害の要件】

業務災害の要件は、災害発生時の状況から、業務起因性、および業務遂行性が認められるかどうかを判断することになります。具体的な要件を確認してみましょう。

なお、こちらでご紹介しているのは、あくまで一般的な判断基準となります。以下の要件に当てはまるからといって、必ずしも労災として認められるというわけではありません。実際の業務災害については、個別具体的な事情を勘案した上で労働基準監督署が判断することとなりますのでご注意ください。

1.事業主の支配・管理下で業務に従事している場合

■作業中である場合
 作業中に発生した災害は、原則として業務災害と認められるが、業務逸脱行為や私的行為、天災地変による場合、通常は業務起因性が認められない。ただし、天災地変による災害であっても、伐採事業に従事していた労働者が、強風による倒木で負傷した場合など、災害を被りやすい事情があり、業務に伴う危険が現実化して発生したものと認められる場合は、業務起因性が認められる場合がある。

■作業に伴う必要行為または合理的行為中である場合
 厳密には、担当業務とは言いきれない場合であっても、以下に当てはまる場合には、業務起因性が認められる。過去には、自動車修理担当者が、運転手不在の日に、修理後の車を自ら試運転した際に発生した事故は、業務災害として認められた例がある。

  • 労働者の担当業務の遂行のために必要な行為
  • その業務を担当する者の行動として合理的な行為
  • 業務行為の過程で通常ありがちな些細な行為

■緊急業務中である場合
 事業場の突発事故や火災などに伴う、緊急業務中の事故は、事業主の命令によるものや、その事業の労働者として当然に期待される行為である限り、一般に業務起因性が認められる。

2.事業主の支配・管理下にあるが、業務に従事していない場合

■作業の中断中である場合
 作業の合間の業務に付随する行為として、作業からの離脱はなかったとみられる場合は、その行為中の災害については、業務起因性が認められる可能性が高い。

  • 生理的行為(水を飲む、トイレに行く、等)
  • 反射的行為(風で飛ばされた帽子をとっさに拾おうとする等)

■作業に伴う準備行為または後始末行為中である場合
 次の場合は業務行為の延長と見られるため、一般的には、業務起因性ありと判断される。

  • 準備行為(機械器具や作業場所の整備、制服への着替え等)
  • 後始末行為(機械器具の収納、作業場所の整理整頓等)

■休憩時間中である場合
 休憩時間中は、個々の労働者の行為は私的行為であるので、通常、業務起因性は認められないが、事業施設という事業主の管理下において、施設等が原因で災害が発生した場合には、業務災害として認められる場合がある。

3.事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合

■出張中である場合
 移動中を含め出張過程全般について、事業主の支配下にあると考えられるため、私的行為でない限り、一般的には業務起因性が認められる。

■通勤途上である場合
 通勤途中は、一般的には業務起因性は認められない(ただし、通勤災害の要件に該当すれば、通勤災害として労災保険の給付を受けることはできる)。なお、会社が提供している通勤専用バスの利用に起因する災害等については、事業主の管理下にあると考えられるため、業務起因性が認められるため、業務災害となる。

4.その他特殊な状況による場合

■他人の故意による災害である場合
 労働者が個人的なうらみなどにより、第三者から暴行を受けて被災した場合には、業務災害とはならないが、加害行為が明らかに業務に関連している場合には、それぞれの具体的事情を考慮した上で業務起因性ありと認められる場合がある。

■自己の故意による災害である場合
 労働者自身が故意に災害を発生させた場合は、原則として業務災害と認められない。

【業務上の疾病】

業務上の疾病は、業務上のアクシデントによる災害性の疾病、じん肺等の職業性の疾病、その他業務に起因することが明らかな疾病、の3つに分けられます。
 その他業務に起因することが明らかな疾病とは、脳血管疾患、および虚血性心疾患等や精神障害等を指します(これらの疾病が原因で、いわゆる過労死、過労自殺、うつ等に至る場合もあります)。
 これらの疾病は、長時間労働や過剰なストレスといった身体的、精神的な過重労働により引き起こされる場合があるため、業務に起因することが明らかな場合は、業務災害として認められます。

【よくある質問】

Q.労災保険を使うと、会社が負担する保険料は上がるのでしょうか?
A.労災保険料は、従業員に支払った賃金総額に、事業の種類ごとに定められている労災保険料率を掛けることで算出されますので、労災保険を使用することによって、翌年度の保険料が上がる、ということはありません。ただし、労働保険徴収法に規定する「労災保険のメリット制」の適用を受けている場合には、支払った保険料と受け取った保険給付の額の割合である収支率によって保険料が引き下げ、または引き上げられることとなります。

【問い合わせ先】

業務災害に関する詳しい内容につきましては、下記にお問い合わせください。

厚生労働省 労働基準監督署案内(労災課)

厚生労働省 労災保険給付関係請求書等ダウンロード

厚生労働省 労災保険指定医療機関検索

掲載日:2013年11月26日
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