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業界レポート
数字が語るこの市場の深層【スープ市場】

簡単な調理で手軽に食べることができるカップスープ。そんなスープを口にするのは、忙しい主婦やサラリーマンにとって、今や日常的になった感がある。昨今のスープ市場の動向を探る。

目次

食費が削られても増え続けるスープの需要

お湯を注ぐだけですぐに食べられる粉末状の乾燥スープ、いわゆる"カップスープ"が人気である。

近年の不況で消費者が食品の購入を手控える中、スープの消費量は順調に伸びている(グラフ1)。

グラフ1:乾燥スープの1世帯当たりの年間支出額グラフ1:乾燥スープの1世帯当たりの年間支出額

家計調査によると、一世帯当たりの年間の食料消費支出額は、2000年の97万4000円から10年の88万5000円へとゆるやかに下降しているのがわかる。比べて、乾燥スープの支出額は、00年には2077円だったのが10年には2403円となり約15%伸びている。消費意欲が減少する中でも、乾燥スープの需要は確実に広がっているといえる。

日本では、近年、味噌汁だけでなく、ポタージュやコンソメスープなども食事の際、日常的に飲まれるようになった。また、少し前まで会社のオフィスでは、サラリーマンが飲む温かい飲み物といえばコーヒーが一般的だった。だが近年はカップスープを飲む若いサラリーマンやOLの姿が広く見られるようになった。

この背景には、素材の旨味や食感を残したまま乾燥させられるようになるなど、スープメーカーによる加工技術の進歩がある。市販のスープは、味や舌触りが向上し、種類も豊富になっている。

また、不況の影響も大きい。若いサラリーマンやOLを中心に、昼食時に外食するのをやめる傾向がある。会社のオフィスでお湯を注ぎ、お弁当とカップスープで食事を済ませることが珍しくなくなってきている。

冬場の定番飲料でコーヒーやココアに次ぐ

スープのような飲み物は、季節によって売れ筋が変わる。スープは"温かい飲み物"としてのイメージが強く、寒い季節に需要が特に高まる。冬場に好まれる温かい飲み物の代表として、コーヒーやココアと比較してみよう。

月別支出金額指数で見ると、年平均を100ポイントとする場合、冬場の11月から2月に160ポイント前後で推移するココアが最も消費されている。12月にはコーヒーもココアに迫るほど消費量が急激に伸びている。これらココアやコーヒーの伸び率には及ばないが、スープも10月から2月にかけての寒い時期に、100ポイントを超えて消費量を伸ばしており、ココアやコーヒーと同様の動きを見せているのがわかる(グラフ2)。これはスープが温かい飲み物の代表として認められた証拠といえる。

グラフ2:月別支出金額指数(2007年から2009年の平均)グラフ2:月別支出金額指数(2007年から2009年の平均)

近年、温かいスープは身体にやさしい飲み物として注目を集めている。とくに女性を中心に健康食として、冬場にスープを飲む習慣が根付いてきている。

冷え症になりやすい女性をターゲットにした生姜入りスープなど、性別や年齢の好みに合わせたスープも開発され、各メーカーによるラインナップの充実が、スープ全体の需要を底上げしている。

"温かい飲み物"として子どもからお年寄りまで

年齢別にココア、コーヒー、スープの支出金額をみると、コーヒーは年齢を追うごとに急激に支出額が増え、50~59歳の層の5800円をピークに減少に転じる。それに比べ、スープは29歳以下から70歳以上まで、すべての世代で2000~3000円前後を示している。支出金額ではコーヒーに及ばないものの、ココアと比べると圧倒的に消費量が多く、幅広い世代に好まれているのがわかる(グラフ3)。

グラフ3:世帯主の年齢別の支出金額(2009年の平均)グラフ3:世帯主の年齢別の支出金額(2009年の平均)

スープは、野菜や鳥、魚貝を煮詰めてつくるため栄養価が高く、子どもやひとり暮らしのお年寄りでも咀嚼(そしゃく)を心配せずに栄養を摂ることができる。こうした特長から、スープを飲むことで食事代わりにする人も増えている。食事代わりになる飲料という認識が消費者に受け入れられ、スープの役割はこれまで以上に高まっている。

ポタージュだけでなく世界のレシピへ種類が広がる

このように幅広い層での需要が増しているスープだが、その生産実績はどのように推移しているのだろうか。スープの種類別に、生産量と生産額の変化を見てみよう(表4)。

表4:スープ類の生産実績表4:スープ類の生産実績

乾燥スープの代表例として、ポタージュとコンソメスープがある。生産量で見ると、ポタージュは2002年に1万7727トンが生産されており、04年に2万973トンへと増産されたが、06年には1万8458トンへと微減している。コンソメスープも同様で、02年に9121トン生産されていたが、04年に1万404トンに増え、その後の06年には1万40トンへと微減している。

その結果、スープ全体の生産量は、02年の11万1552トン、04年の11万927トン、06年の11万4324トンと、ほぼ横ばいで推移。

その一方で、生産額で見ると、ポタージュは02年の約306億円から06年の345億円へと増加。コンソメも02年の約143億円から06年の157億円へと増加している。その上、ポタージュやコンソメ以外の"その他のスープ"の生産額は、02年の約366億円から04年には414億円へと増え、06年には542億円へとさらに増加している。

この結果、すべてのスープの生産額の合計は、02年の816億4800万円から06年には1045億7300万円へとなった。実に1000億円台に乗せる水準へと大きく生産額を伸ばしている。

この背景には、単価の高いスープが消費者に購入されている事実がある。近年、ふかひれスープやブイヤベースなど、一般的に飲まれるスープの種類が増えている。また、海外の珍しいスープへの需要も高まりつつある。たとえば韓国のサムゲタンやイタリアのミネストローネ、ロシアのボルシチ、スペインのガスパチョなどは身近なスープになっている。

こうした今まで日本人に知られていなかったスープも市販され、手軽に食べられるようになってきた。海外に行かないでも各国の珍しいスープを飲める楽しさが、スープの付加価値になっている。消費者の幅が広がったことで、スープ市場は不況の中でも消費が落ちない市場となっている。


掲載日:2012年8月21日

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