経営ノウハウ

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退職後の研修費用の返還請求について
当社では、社員に対して業務に役立つ資格の取得を奨励しており、試験のための研修費用等を会社で全額負担しています。つい最近、資格を取得した直後に辞めてしまった社員がおり、研修費用に関して何らかのルールが必要だと思いました。具体的には、研修後に一定期間勤務することを義務づけ、途中で辞めた場合には研修費用を返還してもらうといった契約を結ぶことですが、法的に問題ないでしょうか。(静岡県 G社社長)
研修終了後の退職に対して、違約金や損害賠償を予定することは禁止されています。研修費用の貸し付け・立て替えを検討してみましょう。
男性

解説者

社会保険労務士 富岡 英紀(とみおか・ひでき)
経営・労務に関するコンサルティングのほか、ベンチャー企業への助成金コンサルティングや就業規則によるリスクヘッジなど付加価値の高いサービスにとくに力を入れている。
社会保険労務士 加藤美香(かとう・みか)
労働基準監督署労働条件相談員、労働時間短縮アドバイザー、就業規則普及指導員等公的業務の経験を生かし、企業への人事労務コンサルティングに力を入れている。

目次

解説

労働基準法では、労働者の退職の自由を束縛することがないよう、「労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と規定しています。したがって、資格取得直後に退職したことを理由に、研修費用を返還してもらう契約には問題があります。
 そこで、代替案として検討したいのが研修費用の貸し付け・立て替えです。貸し付け金や立て替え金に関しては、以下の条件をクリアすれば、一定期間の勤務後に研修費用の返還が免除される契約を結ぶことが認められています。

1.自由意思で参加する研修であること

2.研修費用を返還すればいつでも退職できること

3.研修費用の金額が合理的であること

4.研修費用免除までの勤務が不当に長くないこと等

研修費用の貸し付け・立て替え制度を導入する場合には、これらの条件以外にも、退職時に返還してもらう研修費用の範囲や方法についても具体的に規定しておくこと、制度の利用時に申請書を取りつけ、自由意思であることを明確にしておくこと等が大事です。

なお、業務に不可欠な研修で、参加が業務命令である場合には、その費用は会社が全額負担すべきものとなりますのでご注意ください(この場合、「キャリア形成促進助成金」をはじめとする公的制度を活用することで負担の軽減を図れる場合があります)。

【資料1】研修費用の返還に関する裁判例(PDFファイル:8KB)
【資料2】キャリア形成促進助成金について(PDFファイル:10KB)

掲載日:2010年4月13日