経営ノウハウ

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転勤の留意点について
先日、大阪の経理責任者が突然退職してしまいました。そこで、東京本社の経理担当者を大阪に転勤させようと打診したところ、強く難色を示されてしまいました。このような場合、会社として強制的に転勤を命じることはできるのでしょうか。また、注意すべき点などあれば教えてください。(東京都 T社社長)
就業規則等に「転勤があり得る」旨の規定があれば、原則としてその社員の同意がなくても転勤をさせることは可能。ただし、個々の事情への配慮は必要です。
男性

解説者

社会保険労務士 富岡 英紀(とみおか・ひでき)
経営・労務に関するコンサルティングのほか、ベンチャー企業への助成金コンサルティングや就業規則によるリスクヘッジなど付加価値の高いサービスにとくに力を入れている。
社会保険労務士 加藤美香(かとう・みか)
就業規則作成、人事制度(賃金・評価・退職金制度)設計、社員教育などを通じて、企業の労務トラブルの防止や組織活性化の支援に取り組んでいる。

目次

解説

就業規則や労働協約に「転勤を命じることがある」旨規定されており、その社員との間に勤務地や職種を限定する契約が結ばれていない場合には、原則として、転勤を命じることができます。ただし、もしそのような規定がない場合には、個別同意なしに転勤させることはできません。

なお、規定がある場合でも、会社が転勤の権利を濫用することは許されていません。転勤をさせる場合には、次の基準をクリアしている必要があります。

(1)業務上の必要性があること
  (2)人選が妥当であること
  (3)転勤の命令に不当な動機や目的がないこと
  (4)通常受け入れられる程度を著しく越える不利益を負わせるものではないこと

今回のケース、就業規則等に規定が設けられているとして、特に注意が必要なのは(4)です。転勤による影響を十分考慮して、慎重に話を進めることが重要です。具体的には、「家族の中に障害者や高齢者等がいて、自ら介護や世話をしなければならない」「幼い子供の養育のため転勤できない」といった事情があれば、それに配慮する必要があるでしょう。

もし、転勤するのが困難な事情を抱えている場合には、それを緩和する措置を講じることも検討しなくてはなりません。例えば、介護ヘルパーやベビーシッターの費用を補助する等。しかし、そうした措置を講じても難しい場合には、別の社員を検討することも必要です。まずは、その社員が転勤を拒む理由を親身になって聴いたうえで、慎重に対応することが大事です。特別な理由がなければ、業務上の必要性や会社の状況を十分に説明し、合意を得るようにします。

最後に。これを機会に、就業規則等に転勤の条文が適切に設けられているかを点検・整備しておきましょう。転勤があり得ることを普段から社員に意識づけするためにも、転勤に関する規程を設けたり、入社時の誓約書に盛り込んだりすることが大事です。

【資料1】「就業規則」「転勤に関する規程」の条文例(PDF:9KB)
【資料2】誓約書例(PDF:6KB)

掲載日:2011年4月12日
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