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業界レポート
数字が語るこの市場の深層【デジタルサイネージ】

屋外のディスプレイで映像を眺める機会が増えていないだろうか。この仕掛けはデジタルサイネージ(電子看板)と呼ばれ、ここ数年で順調に拡大を遂げている。

目次

電車内で見かけるディスプレイ

都心部で電車に乗ると、扉の上には小さなディスプレイが。そこで流れているニュースや広告に見入ってしまう─。そんな経験を持つ人が近年増えているに違いない。有名なところではJR東日本のグループ会社、JR東日本企画が山手線や京浜東北線などで展開している「トレインチャンネル」がある。この「トレインチャンネル」は近年成長が喧伝されているデジタルサイネージの一種で、広告媒体としての価値が最も高い部類に入るとされる。

では、デジタルサイネージとは単なる広告媒体なのか。その定義について、矢野経済研究所(東京都中野区)河上真一研究員は簡潔に述べる。「屋外や店頭、交通機関など、家以外の場所でディスプレイなどの表示により情報を発信する媒体を指す」。さらに情報発信の形態で見ると、独自もしくはサービス提供者のネットワークシステムを介したものとネットワークを介さない独立型とに大別される。

同社では「デジタルサイネージソリューション市場 2010」と題したレポートを2010年5月に発行している。同レポートによると、09年度のデジタルサイネージ市場の規模は557億800万円で、10年度は前年度比114.2%の635億9800万円と予測されている(グラフ1)。

グラフ1:デジタルサイネージ市場規模推移グラフ1:デジタルサイネージ市場規模推移

09年度が08年度と比較してほぼ横ばい。それに対し成長に転じているが、この点について河上氏は次のように分析する。「ディスプレイのベンダーへの引き合いが前年度比3割以上増という状況、大手コンビニでの導入、鉄道での増設、低価格サイネージの普及、社内や公共施設内の情報表示ツールとしての導入などが後押しする。また09年度に行った実証実験の結果を見て本格導入に至るケースも考え得る」

販促ツールとしての身近さ。興味を示す企業は増加

電車内で見るもの以外にも身近なデジタルサイネージがある。全国チェーンのスーパーを訪れたとき、ディスプレイで情報を流す光景に出会ったことはないだろうか。これもデジタルサイネージ活用の一例だ。その普及は着実に進み、認知度も向上している。

矢野経済研究所が10年5月、東京都内在住の20歳代から50歳代の男女にインターネット調査した結果、デジタルサイネージを知っている人は29.7%となっており、09年の20.7%から上昇。市民権を得つつあることが窺える(グラフ2)。

グラフ2:デジタルサイネージの認知度グラフ2:デジタルサイネージの認知度

全国的に見れば、流通最大手イオンがデジタルサイネージ「イオンチャンネル」を運営し、イトーヨーカドーでもデジタルサイネージを導入している。こういった拡大の勢いは、この市場に取り組む企業の増加によってもわかる。

デジタルサイネージに関わる企業が会員に名を連ねるデジタルサイネージコンソーシアム(以下、DSC)は「08年に29社で始まり、現在は163社に増加している」(江口靖二常務理事)。

DSCは15年に市場を1兆円規模に引き上げることを目標に掲げているが、江口氏は「今はデジタルサイネージがあることが『当たり前』になる直前の時期」だと指摘する。「インターネットインフラの発達とディスプレイの価格の低下で普及はさらに続くはず」(江口氏)

ディスプレイ価格とデジタルサイネージ導入の動向について、前出の河上氏は「低価格化が加速すれば、大手企業のみならず、中堅・中小の流通業などでも導入が進むだろう」と見ている。

広告媒体としての伸びに注目。価値を定める基準が不可欠

デジタルサイネージ市場の中でも成長が期待されるのが、やはり広告媒体としての側面だ。

前出の「トレインチャンネル」はその代表格だが(グラフ3)、この広告としての伸びが、市場全体の成長の鍵を握ることになりそうだ。「広告としてブレイクすれば弾みがつくだろう」(河上氏)

グラフ3:個別名称別媒体の認知度グラフ3:個別名称別媒体の認知度

矢野経済研究所では、電子ポップや大型ビジョンを含めた市場を「広義の市場」とし、広告媒体や販促ツールとしての市場を「狭義の市場」としている。後者の市場規模の内訳は、ハードウェア、ソフトウェア、配信運営、保守サポートを担う「システムビジネス」と広告・コンテンツ制作を担う「広告・コンテンツビジネス」となっている。

両者の割合は10年度予測で7対3だが、15年度には前者が56.7%、後者は43.3%を見込む(グラフ4)。ただ新聞・テレビ・雑誌のように既存の媒体と肩を並べる存在になるには、クリアしなければならない課題がある。

グラフ4:分野別狭義のデジタルサイネージ市場の推移グラフ4:分野別狭義のデジタルサイネージ市場の推移

DSCの江口氏はこの点に関し、「既存媒体であれば、広告を出す際の仕様などが標準化されているが、デジタルサイネージにはそれがまだ確立されていない」と語る。

加えて広告媒体として問われる効果の測定も課題だ。テレビは視聴率、新聞・雑誌には発行部数と、わかりやすい物差しがある。新興のインターネットにしても、価値を計る基準として、ページビューという目安が認知されてきた。

ディスプレイの内蔵カメラで通行する人の数やディスプレイを見た人の数を計測したり、男女や年代も区別したりする効果測定の実験を、首都圏の鉄道11社が始めている。こういったマーケティングに資するデータを収集し、さらにそれを統一された(視聴率のような)物差しにしていくことが求められる。

「例えばの話だが、"サイネージ"を単位にして、『この場所に置かれたディスプレイの価値は500サイネージだから、料金はこれだけ』とできるようになれば理想的だろう」(江口氏)

インターネットの普及が急速に進んだことを思い返せば、紙に代わるツールとして、デジタルサイネージがこれから広まることは容易に予想しうる。その成長にこれからも注目すべきだろう。


掲載日:2011年9月 6日

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