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業界レポート
数字が語るこの市場の深層【即席めん市場】

安価で手軽な食品として人気のある即席めん。東日本大震災後、保存食として脚光を浴びたのは記憶に新しい。その人気は海外でも大きく広がっている。今なお"熱い"市場を分析してみた。

目次

主流は袋めんからカップめん

日本発祥のファストフードというと、インスタントラーメン(以下「即席めん」)が挙げられるだろう。1958年の「チキンラーメン」(日清食品)誕生以来、簡単・便利、経済的とあって多くの人に親しまれている。

社団法人日本即席食品工業協会によると(以下、数字はすべて同協会調べ)、2010年には国内で年間53.1億食が生産されている。内訳は袋めんが16億8844万食、カップめん34億7032万食、生タイプ1億4989万食。

日本での一人当たりの年間消費量は41.9食に上る。これは、1カ月に3~4回は食べている計算になる。即席めんの製造に用いる小麦の総使用量は33.2万トン。これはめん類全体のおよそ27%を占める。

安心して食べられる指標となるJAS製品の割合は78.6%で、1283銘柄(袋めん=253種、カップめん=1030種)が市場に出ている。即席めんは「ご当地ラーメン」も多く、大手食品メーカーだけでなく、全国の中小企業からも発売されている。

50数年の歴史の中で、最初は袋めんが主流だったが、近年はカップめんの成長が著しく、全体の66.1%にまで及んでいる。「1971年に初めてカップめん(カップヌードル/日清食品)が生産された年に、マクドナルドが日本で初出店した。食生活の変化が押し寄せてきた時代だった」と同協会の蓮尾秀俊事務局長は語る。

カップめん市場には、その後多くの企業が参画し拡大。89年には袋めんの生産数を逆転し、今でもその差は広がり続けている。

また、同協会の「即席めんの摂取・購入状況および意識調査」(2008年)によると、袋めんのよさは「調理時間が短い」「誰でもつくれる」「保存がきく」「価格が手頃」など幅広い理由に対し、カップ麺は「調理時間が短い」(82.5%)が断然トップで、次いで「どこでも食べられる」(45.3%)と続く。お湯を入れるだけという簡易さが現代のスピード感と生活パターンにマッチしたのだろう。

普段どちらをよく買うかの質問には「カップめん」(49.6%)、「袋めん」(28.6%)。年齢別にみると、若い層ほど「カップめん」支持派が多く、男性20代では68.1%に及ぶ。

近年は、大手量販店が即席めんをプライベートブランド(PB)として発売し定着している。一方メーカーでは、若者向けのカップめんとして、コンビニとの共同開発などにより特色のある商品に力を入れる傾向にある。

「袋めんは野菜などを添えて栄養のバランスが取りやすく、まとめ買いをする主婦層による購入が多いのですが、近年はベーシックなカップめんが量販店のPBとしてヒットしたようです。これにより新たな方向付け、ニーズの棲み分けがされたように思います」とは同協会の任田耕一専務理事だ。

実際に、主な購入場所として、袋めんはスーパー(95.7%)に集中、カップめんはスーパー(76.7%)かコンビニ(55.9%)と分散している。

震災後、保存食として需要増

ここ5年の即席めんの購入状況の推移を見ると(グラフ1)、リーマン・ショックがあった08年は小麦などの原料高の影響もあり、カップめんは100g110円前後、袋めんは同70円近くと、単価が5円から10円ほど値上がりした。景気低迷と割高感で、消費者の購入数量は落ち込んだが、それ以降は横ばい、あるいは微増傾向にある。

グラフ1:即席めん100g当たりの購入単価と購入数量グラフ1:即席めん100g当たりの購入単価と購入数量

東日本大震災があった11年の3月以降は、即席めんJAS格付数量は前年度を大きく上回る結果が出ている(グラフ2)。東日本大震災時に、即席めんは改めて保存食として価値が見直された。

グラフ2:即席めんJAS格付数量(総合計)グラフ2:即席めんJAS格付数量(総合計)

「少子高齢化が進む日本では、今後の市場は横ばいか微増の安定傾向が続くでしょう。ただし、災害時に備える保存性の高さに加え、塩分控え目など健康志向を打ち出し、高齢者をうまく取りこむことができれば、市場がまた盛り返すかもしれません」(任田氏)。

世界の需要は今後も伸びる

一方、世界に目を向けると、日本生まれの即席めんは世界各国に大きく広がっていることがわかる。1年間に全世界で消費量は953.9億食(10年)に及ぶ。

世界の総需要数トップ10を見ると、中国・香港、インドネシア、日本と続き、ベトナム、アメリカ、韓国、インドが続いている(表3)。

表3:即席めん世界総需要(2010年)表3:即席めん世界総需要(2010年)

一人当たりの年間消費量では韓国が約70食、インドネシア60食にも至っている。「今後はロシア、ブラジル、メキシコ、ナイジェリアなどの新興国、インド、ベトナムなどアジア各国で加速度的に伸びるでしょう」(任田氏)

日本が即席めんを輸出している国・地域の数は48カ国で、アジア諸国が全体の半数。だが、日本の年間輸出量は5980トン(約7000万食)に止とどまり、輸出実績は、総数量・金額ともに近年は伸びていない。輸出先ではアメリカがトップ。次いで香港、カナダ、オーストラリアと続く(表4)。

表4:日本の輸出先ベスト10表4:日本の輸出先ベスト10

「日本向け商品がそのまま外国に受け入れてもらえないのが食品業界の難しさです。各地域の食文化と融合し、現地の味覚に合った形で開発される場合がほとんど」(任田氏)。即席めんが流通している国には、既に加工方法は伝播しており、各国のメーカーがシェアを握っている。

「実は世界では、カップめんより割安な袋めんが主流。スープのある麺類を食べる文化がないところ、たとえばインドでは、焼きそばタイプの調理法で広まっています」(蓮尾氏)と世界は日本とはまた一味違った状況があるようだ。

各国に即席めんがさまざまな形で広がっていく現状は、日本人として誇らしいが、日本が世界に食い込んでいくためには、その国・地域を深く理解した上での商品開発といった地道なスタンスでのエリア戦略がポイントになりそうだ。


掲載日:2012年3月 1日

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