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業界レポート
数字が語るこの市場の深層【保育園・託児所市場】

少子化と言われながら、保育園・託児所の市場は拡大している。その背景に仕事を持つ主婦の増加がある。今後、働く女性を支援する動きや施設の民営化が進むことでさらに市場は膨らみそうだ。

目次

女性の社会進出により拡大

ここ数年、結婚・出産後に働き続ける女性が増えていると感じることはないだろうか。1986年に男女雇用機会均等法が施行され、職場環境が整備されると、女性の社会進出は定着していった。最近では出産後に育児休暇を経て、復職する女性も多くなっている。

子どもを持つ女性の就業が増えるに伴い、注目を集めるのが保育園・託児所市場だ。矢野経済研究所が発表する「保育園・託児所の市場に関する調査結果 2011」によると、2010年の市場規模は、前年度比7.1%増の4550億円(グラフ1)。06年以降、右肩上がりで推移している。

グラフ1:保育園・託児所市場規模の推移グラフ1:保育園・託児所市場規模の推移

市場が拡大する要素の一つとして、働く女性の増加が関係することは言うまでもない。総務省統計局の「労働力調査」を見ると、女性の就業率は微増傾向にある。10年の労働力人口総数に占める女性の割合は過去最高の42.0%(前年差0.1ポイント上昇)、3年連続で上昇している。

これまで、女性の就業率は育児期間にあたる25歳から44歳までの間で落ち込むM字カーブを描いていた。近年では、この間の落ち込みが小さくなり、カーブが緩やかになっている。

雇用形態の推移をみても、「25~29歳」「30~34歳」の両区分ともに、正規の職員・従業員、パート・アルバイト、その他の雇用者のいずれもが増加傾向にある(表2)。特にパート・アルバイトについては大きく上昇している。

表2:雇用形態の推移表2:雇用形態の推移

核家族化が進行する中で、経済環境の悪化によって、主婦も働きに出ざるを得ない状況にあり、子育てと仕事を両立させる女性が増えていることが見て取れる。

都市部でニーズが高い

では、保育所・託児所の状況はどうなっているのだろうか。

09年に厚生労働省が発表した「保育所定員数、利用児童数及び保育所数の推移」(グラフ3)を見ると、保育所定員は09年4月においては、前年より1万1000人増えて213万2000人となった。保育所利用児童(3歳未満児)の割合は21.7%で、前年より0.7%増。特に私立保育所の利用児童数が定員を上回り、定員充足率は103.0%となっている。

グラフ3:保育所定員数、利用児童数及び保育所数の推移グラフ3:保育所定員数、利用児童数及び保育所数の推移

また、保育所の利用児童数には地方と都市部の間で大きな開きがある。これは各地の待機児童数を見ると一目瞭然だ。

都市部の待機児童として、首都圏、近畿圏の7都府県(※埼玉、千葉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫)およびその他の政令指定都市・中核市の合計を見ると2万454人。全待機児童の80.6%を占めている。

また受け入れ児童数(利用児童数)が100人以上増加した地方自治体を見ても、都市部が圧倒的に多い。500人以上の待機児童がいる市は、09年に6市となり、前年より2市増えている。

核家族化が顕著な都市部では、子どもを預ける保育施設へのニーズが高まっている。そうした需要の増加に、保育施設の整備や保育士の確保が追い付いていないのが現状のようだ。子どもを持つ女性の中には、就業を希望しながらも仕事と家庭の両立に阻まれるケースは増えているとも考えられ、これからも保育所・託児所の環境整備は不可欠だろう。

民営化の動きが顕著

近年は、保育所を運営する自治体の財政難を背景に、認可保育所の民営化が進行している。一般企業の中には、保育所の運営をビジネスチャンスと捉え、新規参入するケースが相次いでいる。

ただし、自治体の中には民営化の受け皿に社会福祉事業を目的とした公益法人に限定しているところも少なくない。また、認可保育所の運営に参入するには実績が問われることもあり、一般企業が参入する障壁となっている。各自治体により民営化への温度差があり、仮題は山積みのようだ。

一方、看護師を対象に病院が独自に保育所を設置する院内保育施設をはじめ、認可外保育施設を全国展開する民間事業者も増え始めた。都市部で民営化が進行すれば、地方へも波及する。世の中の流れが追い風となり、今後も民営化は進んでいくものと考えられる。

また、保育施設の不足を背景にベビーシッター市場も拡大している。矢野経済研究所による「ベビー関連サービス市場規模推移と予測」(グラフ4)によると、09年度のベビーシッター市場規模は、250億円(見込み)。05年度以降、微増傾向にある。ベビーシッターサービスの場合、保育所・託児所に比べると単価が高いため、景況感に左右される一面があることは否めない。それでも近年では雇用者の福利厚生の一環として、企業側でサービス利用料金の一部を負担する動きも広がりつつある。深夜や宿泊にも利用できるサービスを提供する事業者も出てきており、保育園・託児所市場の拡大が、ベビーシッター市場にも波及しているといえる。

グラフ4:ベビー関連サービス市場規模推移と予測グラフ4:ベビー関連サービス市場規模推移と予測

出生率は再び上昇傾向に

日本の子どもの数(15歳未満)は11年4月現在、前年に比べ9万人少ない1693万人。30年連続の減少となり、過去最低を記録した。ただし、11年6月に発表された厚生労働省の人口動態統計では、10年の女性一人が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率が1.39。05年に過去最低の1.26となった後に上昇、08年と09年は1.37と横ばいだったが数値が、今回0.02ポイント上がった。

厚労省では「30代後半や第2子以降の出産が増えたため」と分析し「少子化傾向は今後も続くとみられる」としているが、微かな光明が差しているといえそう。

保育園・託児所の民営化の動きが高まる中、ベテラン保育士が働き続ける環境を確保するなど、一定の質を保ったまま育児支援整備を進めることが不可欠だ。働く女性への理解を含め、地域で子どもに未来を託していく気運が高まれば、市場の未来はさらに明るくなっていくだろう。


掲載日:2012年2月 7日

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