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起業ノウハウ
安全衛生管理:安全管理の基礎知識
当社では、数カ月前に起きた労災事故がきっかけで、先日、安全衛生課の労働基準監督官が事業所に来訪し、調査が実施されました。その後、監督官より「指導書」が交付され、いくつかの作業手順等について労働基準監督署に改善状況を報告することとなりました。今後の注意点とアドバイスをお願いします。
安全管理の基礎知識と安全な職場環境を作るポイントについてご説明します。
女性

解説者

社会保険労務士 岩野麻子(いわの・あさこ)
勤務時代から、350社の中小企業に対する労務コンサルティング業務に従事し、企業内人事部では、従業員約3,000人をサポートした経験を持つ。現在は独立開業し、就業規則の作成や助成金の申請等を行なっている。

目次

解説

【労働災害の発生状況】

「安全管理」や「労働災害」といった言葉を聞くと、大きな工場や建設現場を思い浮かべてしまいますが、実際の労働災害は、小規模なサービス業や事務系の職種においても数多く発生しています。厚生労働省「平成23年における労働災害発生状況(確定)」によると、平成23年の業種別・業務上「死傷災害の構成割合」は、その他(サービス業、事務系職種等)が48,638人(全産業に占める割合42.6%)とトップで、次いで製造業が24,395人(同21.4%)、建設業が22,675人(同19.9%)となっています。

また、厚生労働省「平成23年度労働災害動向調査」によると、事業所規模が100~1,000人の会社では、災害発生の頻度および災害の重さの程度は、事業所規模が小さいほど高くなるという傾向が見られます。安全管理は、サービス業等の事業所や、規模の小さい事業所においては、とくに喫緊の課題であると言えます。

【安全管理者とは】

「安全管理者」とは、労働者の危険を防止するための措置に関すること等、事業場等の安全に係る技術的事項の管理を行なう者であり、常時50人以上の労働者を使用する特定の業種については、その選任が義務付けられています(労働安全衛生法第11条)。

ここで言う「安全に係る技術的事項の管理」とは、必ずしも専門的技術的な事項に限らず、「作業場等を巡視し、設備、作業方法等に危険のおそれがあるときは、ただちに、その危険を防止するため必要な措置を講じる」といった広い事項までもが含まれます。事業者(会社)は、この安全に関する措置をなしうる権限を、安全管理者に付与することとされています。

安全管理者の重要な職務の一つである「事業場内の巡視」では、職場の設備はもちろんのこと、以下のような作業手順についても危険な状態が無いかを確認し、必要に応じて危険防止措置を講じます。

<事業場内を巡視する際のチェック項目(例)>

  • 重い物を持ち上げる作業がある場合は、安全な手順を守っているか (例えば、中腰や前かがみの姿勢、足場が不安定である場合は腰痛や怪我を誘発しやすい)
  • 高い所にある荷物を降ろす作業がある場合は、安全な手順を守っているか (例えば、回転式の椅子を踏み台代わりに使用すれば、椅子が回転し転落のおそれがある)
  • 室内の照明、気温、湿度、換気は十分か
  • ほぼ一日中パソコンに向かう作業がある場合は、グレア(反射、まぶしさ等)防止の対策をしているか、適宜、休止時間を設けているか
  • フォークリフトを使用する事業所においては、運転者のヘルメット着用や免許取得者による運転、その他安全運転ができているか
  • 軍手着用が義務付けられている作業では、軍手が着用されているか 等

※安全管理者選任の要件等については、コラム・インタビュー/こんなときどうする?「安全衛生管理:安全衛生管理体制の整備」内の「安全衛生管理体制一覧表」でも説明していますので、併せてご参照ください。

【安全管理者の職務】

安全管理者は、主に次の業務を行なうこととされています。
(1)建設物、設備、作業場所または作業方法に危険がある場合における応急措置または適切な防止措置
(2)安全措置、保護具その他危険防止のための設備・器具の定期的点検
(3)作業の安全についての教育および訓練
(4)発生した災害原因の調査および対策の検討
(5)消防および避難の訓練
(6)作業主任者その他安全に関する補助者の監督
(7)安全に関する資料の作成、収集および重要事項の記録 等

【安全管理者になるためには】

安全管理者は次のいずれかに該当する者で、「安全に係る技術的事項を管理するのに必要な知識についての研修であって厚生労働大臣が定めるもの(以下、安全管理者選任時研修)」の修了者の中から選任しなければならないとされています。

(1)大学または高等専門学校における理科系統の正規課程を修めて卒業した者で、その後2年以上、産業安全の実務に従事した経験を有する者
(2)高等学校または中等教育学校において理科系統の正規課程を修め卒業した者で、その後4年以上、産業安全の実務に従事した経験を有する者
(3)その他、厚生労働大臣の定める者

上記の他、労働安全コンサルタント等の資格を有する者も安全管理者となることができます。

安全管理者選任時研修は、いくつかの団体が一定の時期に行なっていますので、事業所の近くで実施されている研修を見つけ、参加するのが良いでしょう。研修が修了したら、労働基準監督署に「安全管理者選任報告」を提出します。その際、研修の修了証の写しを添付し、この届出をもって、安全管理者選任の届出が完了します。

【労使双方の努力と協力体制がカギ】

労働安全衛生法第3条では、事業者(会社)の責務として「単に法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない」と定められています。業種や規模によっても、職場環境は大きく異なるため、法律で画一的な基準を設けるだけでは限界があります。そのため、経営者が主体となって、快適に職務を遂行できる環境を作り上げていくことが求められています。

一方、同法第4条では、「労働者は、労働災害を防止するため、必要な事項を守るほか、事業者その他の関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するよう努めなければならない」とも規定されています。会社が安全に関する教育を行なうことにより、労働者自身、危険を想定した行動ができるようになります。労働者自身にも、作業手順など一定のルールを守る等、労働災害を減らすための努力が求められます。会社と労働者の双方が、安全に対する高い意識を持って日々の業務に取り組むことが不可欠であるといえます。

【よくある質問】

Q.従業員数名ほどの会社ですが、安全管理はまだ必要ないでしょうか?
  A.労働安全衛生法は、労働災害防止のための最低基準です。従業員を1人でも雇ったときから、労災事故が発生するリスクは生まれるため、作業手順や職場環境に意識を向けるなど、安全衛生管理体制の土台作りから始めてみてはいかがでしょうか。

なお、パート等を含め従業員数10名以上50名未満の事業場においては、「安全衛生推進者」の選任が義務付けられています。詳しくは、コラム・インタビュー/こんなときどうする?「安全衛生管理:安全衛生管理体制の整備」内の「安全衛生管理体制一覧表」をご覧ください。

【問い合わせ先】

安全管理・労働統計の詳しい内容につきましては、下記をご参照ください。

掲載日:2012年10月25日
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