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業界レポート
数字が語るこの市場の深層【ドラッグストア市場】

少子化による人口減少で国内市場規模が縮小する中にあっても、高齢化による医薬品小売のニーズは上昇している。医薬品から化粧品、一般飲料まで幅広く取り扱うドラッグストア業界も過去10年で2倍を超える成長を見せてきた。しかし近年は、薬事法改正で大衆薬(一般用医薬品)がコンビニやスーパーでも販売されるようになり、さらにインターネット通販という新たな競合についても、厚生労働省が設けていた規制を最高裁が違憲とする判決が1月に下されるなど、不透明感も漂う。

目次

売上高はうなぎ上り

そもそもドラッグストアとは、どういう業態の店舗をさすのか?英語を直訳すれば「薬を売るお店」ではあるが、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)では、「医薬品と化粧品、そして、日用家庭用品、文房具、フィルム、食品等の日用雑貨を取扱う小売店」と定義している。幅広い商品を取り揃える業態は、アメリカが発祥の地。広い国土ではワンストップで多様な買い物のできる利便性が支持された。

日本では戦後、セガミ製薬所(現セガミメディクス)やコクミン薬局などがチェーン店の草分けとなり、1970年代からアメリカ流のチェーン店が本格展開された。国内ドラッグストアの市場規模は、2001年に3兆円を突破(グラフ1)。その後7年で5兆円台に達し、市場全体のパイは広がった。

グラフ1:日本のドラッグストア総売上高推移(単位:億円/年)グラフ1:日本のドラッグストア総売上高推移(単位:億円/年)

店舗数の増え方にみる業界の足踏み

店舗数も市場拡大と同様に増加傾向だが、2005年度以降、企業数が減っている点に注目したい(グラフ2)。2007年、スギホールディングスが飯塚薬品を子会社化。その2年後にはマツモトキヨシホールディングスがミドリ薬品など2社を子会社化するなど業界再編が進んでいるのだ。

グラフ2:日本のドラッグストア企業数と店舗数推移グラフ2:日本のドラッグストア企業数と店舗数推移

ドラッグストア業界は、拡大の一途をたどっている反面、厳しい競争にもさらされている。2009年、薬事法の改正で医薬品販売の規制が緩和され、風邪薬や胃腸薬といった、医師の処方箋が要らない大衆薬がコンビニ、スーパーでも販売されるようになった。業界再編が進む背景には、店舗の大型化・集約化を進めることでコンビニやスーパーとの競争に生き残り、今後の人口減少社会に備える、という切迫した事情がある。

医薬品小売業の市場規模

なお、景気低迷が長引いたにもかかわらず、医薬品のニーズは増える傾向にある。1世帯あたりの医薬品への年間支出金額(総世帯平均)は2007年まで減少傾向が続いていたが、リーマンショック後の2009年は2万1,439円と前年から3,000円近くもアップした(グラフ3)。2010年は2万4,586円とさらに上昇した。

グラフ3:家計1世帯あたりの医薬品への消費支出額推移(総世帯平均、単位:円/年)グラフ3:家計1世帯あたりの医薬品への消費支出額推移(総世帯平均、単位:円/年)

また、国民の医療費は昨年37兆円(厚生労働省調査)に達し、4年連続で過去最高を更新するなど、高齢化で右肩上がりの一方だ。そうした社会環境を背景に、病院に通わないまでも、ドラッグストアやコンビニで大衆薬を求める動きは今後も高まりそうだ。

大衆薬ネット販売、最高裁判決の"衝撃"

コンビニとの競争に加え、ドラッグストア業界が新たに脅威を感じているのがインターネット企業の参入だ。2009年の薬事法改正に先立ち、厚生労働省が省令で大衆薬のネット販売を禁止。これにより、ドラッグストア業界にとっては競合がひとつ消えたはずだった。

しかし同年5月、ネットの医薬品販売事業者のケンコーコムとウェルネットが「一般用医薬品のネット販売規制は行き過ぎで、営業の自由を保障した憲法に違反する」と国を相手取って提訴。一審は両社の敗訴となったが、二審で逆転勝訴に。その後、最高裁まで持ち込まれたが、結局、2013年1月の判決で業者側勝訴が確定し、ケンコーコムは即日で通販を再開するなど再び動き出した。

実は、ネット販売が禁止されていた間も"市場"は伸びていた。インターネット通販(EC)市場での「医薬化粧品小売業」は2007年に1,410億円だったのが2011年には4,200億円にまで拡大した(グラフ4)。国の統計分類上、化粧品や食料品なども扱うドラッグストアのECサイトも含まれていた為だが、裏を返せば大衆薬抜きでもそれだけの数字を叩き出せたわけで、ネット通販へのニーズは確実に高まっていると言える。一般顧客が利用する「B to C」のEC市場については、2011年に8兆円規模に拡大。これは、ネット医薬品の販売が禁止される前の2008年度と比べても2兆円余りの成長で、EC市場全体のパイが大きく膨らんだことを意味している。

グラフ4:国内EC市場規模の推移(単位:億円/年)グラフ4:国内EC市場規模の推移(単位:億円/年)

出版業界や音楽業界などがEC市場の拡大で苦戦を強いられたように、リアル店舗を販路に抱える業態はEC市場拡大の中で苦戦を強いられている。最高裁の判決後、自民党内から新たなネット医薬品販売規制を模索する動きがあって事態は流動的だが、EC市場全体が拡大した中で医薬品の販売が解禁された場合、ドラッグストア業界のリアル店舗が更なる競争にさらされるのは間違いない。


掲載日:2013年3月28日

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