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起業ノウハウ
労働時間管理:みなし労働時間制
社外での勤務が多い営業部門に最適な労働時間管理の方法を教えてください。
みなし労働時間制をご紹介します。中でも、事業場外みなし労働時間制は、会社の外で就業する場合が多く、労働時間の算定が困難な記者や営業職等を想定した労働時間管理制度です。
女性

解説者

特定社会保険労務士 岩野麻子(いわの・あさこ)
勤務時代から、350社の中小企業に対する労務コンサルティング業務に従事し、企業内人事部では、従業員約3,000人をサポートした経験を持つ。現在は独立開業し、就業規則の作成や助成金の申請等を行なっている。

目次

解説

【みなし労働時間制とは】

みなし労働時間制は、労働時間の算定が困難な業務等について、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めておいた時間労働したものとみなす労働時間管理制度です。
 みなし労働時間制には、以下の3種類があります。

<みなし労働時間制の種類>

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今回は、上記のうち、「事業場外みなし労働時間制」に関する基礎知識と運用時のポイントについてご説明します。
(他の2種類の裁量労働制については、次回のコラムでご説明します。)

【事業場外みなし労働時間制とは】

事業場外みなし労働時間制は、かつての労働基準法施行規則 第22条で、その前身となる制度が規定されていましたが、労働基準法そのものには、事業場外労働に関する規定は定められていませんでした。しかしながら、憲法 第27条2項に「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」とあることから、労働基準法そのものに何の規定も無いまま労働時間管理についての例外を設けることに疑義があったのも事実です。また、以前は労働時間管理が比較的シンプルな製造業等の業種が時代の中心でしたが、その後の産業構造の変化により、サービス業が増加するとともに労働時間管理は複雑化していきました。
 そこで、昭和62(1987)年の労働基準法改正時に、出張や記事の取材に加え営業や顧客サービスなどといった事業場外での業務を遂行するために、使用者の具体的指揮監督が及ばず労働時間算定が困難な業務に対する時間管理制度として、事業場外みなし労働時間制(以下「事業場外労働」と呼びます)が新設されました。

【事業場外労働のポイント】

事業場外労働について、労働基準法 第38条の2では以下のように定めています。
 「労働者が労働時間の全部又は一部について、事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、(省略)業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。」

事業場外労働の制度の対象となるのは、以下の要件全てに当てはまるときです。

  • 事業場外で業務に従事していること
  • 使用者の具体的な指揮命令が及ばないこと
  • 労働時間の算定が困難であること

一方、以下の場合には、みなし労働時間制の適用はありません。

  • 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
  • 事業場外で業務に従事するが、情報通信機器で随時使用者の指示を受けながら労働している場合
  • 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後事業場に戻る場合

なお、1日の労働時間の一部について事業場外で業務に従事する場合は、事業場内で実際に勤務した時間に加え、事業場外での勤務に通常必要とされる時間、労働したものとみなされます。例えば、午前中は、事務作業のため事業場内で勤務し、午後は営業活動のため事業場外で勤務した場合は、その日については事業場内で勤務した時間も含めて、原則として、所定労働時間勤務したものとみなされます。

・労使協定の締結
 事業場外労働を導入する場合は、まずは労使協定の締結が必要です。協定で定める時間が法定労働時間(原則として1日8時間)以下なら労働基準監督署への届け出は不要ですが、法定労働時間を超える時間数を定める場合は、届け出が必要となります。
 また、この届出は、労働基準法 第36条で定める時間外・休日労働に関する労使協定(いわゆる36協定)に付記して届け出ることもできます。

・深夜、休日割増賃金の取り扱い
 みなし労働時間制を採用する場合であっても、労働者が午後10時~翌午前5時までの深夜時間に勤務した場合には、深夜割増賃金の支払いが必要となります。また、法定休日に勤務した場合も同様に、休日割増賃金の支払いが必要となります。

万が一、深夜・休日に勤務させたくない場合は、深夜・休日に勤務する場合は、あらかじめ会社に届け出ることにする等、一定のルールを作っておくと良いでしょう。

・休憩の取り扱い
 みなし労働時間制を採用する場合でも、使用者は労働者が必要な休憩を取れるようにしなければなりません。そのため、労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩を労働時間の途中に与えなければなりません。休憩は所定の時間を決めるなどして、取得しやすいようにしておきましょう。

【よくある質問】

Q.当社には、在宅勤務者がいますが、その者にも事業場外労働を適用することはできますか?
A.労働者が自宅において業務に従事する在宅勤務は、育児や介護の両立や企業の経費削減などの観点からも注目され、近年増加しているとともに、労働時間管理が困難な勤務形態であると言えます。
 まずは、この労働者との関係が業務委託契約等ではなく雇用関係にあることが大前提ですが、変形労働時間制やフレックスタイム制がなじまず、「私生活を営む自宅で行なわれること」「情報通信機器が常時通信可能な状態に置くこととされていないこと」「業務が使用者の具体的な指示に基づいていないこと」の全てを満たし、労働時間の把握が困難であると判断される場合は、事業場外労働の制度を適用することが可能です。
 また、在宅勤務者の理解を得ることも重要です。労働者本人への説明や就業規則の整備等も併せて行ないましょう。

掲載日:2013年9月12日
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