トップページ  >  起業する  >  コラム・インタビュー  >  起業ノウハウ  >  IPOをめざす若者に伝えたい5つのテーマ

起業ノウハウ
IPOをめざす若者に伝えたい5つのテーマ
公認会計士 大山 文夫氏 これから起業する人も含めてIPO(株式上場)をめざす若者たちは、まず何を認識しておくべきなのだろうか。長年にわたってIPOを指導してきた大山文夫氏が、5つのテーマを解説。IPOブームの浮沈などに左右されず、確固たる経営基盤を確立しよう!

優成コンサルティング社長
公認会計士 大山 文夫

2007年は株式上場苦難の年でした。新興企業の業績下方修正、粉飾問題そして新興市場の株価低迷。いままで株式上場したいと思っていた会社の社長 もトーンダウンしているケースが多くなっています。本当にそうでしょうか? 私にはかえって株式上場の魅力は増しているように思います。これをいろいろな 面から探ってみましょう。

目次

新興市場の低迷のなかで、どんな企業が評価されるのか

1.新興市場の株価の下落

20070911_001.png

新 興市場の代表格であるマザーズ市場の指数、マザーズ指数※(2003年9月12日を1,000)は2004年5〜6月、2000年12月に2,500ポイ ントを越えたあと下落を続け、2007年9月18日620.42ポイント(現在〜2007年10月19日は902.03ポイントまで回復)にまでなりまし た。これが企業の株式上場の意欲を減退させているといわれています。

※マザーズ指数:2003年9月より導入された東証マザーズ市場全体の値動きを表わす株価指数のこと。東証株価指数(TOPIX)等と同様に時価総額加重型の株価指数で、資産としての株式の価値の変動を示す。

この間に東京証券取引所一部の指標であるTOPIXは2003年の1,000ポイント近辺から、2007年6月には1,750ポイント超まで上昇しています。

2.マザーズ上場会社数の減少

現実にもマザーズ上場会社数は、2004年には56社にまで増加した上場会社数が、2005年37社、2006年41社、2007年は30社未満(11月20日まで21社予定)と低迷を続けています。

3.新興市場低迷の原因

管理体制の不備に伴うライブドアやIXIなど数々の粉飾、業績下方修正、グッドウィルなどに見られるコンプライアンス体制の不備などが市場(投資家)の不振を招き株価の低迷につながっているものと考えます。

ただし今後は経営力・管理体制・コンプライアンス体制のすぐれた企業とそうでない企業の選別が進み、すぐれた企業には正当な評価が下される時期が近 づいていると考えますので、ぜひ、その企業になっていただきたいと考えます(2007年9月から10月までにマザーズ指数が50%上昇した企業にはそのよ うな例がいくつか含まれています)。

株式上場の意味を正確に認識する

1.成長のための戦略の一手段である

「あなたの会社の目標は」と聞くと、「株式を上場することです」と答える経営者がいます。これは手段と目標を間違えています。これでは株式上場をしたあとの会社の存在意義がなくなってしまいます。

会社の目標はたとえば「介護者に豊かな環境を提供し、そこで働く従業員、地域社会にも満足を与える」などであり、株式上場はそのための手段でしかありません。つまり会社の目標を達成するため、株式上場はこの達成を促進したり、この達成の確実性を増すためのものなのです。

2.キャピタルゲインは結果としてついてくる(資本政策が大事)

日本の税制(給与所得に対する最高税率50%、消費税5%など)のもとでは資産を形成する手段としては株式上場を行ない、その際に株式を売り出すこ とが(株式譲渡所得に対する税率は20%、上場株式の場合には平成20年12月末までの譲渡であれば10%)、もっとも有利な方法といえましょう。

ただし上場時の売り出し価格を無理に高くしたためにその後の株価の下落を招き、経営者・会社がその後の対応に苦慮するケースの何と多いことか。せっ かく上場しても会社およびその経営者の品格を落とすこともありうるのです。もっとも会社および社長にとって望ましい上場とは、上場後業績も、株価もその会 社のペースにあった上昇を着実に続けることだと思います。

会社によっては50%がフィットするケースもありうるし、5%がよいケースもあります。要は会社のペースを株主や社員に理解してもらい、そのペース を守ることだと思います。結果として社長にも、社長以外の役員にも、社員にも一般の株主にも大きなキャピタルゲインが生まれ、会社も、社長も社会から尊 重、尊敬される存在でいられるはずです。

したがって上場前(できれば創業直後からの)、上場後の事業計画と資本政策、これを支える経営理念、経営戦略・目標が大事ということになります。

上場のメリット・デメリットを再度検討する

1.メリット

  • 上場前と上場後の資金調達の多様化(財務体質の強化)
    間接金融は本来設備投資や運転資金のためのものであり、リスクに応じた金利が付されるべきものと考えます。一方、直接金融は研究開発やリスクの大きな事業 に対してのものです。上場をめざし、上場を達成すること、あるいはその過程でこの両方の資金調達手段を手に入れることは経営に大きな選択枝をもたらします (それだけにCFOの役割はとても大事です)。
  • 社会的な信用の増大
    知名度・信用度が増すことにより、ビジネスチャンスが大きくなります。いままでこちらから探さなくてはいけなかったビジネスの話がどんどん舞い込んできま す。ビジネスを開始する際に、与信が取れずに契約が結べないこともあまりなくなります。ビルに入居するさいの審査も通りやすくなります。
     さらには、よい人材の採用のチャンスが広がります。上場後採用の応募人数が数十倍、数百倍になったという話も多くあります。
     ただし最近は応募者の目も肥えてきています。経営力・管理体制・コンプライアンスの不十分な会社はすぐ見抜かれます。ここでも選ばれる会社になってもらいたいものです。
  • 社長の個人保証の解除
    上場する過程で、借入金に対して社長が負っていた個人保証を解除する必要が生じます。これは社長個人に会社経営が依存していてはいけないという上場審査上の要請によるものです。あまり強調はされませんが、社長にとっては大きなメリットでしょう。

2.デメリット

  • 開示(ディスクロージャー)義務
    上場しなければ(税務署や銀行などには提出義務はありますが)株主以外には決算書を開示する義務はありません。さらに株主が身内だけであれば会社法にもとづく決算書すら作成していないケースもあります。
     ところが上場後は潜在的な株主に向けて年度だけでなく四半期で決算書を作成し、開示しなければなりません。ただ正確でタイムリーな経営数値の把握は、結果的に会社にとっても社長にとってもメリットなはずです。
  • 会社の私物化が不可となる
    社外に対して経営数値を公表し、かつ外部監査を受けることにもなるため、会社の私物化はできなくなります。そもそも会社を私物化しているようであれば、信用も人材も逃げていくでしょうから、上場しても、よい結果にはならないはずです。
  • 株主対策の必要性
    敵対的買収に備えたり、反社会的勢力に備えたりする必要性が生じます。もっとも資本政策をしっかり準備し、コンプライアンス体制を整備することによって対応は可能です。

日本版SOX法について

平成21年3月より日本版SOX法の導入が予定されています。これは、不祥事防止のために会計監査など内部統制機能の強化を促す法律です。米国では 大企業中心に導入されているSOXが形を変えて、日本の上場会社すべてへの導入が検討されています。この仕組みの導入があるために上場をためらっている会 社もあるようです。

ただある意味で、コンプライアンス体制の一種であり、会社として必要な内部統制の仕組みを備えるためのものですから上場企業としては、あるいは上場 をめざす企業としては必須な事項といえます。守りがしっかりしていなければ思い切って攻められません(ただし小さな組織の企業には規模に対応した仕組みが あります。審査側、指導側には再考が求められるでしょう)。

上場という制度を使って社会に貢献してほしい

日本においては少子化、財政問題、世界的には環境問題・南北問題など課題がたくさんあります。GNP世界第2位の日本としては内外でこの課題に対応 する必要があります。ちょっと大きな話ですが、結果としてよい上場を達成した会社・社長にはこの課題の解決に貢献してもらいたいと希望します。


掲載日:2007年12月25日

  • googleplus
  • hatena
  • pocket
  • line
  • evernote
Copyright © WizBiz Inc.
このコンテンツの著作権は、WizBiz株式会社に帰属します。著作権の承諾なしに、無断で転用することはできません。
このページの先頭へ
起業するコンテンツ一覧
  • 事業計画作りや実際の起業準備そして開業まで。起業を目指す人の『こんな時どうする?』に応えます。

  • 法律知識や経営診断など、起業準備段階はもちろん、実際に起業・開業してからも使える豊富な情報を掲載。

  • 『国の補助金を活用して創業するには?』についてご説明します。

  • 中小企業や個人投資家にとってのメリットを、その仕組みや優遇措置について詳しくご紹介します。

  • 起業・開業を考えている職種の消費者利用動向がすぐにわかる、職種別データ一覧。

  • 200以上の業種・職種から選べる開業準備手引き書。

  • 最新のビジネストレンドや中小企業が直面する経営課題など、読み物コンテンツをまとめています。

  • 若手起業家にインタビュ—。「社会人起業」と「学生起業」それぞれの選択を対比しながら起業のカタチを探ります。