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業界レポート
数字が語るこの市場の深層【食品宅配市場】

店舗に行かなくても希望の食品が配達されるという利便性に近年注目を浴びている食品宅配市場を分析。特に生協宅配、ネットスーパーなどが躍進。超高齢化社会に向けた有望ビジネスとなる気配だ。

目次

売上規模は堅調に右肩上がり

家にいながら希望の食品が届く「食品宅配市場」が成長している。矢野経済研究所の調べによると、2010年度の食品宅配の総市場規模は、1兆6806億円(見込み:東日本大震災の影響は考慮せず)、前年度比104.0%増と堅調に推移している(グラフ1)。07年~11年(予測)の5年間を見ても、年々その売上高は伸び、15年まで継続的な市場拡大が予想されている。

グラフ1:食品宅配の総市場規模(売上高)の推移グラフ1:食品宅配の総市場規模(売上高)の推移

この背景には、昨今の不況の影響による外食離れに加え、惣菜(中食)も含めた家庭内調理による「内食回帰」の風潮が強まっていること、単身者世帯や共働き世帯の増加などが挙げられる。

高齢化や健康志向が進み、「食の安全や健康に気を配りたいけれど、足を運ぶのが大変。その点、宅配ならば手間も時間も省ける」という消費者心理が働いているようだ。

また、食品業界全体が店舗売上の低迷にあえぐ中、外食産業が食品宅配サービスに注力したことも大きな要因として考えられる。顧客の囲い込みを図る上で、消費者に直接的に働きかけ、希望の商品を手元に届けるという動きが強まっている。

市場は拡大も競争は激化

食品宅配市場と一口にいっても、さまざまな種類がある。近年、市場規模が著しく上向いているのが、「宅配配食サービス」「自然派食品宅配サービス」「コンビニ・ネットスーパー宅配」「生協宅配」だ(表2)。

表2:食品宅配のサービス種別による市場規模の推移表2:食品宅配のサービス種別による市場規模の推移

「その他」には、惣菜宅配、宅配ピザ、宅配寿司、牛乳宅配、外食チェーン・ファストフード宅配など、比較的以前からなじみある宅配が含まれる。これらは総じて横ばいか微減傾向にある。

食品の宅配はもともと、酒販店や牛乳販売店などによる、家庭向けの御用聞きビジネスとして定着してきた。それが、社会環境や消費者のライフスタイルの変化に伴い、サービス形態は多種多様に変化してきた。

全体で市場が拡大する一方で、参入企業の競合の様は激化している。たとえば、宅配寿司が宅配釜飯・宅配中華を、牛乳宅配がお菓子やお米を、生協宅配が在宅配食に参入するなど、業態のクロスオーバー化が進んでいる。

生協宅配は個別購入が拡大

分類の中で最も市場規模が大きく、伸び率が高いのが「生協宅配」だ。従来は同じ地域・同じマンションの居住者が班単位で共同購入する形だったが、近年は個別購入へと大きくシフトしている。

日本生活協同組合連合会によると、95年に300億円だった個別購入は、04年に6300億円まで拡大。さらに首都圏コープ事業連合によると、週平均の利用者における「個別配達」は94年度に3万7000人だったのが、04年度には47万人と、急増している。

また、04~08年の生協の経営統計を見ても、個配供給高は年々高まり、08年時点では共同購入配給高1兆6075億円のうち、個配供給高は8909億円で、共同購入全体に占める割合は55.4%に上っている(表3)。

表3:生協との共同購入供給高と個配供給高の推移表3:生協との共同購入供給高と個配供給高の推移

この背景には、主婦の就労者が増え、留守が多くなっていること、またライフスタイルの多様化によって組合員のニーズが一様ではなくなり、高齢者の家庭も増えたことなどがあるようだ。しかも、食の安全管理に対する厳しい姿勢、商品への信頼性が高いことも、伸びにつながっていると思われる。

注目著しいネットスーパー

食品スーパー・総合スーパーの経営が厳しく、低迷していると言われる中、大手スーパーやコンビニチェーンが有望ビジネスと見込んで力を注いでいるのが「コンビニ・ネットスーパー宅配」事業だ。

これはインターネットを利用した通信販売の一種だが、当日配送が可能であり、日常の必需品を店舗に買いに行くような感覚で購入できるのが特徴だ。

インターネットが普及し始めた95年頃に始まり、紆余曲折があったものの、06年頃にそれまで模索を続けてきた大手スーパーが、本格展開に踏み切ったことで一気に注目度が高まった。近年は大手スーパーのほぼすべてが参入し、首都圏以外にも展開エリアが拡大するとともに、地方スーパーの参入も増加している。

2010年度の同市場規模は、前年度比176.5%の632億円と、市場全体に占める構成比はまだ小さいものの、大幅に拡大している。

矢野経済研究所の調査(11年3月)によると、首都圏在住の30歳から59歳までの女性を対象に、ネットスーパー宅配の利用経験の有無を聞いた結果は、全体の26.0%が「利用経験がある」との回答だった(表4)。

表4:食品宅配市場に関する調査結果2011表4:食品宅配市場に関する調査結果2011

また、ネットスーパー宅配を利用する理由としては「重たいものを持つのが負担になるから」が最も多く、次に「掲載商品が一覧できて、店頭よりも商品選択がしやすいから」が続いている。

さらに、ネットスーパー宅配の利用経験者である360名に対し、今後の利用意向を聞いたところ、「今後は利用が増える」(47.8%)および「今後も利用状況は変わらない」(45.8%)という肯定的な意見の合計は93.6%に達している。

成長著しいコンビニ・ネットスーパー宅配市場だが、現物を見て購入したい層や、ネットでの購入に拒否反応を示す層も存在しているのも事実。今後は非利用経験者に、いかに認知度を向上させるかや、利用環境の向上が、ネットスーパーの裾野を広げる重要なポイントとなりそうだ。

また、企業が消費者に選ばれるための生命線である商品力の向上、配送システムの効率化、ユーザーのサポート体制などにより、消費者の好感度や口コミに結び付けることが、リピーター増の鍵となっていくだろう。


掲載日:2012年3月19日

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